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自由闊達にして愉快なる理想工場

 SONY の設立趣意書(※)を改めて読んでみました。


 80年代を知る私と同世代の多くの人々が抱くであろう"眩いSONY像”が見事に表現されています。  ※正確には「会社設立の目的」と「経営方針」

 戦後間もない1946年にあって、「日本再建」という大義とともに”愉快なる理想(工場)”を目指した貴く明朗な想い、業界における知己関係や信頼性といった自己の強みに対する揺るぎない自信。

 そして何よりも「〜技術上の困難はむしろこれを歓迎、量の多少に関せず最も社会的に利用度の高い高級技術製品を対象とす」「他社の追随を絶対許さざる境地に独自なる製品化を行う」という文言から滲み出る挑戦心と“技術観”こそが“SONYがSONYである理由”なのであり、競争優位(差別化戦略)であったと言えるでしょう。

 今、時代の変革期において掲げるべき「Purpose」や「理想」の一つのお手本として挙げたとしても何ら違和感がない、そんな普遍性すら感じます。


【会社設立の目的】
一、真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設
一、日本再建、文化向上に対する技術面、生産面よりの活発なる活動
一、戦時中、各方面に非常に進歩したる技術の国民生活内への即事応用
一、諸大学、研究所等の研究成果のうち、最も国民生活に応用価値を有する優秀なるものの迅速なる製品、商品化
一、無線通信機類の日常生活への浸透化、並びに家庭電化の促進
一、戦災通信網の復旧作業に対する積極的参加、並びに必要なる技術の提供
一、新時代にふさわしき優秀ラヂオセットの製作・普及、並びにラヂオサービスの徹底化
一、国民科学知識の実際的啓蒙活動

【経営方針】
一、不当なる儲け主義を廃し、あくまで内容の充実、実質的な活動に重点を置き、いたずらに規模の大を追わず
一、経営規模としては、むしろ小なるを望み、大経営企業の大経営なるがために進み得ざる分野に、技術の進路と経営活動を期する
一、極力製品の選択に努め、技術上の困難はむしろこれを歓迎、量の多少に関せず最も社会的に利用度の高い高級技術製品を対象とす。また、単に電気、機械等の形式的分類は避け、その両者を統合せるがごとき、他社の追随を絶対許さざる境地に独自なる製品化を行う
一、技術界・業界に多くの知己関係と、絶大なる信用を有するわが社の特長を最高度に活用。以て大資本に充分匹敵するに足る生産活動、販路の開拓、資材の獲得等を相互扶助的に行う
一、従来の下請工場を独立自主的経営の方向へ指導・育成し、相互扶助の陣営の拡大強化を図る
一、従業員は厳選されたる、かなり小員数をもって構成し、形式的職階制を避け、一切の秩序を実力本位、人格主義の上に置き個人の技能を最大限に発揮せしむ
一、会社の余剰利益は、適切なる方法をもって全従業員に配分、また生活安定の道も実質的面より充分考慮・援助し、会社の仕事すなわち

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