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「マーケティング近視眼」

「マーケティングの教科書」
第3章 セオドア・レビット氏著「マーケティング近視眼」

  かつて成長産業と呼ばれた産業が衰退したり成長が鈍化する原因は市場の飽和ではなく経営の問題である、とりわけマーケティングを軽視したことに因るものだという指摘を、19世紀の石油、鉄道等の産業の実例をもとに行なう古典ともいうべき論文です。

  筆者は、急激な成長の後に思いがけない衰退が訪れるというサイクルが繰り返される各産業に共通する原因を次のように挙げています。


1)人々は豊かになり続けるから今後も市場は成長するという過信
2)自産業の主要製品を脅かすような代替品はあるはずがないという過信
3)大量生産モデルの利点に対する過信
4)品質改良による際限ない生産コスト低下に対する過信

  そしてそこに在るのが製品中心主義と製品の価値に対する近視眼的な定義であるといいます。

・顧客が求めているのは“穴”であって“ドリル”ではない
・鉄道会社が衰退したのは自らの事業が“輸送”であって“鉄道”ではないことに気付けなかったから

  環境とともに顧客のニーズが変化していく中で成長を続けるには、自社の事業が持つ本質的価値を理解した上で、常に顧客が求める形質へと適合させていくことが必要であることが解ります。

  1960年に執筆(和訳は2001年)された本稿には、後に提唱される「イノベーションのジレンマ」や「ジョブ理論」の源流を感じることができます。(「ジョブ理論」のもととなるクリステンセン氏の論文「セグメンテーションという悪弊」も本書の第2章に収載されています)

  2000年代に急成長を果たした人材紹介ビジネスは、2010年代に成熟度を増しました。テクノロジーが劇的に進歩し、企業の雇用慣行や人の働き方が大きく変わる2020年代を生き残るには自らの事業をどのように定義すべきなのか(企業が持つどのような“ジョブ”を解決する存在を目指すべきなのか)、ズームアウトした議論が必要です。

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