国宝・重文の再認識

今年(2022年)開催された東京国立博物館創立150周年特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」は大変な盛況であったようだ(このため1週間会期延長)。Ⅰ期~Ⅳ期に分かれていて、後半になるほど予約を取るのが困難な状況。自身はⅠ期をスムーズに予約できていたものの諸事情でキャンセル。Ⅳ期を1時間位かけて何とかWeb予約できた。通期で展示されているものとⅠ期~Ⅳ期の間で限定して展示されているものがあり、全部を観るためには全4期間の予約がいる。実際にそうした人も結構いると聞いた。


 

さて、私の住む稲城市の中央図書館にカフェがあり、注文して出てくるまで近くの書架を眺めているが、日本美術系のそれである。偶々、森本和男(2018)「47都道府県国宝/重要文化財百科」丸善、が目にとまり中々面白かった。


 

国宝・重要文化財の都道府県別保有件数の詳細は添付(リンク)のExcelを見て頂くこととして、件数的には東京都、及び古都である京都と奈良が群を抜いている。

 

https://docs.google.com/spreadsheets/d/1jtmc0CrBWicqjzCmiLzj8EfspKeDoaZ-/edit?usp=share_link&ouid=100767326769361292922&rtpof=true&sd=true

注:書籍は2017年12月1日のデータを使用している。上は文化庁開示の最新版を加工。

 

東京は首都として明治以降に集められた美術品が多いので圧倒的な1位は当然であろう。中でも東京国立博物館=東博が群を抜いて多い。2番目に多いのは加賀前田藩の所蔵物を収めた「尊経閣文庫」(目黒区駒場)とのこと(国宝22件・重要文化財76件)。恥ずかしながら今回初めて知った。一方、江戸期以降に本格的に拓けたことから(多分戦災は影響がないと思料)建造物の国宝は旧東宮御所と正福寺(東村山)の2件のみ。

 

京都と奈良は古くからの都(飛鳥時代も含む)であるので、美術品だけでなく、寺社仏閣を始めとする建造物が多いのは宜なるかなである。ところで、愛知を見ていたら古事記が国宝の対象であった。宝生院(真福寺)にあるものが最も古く、完全な形の写本が残っているそうである。他方日本書紀は、写本は沢山あるが、全部が揃っていて最も古いものがないため、部分的にしか国宝指定はないようである。例えば、奈良では巻第十残巻が国宝指定されている。


 

生まれ育った福岡と熊本も見てみた。

福岡:

有名な漢委奴国王の金印、「海の正倉院」宗像大社沖津宮祭祀遺跡出土品が国宝であるのは当然と思ったが、三池炭鉱宮原坑施設が対象なのは意外であった(建造物としての対象ではなく美術工芸品の括り)。


熊本:

国宝の美術工芸品は残念ながらゼロ。これは美術品蒐集家細川藩の所蔵物が東京の永青文庫に収蔵されたためだろう。建造物として1件あり。中学時代に居たことのある、また、成人してから行ったことのある人吉の青井阿蘇神社であるのは少し誇らしい(写真)。

ついでに、熊本が廃藩置県時に一時的に「白川県」であったことも知った。

 

全国的に考えると、地元に住んでいる人は自分の都道府県にある国宝(・重文)は知っている人も多いと思う。反面、大学以降、故郷を離れて東京等の大都市に住んでいる人は知らないものが多いような気がする。高校生まででは文化財に目がいく人は多くないであろうから。自分の故郷にどういう国宝・重文があるか調べて見るのも一興だと思う。文化庁のWebサイトを見れば分かる

 

                       

補足:

現在は国宝1,131件(美術工芸品902、建造物292)

戦時中(1940年頃)は国宝6,074件(美術工芸品5,074、建造物1,000)


青井阿蘇神社


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