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インドから日本へ、仏教は広く、寛く。【龍谷ミュージアム】[ミュージアムに行こう#001]

先週末、京都市の龍谷ミュージアムに行ってきました。

この記事では、龍谷ミュージアムシリーズ展8「仏教の思想と文化-インドから日本へ-」を取り上げます。

龍谷ミュージアムとは

龍谷ミュージアムは「仏教総合博物館」。
西本願寺の「学寮」を起源とし、現在でも仏教研究が盛んな龍谷大学の特色を活かしたミュージアムです。

「大学博物館の枠を超え、街に開かれた仏教総合博物館として展覧会事業を通した仏教文化の普及に努める」ことを理念として掲げており、かなり充実した展示環境が整っています。

なお、特別展・企画展・シリーズ展の開催時のみ開館し、常設展はありません。

現在は、シリーズ展8「仏教の思想と文化-インドから日本へ-」「特集展示:西七条のえんま堂-十王と地獄の美術-」が開催されています。

大きな簾を想起させる木目調の外観が特徴です。

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立派な建物には、2つの展示室に加え、カフェ・ショップやミュージアムシアター、講義室まで揃っていました。
「一大学の展示室」の規模を超えた本格的な博物館です。

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シリーズ展8「仏教の思想と文化-インドから日本へ-」

龍谷ミュージアムのホームページで「2020年度 開館スケジュール」を見てみると、シリーズ展のタイトルはずっと「仏教の思想と文化-インドから日本へ-」となっています。

大枠となる構成は変わらず、展示される資料が期間ごとに変わっているようです。

今回のシリーズ展8だけで、仏教がインドで誕生してから日本に広まり現在に至るまでを概観することができました。

シリーズ展は、第1部「アジアの仏教」と第2部「日本の仏教」の順に分かれています。

第1部「アジアの仏教」

第1部では、仏教の誕生から釈尊(お釈迦さま)の教えがアジア・中国に広がっていく過程を知ることができます。

釈尊は、釈迦族の名家に生まれて恵まれた環境で育ったものの、老病死に苦悩して出家を決意したと言います。

個人的にはこの話が、クライシュ族のハーシム家に生まれて交易で成功したものの、悩みを抱いて啓示を受けたとされるムハンマドと重なって仕方ありません。

しかも仏教も最初は偶像崇拝を禁じていたんですよね。

だから草創期の仏教に仏像はなくて、今回の展示も草創期に登場するのは経典や碑文の拓本が中心です。

釈尊の死後、仏教が分派していくにつれて様々な宗派が生まれます。

仏像も作られるようになり、古いところではガンダーラ様式やグプタ様式といった「世界史の資料集でしか見たことないやつ」を実際に見ることができて密かに興奮しました。

ガンダーラ様式には深いひだがついています。
なるほど!これがギリシア・ヘレニズム文化の影響か〜と感動していました。

しかし仏像への理解が浅はかな僕には、純インド式と言われるグプタ様式にもひだがついているように見えてしまいます。

いやまあ確かに「そこまで深くはない」かもしれないけど、「あるかないか」と言われれば「ある」ような…。

第1部の展示品で僕のお気に入りは、平等寺(京都)の「木造 大黒天立像」です。
画像の著作権が怖いので、この仏像を取り上げた毎日新聞の記事のリンクを載せておきます。

第1部は「アジアの仏教」と言いながら、これは海外のものではなく、日本の仏像。
守護神・「天」として、仏教が各地の土着の信仰や神々を取り込んでいったという文脈で登場しました。

仏教が広い地域で受容された背景には、やはりその寛容さがあったのではないかと思います。

仏教はまさに、広くて寛い(ひろい)教えなのでしょう。

あと、見た目が面白いですよね。
大きな目とふくよかな身体。
袋みたいなものを背負う様子には、サンタクロースを連想しました。

第2部「日本の仏教」

第2部では、仏教伝来から独自の展開を遂げるまで日本における仏教の展開を知ることができます。

日本に伝来した仏教は、いわゆる崇仏論争に始まり、鎮護国家思想により国家仏教となるように、「最初から政治色全開!」といった印象を受けます。

「人々に教えを説き、悟りへと導く」釈尊が興した当初の仏教からは、この時点で随分と変容していたように感じました。

鎌倉時代になると、いわゆる「鎌倉新仏教」が誕生します。
この辺りで、「南無阿弥陀仏」のような「僕が聞き慣れた仏教の言葉」がようやく目に入るようになってきました。

新仏教が隆盛すると、旧仏教が刷新運動を始めたのは有名な話です。

展示では、戒律を重視した旧仏教によるこの運動を、(厳密には忘れてしまったんですが)「釈尊へ回帰」のような言葉で表現していました。

「ほら!やっぱり、釈尊とは随分かけ離れてしまったと感じる人がこの時代にもいたんだよな、さっき僕が感じたことは間違いではなかった」と、ここで認識。

第2部の展示品で僕のお気に入りは、二尊院(京都)の「涅槃変相図」です。
釈尊入滅前後の複数の出来事を1枚にまとめた絵画です。

絵のどの箇所がどの出来事に対応するのかを解説した展示版が設けられており、絵の内容をきちんと読み解くことができました。

ところでこれって、日本史の資料集でよく見る「伴大納言絵巻」と同じ、1枚の絵の中に異なる時間の出来事を描く「異時同図法」ですよね?

1枚の絵にストーリー性があるので、見ていて面白かったです。

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同期間に開催された「特集展示:西七条のえんま堂-十王と地獄の美術-」についてはこちら!

龍谷ミュージアム利用案内

住所
〒600-8399 京都府京都市下京区堀川正面下る(西本願寺前)
電話
075-351-2500
開館時間
午前10時~午後5時
※入館受付は午後4時30分まで
休館日
毎週月曜日
※祝日は開館(翌日は閉館)、その他ミュージアムの定める日
料金(団体料金)
一般 550(450)円 / 65歳以上の方 450(350)円 / 大学生 400(300)円 / 高校生 300(200)円 / 中学生以下 無料
公式サイト
https://museum.ryukoku.ac.jp
アクセス
・JR・近鉄・地下鉄烏丸線「京都」駅から徒歩約12分
・地下鉄 烏丸線「五条」駅から徒歩約10分


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