ダイバーシティに必要なのは無関心なのか

先日新R25から取材を受けました。

新R25のキャッチは多くの人を引きつけ、今まで色々なところで話した内容でありながら1000を超えるRTになりました。こうなると無関心という言葉が一人歩きし、記事を勘違いして障害者にも無関心になることが必要だといった認識をした人からの反論がありました。

無関心がなぜ必要か?

相違誤認効果という認知バイアスの一つの話が記事の中に出てきます。

人は他の人々も自分と同じように考えていると見なしたがる。この推定された相関には統計的確証はないが、存在しない合意があるかのように感じさせる。人々は自分の意見・信念・好みが実際よりも一般大衆と同じだと思い込む傾向がある。
                            Wikipedia

アメリカに留学している時、飲み会などで話題になった内容の参考文献を帰宅後に送ってくる友人の影響を受け、行動経済学や人間の非合理性にとても興味を持つようになりました。人間には色々な認知バイアスがあり、相違誤認効果もその1つです。このバイアスのおかげで、人間は本当は自分とはちょっと違う考えを持っている人に対しても同じ考えであるという勘違いができ、コミュニティーを形成してこれまで生存してきました。一方で、自分とは違う意見を持っている相手に対しては、自分の方が標準であるとも勘違いしてしまい、相手が間違っていると思い込んでしまいます。そこで感じるモヤモヤが相手への反論や批判をする行動に駆り立てるのです。反論や批判なら全く問題なく議論をすればいいのですが、ネットのような匿名性や相手との距離感を保てる環境においては相手への誹謗中傷にもつながってしまうということも多々あるようです。私はこのモヤモヤを感じる相手に対して、意見が対立している課題が、お互いに迷惑がかからないものであるならば、いかにして無関心になり、距離を置きながら共存できるかがダイバーシティに大事なのではと考えています。

まず、これは私個人の一意見であり、断言はしていませんし、色々な意見があることも理解しております。私がこの話をした時に、例えば同じxDiversityのメンバーの落合陽一はある程度同意したのに対し、乙武洋匡氏からは「無関心は強者の論理だ」という批判をいただきました。無関心でいられることは、自分がある程度自立していて、他社への依存が少ないからできることであるという意見でした。たしかに、無関心は全ての人の経済的、社会的自立が条件であるということも理解しました。そして同じくxDiversityメンバーの菅野祐介は、自分は無関心ではなく相手への関心は諦めたくないという理想は持つべきであるという大人の意見もいただきました。

↓超福祉展でのxDiversityのパネルディスカッションの議論

乙武義足プロジェクトもパラアスリートのブレード開発プロジェクトBlade for Allも私としては信念を持ってやっていますし、一緒にやっている当事者含むチームで同じ思いでやっております。乙武義足プロジェクトは四肢欠損障害でも歩くことが1つのオプションになればという思いが、Blade for Allには障害があるせいで走ることを諦めるようなことはなくなって欲しいという思いが込められています。記事の中には、乙武氏が頑張って歩いたことに共感した方々を批判したように感じられた方々もいらっしゃったようですがそんな意図はなく、1つの捉え方として正しいと思います。何よりプロジェクトに共感してくださったことにとても感謝しております。このような活動に対して、障害者を見せ物にしている、障害者を使ってお金儲けをしている、障害者で目立とうとしているなどという批判を多数いただくことがあります。このような意見に関しては全く反論するつもりはなく、その通りであると返答しています。プロジェクト普及のためにはたくさんの事例を発信し、数多くの義足ユーザやその家族に見てもらい、自分も歩きたい、走りたいと思ってもらいたいと思っています。そして、研究開発やプロジェクト運営にはお金が必要です。ただし、承認欲求だけで動いているつもりも、過剰に1人だけお金稼ぎをしているわけではないということだけ言わせていただいています。少なくともプロジェクトを一緒にやっているパラアスリートや乙武氏、当事者たちには少なくともこのようなことを理解していただいた上で、活動の広告塔としてやっていただいていますし、結果的に私が目立つことになったとしてもそのことにモヤモヤを感じている人はメンバーの中には1人もいないと断言します。

すべての人が共感するようなものは世の中になく、我々がやっていることも中にはモヤモヤを抱えてしまう方も少なくないのかと思います。そんな時、議論は大歓迎ですが、それでも無理な場合は我々も共感を強要するつもりもないのでそっと距離を置いて無関心でいてくださると嬉しいです。その姿勢が私の望むダイバーシティの一つの形です。反論や議論の範疇を超える誹謗中傷においては毅然とした対応をさせていただきます。

参考文献

1) 下條信輔, 〈意識〉とは何だろうか 脳の来歴、知覚の錯誤
2) Ross L., Greene D. & House, P. (1977). The false consensus effect: An egocentric bias in social perception and attribution processes. Journal of Experimental Social Psychology 13, 279-301.
3) xDiversity

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?