見出し画像

「待ち剣」と「懸待一致」は全然違う

それはまだ私が20代か30代前半の、今よりもかかり稽古が大好きな頃のこと。昇段審査でラビリンスに迷い込み、出口を探して右往左往しているさなかの出来事でした。

出口だと思って突き進んだら、猛獣が待ち構えていて撤退を余儀なくされたり、大きな落とし穴に遭遇したりという不遇な状況に陥っていたことをよく覚えています。

K先生に稽古をお願いしたところ、
「構えたところからじっと待つんや!」と言われます。
「じっと待って、相手が動く瞬間を打つんや!」と……

まだ若輩者だったため、
「はぁ?このおっさん、何言うてるんよ。待っててもあかんやろ。攻めや、攻め!自分から攻めないと!!」
と、思っていたことを今でもよく覚えています。

これもまた大きな落とし穴。この教えを素直に聞けば、ただの落とし穴ではなく、落ちたら二度と出て来られなくなるくらいの深い穴に違いないと。

「待つ=待ち剣」との認識があったため、100%全否定です。
当時、審査員をされている先生には
「相手を引き出して打たないと評価されません」
と言われていたことも関係していました。

いやいやいや、全然違うって~!
と……

色々なことがつながったのは、それから20年近くの経験を積んでからでした。じつは、K先生の指導は間違いではなかったようです。
ただ……

それは若い人には伝わらんでぇ~!!

というのが本音ですが。


6秒稽古に学ぶ

きくぞう先生の動画で「6秒稽古」という聞きなれない稽古をされていました。簡単に説明すると「構えたら6秒で打つ」稽古法。単純明快です。

きくぞう先生の解説によると、以下のような約束(?)のようです。

  • 相掛かりにならない様に

  • 縁を切らず

  • 出ばなを狙うも良し

  • 誘って応じるも良し

  • 体が出なくなれば更に声を出す

  • 6秒を超えない様に

なかなか面白い稽古方法だと思って、さっそく翌日の稽古でやってみました。ちょうど、待ち剣の中学生と一緒に稽古をしていたので、待ち剣対策に良いだろうとの思いもありましたが……

待ち剣は一夜にして直らず

継続して取り組んでみたいと思います。ところで、待ち剣って何でしょうね?

待ち剣って何だ?

一般的に「待ち剣」とは、自分からは動かずに相手が動いたところを打つイメージでしょうか。だから、冒頭のK先生の指導は「待ち剣」の認識で間違いないと考えます。

一般的に理想とされるのは、自分から能動的に攻めて相手を動かして隙を作るという方法です。しかし、待ち剣は受動的。自分からは動かず、相手が動くのを待ちます。だから嫌われるのかもしれません。

しかし、「動く」と「攻める」は違いますし、「動かない」と「攻めていない」も違うものと考えます。動いていても攻めていない場合もありますし、動かなくても攻めている場合もあるからです。

攻めって何でしょうね。(笑)

重要なのは懸待一致

「懸中待」「待中懸」と表現されるように、「懸」と「待」は表裏一体です。どちらが欠けても良くありません。

昇段審査の学科試験では「懸待一致」を問われることがあります。回答例は下記のとおり。

懸待一致けんたいいっち
「懸」とは、相手を攻めたり打ちかかったりする攻撃の意味で、「待」とは相手の動きを冷静に見極めながら出方を待つ意味。「懸かる」と「待つ」は表裏一体をなすものであり、攻撃中でも相手の反撃に備える気持ちと態勢を失わず、受けにまわったときでも常に攻撃する気持ちでいることが大切ということ。

待つことだけが良くないと思われがちですが、本来は待つことも重要です。問題となるのは、待っているだけで何もできない状態であること。すなわち「懸」が疎かになっている場合です。

つまり、「待ち剣」が悪いのではなく、攻撃できない状態が良くないということになります。K先生の尊敬できる点は、常に打てる状態を保っていることです。最近になり、ようやくそのことに気が付きました。

6秒稽古が良い稽古方法だと思う理由

ここから先は

633字

スタンダードプラン

¥100 / 月
初月無料
このメンバーシップの詳細

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?