見出し画像

空腹に出された料理は美味しそうに見える

ハヤシライスを作ってみた。

既に空腹である。今すぐ食べたい。今なら生肉でも食べられるくらいの勢いだ。しかし、お腹が弱いので生肉は我慢した。

作ったのは普通のハヤシライスだ。市販のルーを使った、ごく普通の。今までは鍋で作っていたのだが、箱の裏に書かれてある説明書を読んでみると「フライパンを使用」と書かれてあるではないか。生真面目な私はフライパンで作ることにした。

まずはタマネギを炒める。炒めたタマネギ独特の少し甘い匂いが漂ってきた。既にパブロフの犬並みにヨダレが出そうな状況だ。しかし、我慢。ここはタメが必要。我慢、我慢。

タマネギの色が少しずつ透明になり、更にあめ色へと変化していく。このタイミングで、妻が準備しておいた牛肉を投入だ。

ん?いつもの牛肉と違うぞ!

少し炒めただけで、殺人的な匂いが漂い始めた。ちょっぴり霜降りの飛騨牛だった。飛騨牛といっても、グラム100円台の小間切れだ。なぜ安いのか?スーパーではなく、飛騨牛専門店で買ったからだ。

肉の匂いが吉田沙保里のタックルのような勢いで襲いかかってくる。既に瀕死状態。調味料無しでも食べられそうな勢いである。

ぐっと堪えて水を入れ、煮込む。あの殺人的な匂いは一時的に治まった。よかった。これでしばらくは冷静でいられる……

しかし、5分後にルーを入れた直後、本格的に美味しそうな匂いが立ち込めてきた。一刻も早く食べたい。食べて楽になりたい。

そんな経験はないだろうか?


美味しそうな料理には気を付けろ

剣道をしていると、自分の意思とは無関係に打ちに行き、相手に出ばなを打たれたり、返されたりということが多々ある。

「なんで?」と思うことも日常茶飯事だ。

もちろん、自分勝手に打ってしまうこともあるだろう。しかし、気が付かない内に相手が美味しそうな料理を差し出していることもある。美味しそうな料理を前に反射的に飛びついた瞬間、バッサリだ。

素直な私は美味しそうな料理が目の前にあれば飛びつく。今すぐ食べたいのだ。空腹状態であればなおさら。それがたとえ生肉であっても。

ドラゴン桜より

「お前らこのままだと一生だまされ続けるぞ!」
桜木先生も言っていた。

美味しそうな料理には気を付けねばならない。綺麗な薔薇ばらとげがあるように、美味しい料理にもわながある。そして、どうせなら、わなを仕掛ける側に回った方が良いだろう。

美味しい料理を提供する際の注意点

料理は「いかに美味しそうに見せるか」が重要だ。プロの提供する料理は芸術作品のように美しい。しかし、見た目以上に重要となるのは、料理を提供するタイミングと状況ではないだろうか。

どれだけ美味しそうな料理でも、満腹状態では見向きもされない。それでも食欲に負けてしまう私は食べるが、一般的な食欲を持ち合わせている人は食べようとしないだろう。

つまり、相手が食べたいタイミングで料理を提供することが重要だ。相手が空腹状態なら、多少は美味しくなさそうな料理でも食いついてくるに違いない。

それはいつなのか?

お互いに攻め合い、機が熟したときだ。「機運が高まったとき」とでも表現すべきだろうか。お互いに「打つぞ、打つぞ、打つぞ!」という気持ちが最高潮に達した時、それこそが合気あいきだ。もちろん、足も腰も準備万端な状態であることは言うまでもない。

ただし、機が熟すのをただじっと待っていては、いつまで経ってもチャンスはやって来ない。相手の気が高まるのと同時に、自分の気も高めていくのだ。そうすれば、お互いが今か今かという気分になってくるだろう。

機が熟した瞬間、さっと料理を提供するのだ。

手の込んだ料理でなくともよいだろう。コンビニで買えるファミチキとかLチキとか、ナナチキで十分。チキン大好きな私なら、迷わず飛びつく。できればファミチキであってほしいと願いながら。ナナチキは当たり外れが激しい気がするからだ。

しかし、ナナチキであっても効果的に提供できれば問題はない。

ときには撒き餌も使おう

釣りをするときには、釣り針に餌を付ける。ときにはルアーなどの疑似餌も有効だ。釣りの趣味はないので詳しくはわからないが、魚をおびき寄せる際には撒き餌を使うのも効果的らしい。

かつて、世界最速の面といわれた神奈川県警の高鍋進選手に面で打ち勝った選手がいた。大阪府警の寺本将司選手だ。

YouTubeに動画があったので、時間のある人は見ていただきたい。

寺本選手は高鍋選手の面を警戒し続けた。動画を見ると、高鍋選手の面を応じようとしているのがよくわかる。すると、高鍋選手も胴を警戒することになる。正に撒き餌だ。最終的に寺本選手が胴を打つと見せかけてから打った面が決まっている。

なかなかここまでの見事な撒き餌は難しいかもしれない。ワンピースの伏線回収レベルだろう。しかし、試合展開の中で試してみると、案外できるものだ。ヒヨコの刷り込み学習のように、相手に思い込ませることができれば可能となる。

たとえば、下から小手を何本か打っておけば、剣先を下げるだけでも小手を警戒させられる。これも一種の撒き餌だろう。

私は中学のとき、引き面ばかりで勝っていた。引き面といっても、真っ直ぐの引き面ではない。担ぎ面だ。ズルい。中学生の頃からズルい人間だったことを認めよう。だが、今は改心したので許してほしい。

担ぎ面は小手を警戒させて面を打つ方法だ。今はほとんど使わないが、中高生には有効的な技だろう。

小手を警戒させるには、下を攻めて面を打つのと同様、鍔迫り合いから小手を何本か打っておくことで、より効果を発揮する。あなたも、自分なりの撒き餌を効果的に使ってみてはどうだろうか。

ただし、出来る限りエレガントにスマートに。

審査では相手を引き出すことが求められる

ここから先は

594字

スタンダードプラン

¥100 / 月
初月無料
このメンバーシップの詳細

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?