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人生で一番大事な友達が死んで10ヶ月が過ぎた

俺の人生に最も影響を与え、やばいぐらい存在感のでかかった友達である生江くんが去年の12月に死んだ。めちゃくちゃ珍しいガンだったらしい。

その時期の記憶は鮮明に覚えていることもあれば、なぜか思い出そうとしても絶対に思い出せないことがあったりと、普通に一生残るレベルの心の傷として、今も超引きずりまくっている。

生江くんと俺との思い出とかもそんな感じで、今もはっきり覚えていることもあれば、ほぼ忘れてしまっていることもある。まじで空気と同じぐらいのレベルで一緒にいた存在なので、エピソードの範囲が広すぎるのだ。5年前に食った昼飯のメニューを覚えてないのと一緒で、ほとんどが些細な出来事の積み重ねだった生江くんとの日々のすべてを覚えておくことは、普通に無理っぽい。

ただ、それらの生江くん自身の記憶は、生江くん本人をよく知る人同士で分かち合えたり、自分自身の中で反芻できれば、それで十分だと思っている。誰かれかまわず聞いてほしいとも思わないし、聞いても分かってもらえるとは思わない。

この先、自分たちだけが歳をとって、記憶の中にいる生江くんだけが若いままの状態って感じになるわけだけど、それはまあしょうがない。薄れていくものもあれば、いつまでも色褪せないものもあるので、記憶のあり方すらも自然の成り行きに任せたいと思っている。

でも多分、生江くんのことは意識しなくても忘れないと思う。俺のiPhoneで「なまえ」って打つと、予測変換で「名前」よりも先に「生江」が表示されるからだ。そのぐらい生活に馴染みすぎていた存在だから、多分、重度の認知症になるまでは覚えていられると思う。

それよりもむしろ、生江くんが死んでからの自分が何を思って過ごしてきたか的な部分は忘れそうだなと思ったので、文章で残すことにした。

大体みんな優しいので、会話していてもこの辺のことは気を遣って聞いてこないでいてくれてる感がある。聞いても反応に困るだろうし。でもむしろ自分は話して楽になるタイプだと最近気づいたので、むしろ共有したいぐらいではあった。

ここ10ヶ月は、何をしていても夢中になれない感覚というか、うっすらとずっと辛いというか、何かの心配事が頭の片隅にあって心の底から楽しみきれないというか、そんな感じの心情で毎日を過ごしている。

別に毎日苦しくてやばいみたいな感覚ではなく、普通に色々な出来事があって、その時その時で楽しんでいるという感覚はある。でも、それと同時に、失ったという事実に思考が引き戻される。風邪気味の状態で旅行に行って、あんま楽しみきれずに終わるみたいな感じかも。特に、1人で風呂に入ってる時にめちゃくちゃ思い出す。これは同じく生江くんのソウルメイトの粟国も言ってたので、あるあるなのかもしれない。

これまでの俺は、「めちゃくちゃきもい底辺YouTuberを見つけたら生江くんに連絡しよ」みたいな感じで、何をするにしても〇〇(行動)×生江くんみたいな感じの計算式で人生を成り立たせてきたので、その片方が無くなったということになる。

2分の1しかないうちの1が無くなったら、それは当然超でかいし超やばい。なので、ここ10ヶ月は人生の意味的なものとか目標的なものとかはめちゃくちゃ失ってる。普通にいろんなことがどうでもよくなったし、あんまり感動しなくなった。

でもその反面、やっぱり日々を過ごしているとどうでもよくないことも新たに生まれていく。人間って面白い。優しい奥様との結婚生活を日々過ごしたり、友達が遊んでくれたりするたびに、やっぱどうでもよくはないなって思える。

多分この先もずっと、どうでもいいとどうでもよくないを行ったり来たりする。西八王子駅の近くにあった松屋とじんそばを無限往復してた頃のように、多分ずっと繰り返していく。

これからどうなっていくかは考えてもわからないし、考えたことがその通りになるとは限らないということは、生江くんの死という事実が痛いほど教えてくれたので、あんまり気にしてない。まじで自然に任せる。

あと、こういう状況になって初めて、その辺の普通の人たちへのリスペクトが持てるようになった気がする。友達とか親とか子供とか自分にとって大事な人が死ぬなんてよくあることだし、まじで誰にでも確実に訪れる出来事だ。

コンビニで店員にキレてるジジイとか電車で発狂してるババアとかも、こいつらきめえなって思う奴らですらも、多分見えてないだけで色々背負って生きている。

そういう当たり前のことを、友達の死をきっかけに改めて理解した。だからといってみんなに優しくなるというわけでもないし、きもい奴は何しててもきもいけど。

うんこを直嗅ぎするのはきついけど、屁ならまだ耐えられる。そんな感じで、でかすぎる悲しみも、日々を過ごすうちに小分けにされて、いつしか飲み込めるようになってくる。鼻の奥にこびりついた粒子みたいに、綺麗さっぱりぬぐい切れることはないけど、騙し騙し人生を過ごせるようにはなってきた。

11ヶ月目以降はどう思ってるかはわからないけど、とりあえず10ヶ月過ぎた時点ではこんな感じ。

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