ChatGPT疲れでクタクタになった方へ
ChatGPTを代表とする生成AIの進化が止まりません。
連日新たなニュースが飛び交い、何がなんやら訳わからない・・・
とうんざりしている方も多いのではないでしょうか。
ゲーム製作企業などでは積極的に社員に学ばせるところも
出てきましたし、
Googleの元副社長がこの先のAI扱いに警鐘を鳴らすため
退社したニュースもありましたね。
ひょんなことから10年ちょっと前にAIシステム開発に関わり始めた私は、
このGW中も"AIに学ばせるデータ"周りの扱いでチームメンバーと
何度かZOOMでやりとりしておりました。
ChatGPTのような生成AIが吐き出すアウトプットが凄いために、
どうしてもそこに目が行くと思いますが、実際のAI現場では
"適切な学習用データを作り、与えて学習させる"
プロセスが何百倍も大変だったりします。
AIに長年関わりながら、ここ数年は不思議なことだらけです。
少しAIのことがわかってくると、逆にわからないことが多く出てきます。
(私が、ではなく周りの関係者に聞いても誰も答えられないこと)
その一例をお話します。
先ほど、"適切な学習用データを作り、与えて学習させる"
と述べました。
使っているAIのアルゴリズム(様々な種類があります)にも依存しますが、
学習を過度にさせると、どこかで効率が悪くなるのです。
また学習用データがくだらないものばかりだと
それに反応して大して賢くならないのですね。
これを『過学習』と呼びますが、
人間と同じで変に勉強し過ぎて体調崩すようなものです。
相手はマシンなのに疲れるはずがない、と思われるかもしれませんが、
この現象は学習量・学習時間に応じて『AIが判断ミス』をどれくらい起こしているかを
グラフや数値などで計測できる手段があるのでわかります。
賢さがピークに達すると、その後はどんどんミスが多くなるのです。
まるで『勉強はもういっぱいいっぱいです!』
と泣きが入っているかのようです。
それとは別の不思議な現象もままあります。
『こいつ(=開発してきたAI)はもう限界でこれ以上賢くなれないね。
そろそろ一旦全部捨てて仕切りなおそうか。。。』
とチームで議論していたところ、
ある時点から急に、爆発的に賢くなっている・・・
そんなことも起こるのです。
で、何が問題かというと、
なんでこういうことが起きるのか?
を誰もうまく説明できないことです。
つまり、AIをコントロールしているつもりが
どうやら必ずしもそうではない・・・
という現実を突きつけられることに
行き場の無い不安も感じます。
この点が直観的にAIの未来に明るさだけを
感じられない奇妙な気持ちになるところなのです。
例えば金融、裁判、医療、教育などさまざまな場面で、
人は結果についてクリアな理由を求めます。
明確な理由、原因があって、結果がそうなると、
論理的につじつまがあっていることが大切です。
AIが出した答に対して、説得力のある根拠説明が
人にはできない(わからない)ことが不安の元になります。
AIを日々扱っていてさえこうですので、
一般の人が『ワケわからない』となるのは
当然過ぎるとも思います。
さて、前置きがずいぶん長くなってしまいました。
最近のChatGPT含めた生成AIの話題についていけない・・・
と感じている方へ。
AI現場に日々身を置いている私は主にマーケティング寄りにいるので
技術面ではせいぜい素人に毛が生えた程度ながら、
はるかに詳しい専門のスペシャリストでも振り回されている日常を見て思うことです。
ChatGPTをこう使う、これがメリット、
こうしなければ負け組になる。。。。
というような商品や脅しにしばらく関心を持たないほうが良いかもしれません。
もう少しゆっくり事態の成り行きを見るというか、
一旦立ち止まって、相手にしないのもひとつの手です。
たかだかChatGPTがリリースされ半年たたないうちに
これだけ騒ぎになっているので、あと半年たつと
おそらくもっと突出した話題が中心になっているはずです。
今、メリットだと思っても、すぐに廃れる。。。
それらは全て新しい何かに変貌する。。。
と思って、横目で見ながらひとつひとつのことに
あまりこだわらない、一喜一憂しないことをお勧めします。
しばらくの間はメリットもデメリットも、
倫理問題も次から次へと出てくるばかりで、
結論の出ていない問いをいくら追いかけても
安心できる答が見つからないと思うのです。
追えば追うほど疲れますよ(笑)
追って、これだ!と思ったときには
すでにAIがはるか先を走っているという現実に
逆に追われていることに気づくかもしれません。
ところで世間にDX(デジタル・トランスフォーメーション)という
言葉が流行りだしてしばらく経っています。
DXとは、
「進化し続けるテクノロジーが人々の生活を豊かにしていく」
というような意味合いです。
DXを標榜する企業とどっぷり関わっていても
依然として正体が何なのかはいまだスッキリしないのですが、
時代は次に差し掛かっているように思います。
AIが作り出すトランスフォーメーション、いわば
AIX(AI・トランスフォーメーション)とも呼ぶべき時代です。
ただ『人が豊かになる』かどうかは
なんとも言えないのが正直なところです。
なんにせよ逆戻りができない時代に来た、
ということだけは確信しています。
ChatGPTの話題に疲れ果てている方は、
視線をはるか遠いところに置いて、しばらくは
どちらに向かっているのかを眺めてみるだけ、
にするほうが良いかもしれません。
慌てても何も得られないと思います。
KENBO
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