短歌(2022.投稿系)

空へ手をのばすくせがある、空にある吊り手を思う名残のような

(短歌研究2022年1月号 短歌研究詠草高野公彦選一首掲載)


ふりむけばたいていはもうもどれない 遠雷を聞く、銀河を思う

(日本経済新聞2022.1.8朝刊 日経歌壇三枝昂之欄入選)


瘡蓋、ときみが呟く。大きいね、って海へ向いたまま答えた

(毎日新聞2022.2.7朝刊 毎日歌壇加藤治郎欄入選)


朝だった。永遠に朝。くるしいな。どこにもひかりがなくて、みどり。

(毎日新聞2022.2.15朝刊 毎日歌壇加藤治郎欄入選)


雪がやんでしまう 違う、好きはもっと重い言葉で、言えなかった

(毎日新聞2022.2.21朝刊 毎日歌壇加藤治郎欄入選)


いつもなにもわからないんだ 地上へと導く長いエスカレーター

(毎日新聞2022.2.28朝刊 毎日歌壇加藤治郎欄入選)


「私」など付箋の集まりに過ぎず退去準備はゆっくりすすむ

(毎日新聞2022.3.28朝刊 毎日歌壇加藤治郎欄特選)


劇場(シアター)の拍手はまるで雨のよう泣かせてもよいうつくしければ

(毎日新聞2022.6.14朝刊 毎日歌壇加藤治郎欄入選)


機嫌悪くてもふつうの声がでる地元の駅は無人になって

(毎日新聞2022.6.20朝刊 毎日歌壇加藤治郎欄入選)


百合のものがたりを閉じる、トレンドでひとがしんでる、世界はひとつで

(毎日新聞2022.7.4朝刊 毎日歌壇加藤治郎欄入選)


スマートフォンおとして割れてないかみる生きたいのだと知る、高いところで

(毎日新聞2022.7.18朝刊 毎日歌壇加藤治郎欄入選)


ぼくはつまり,ぼくが育てた怪物で,父母が壊したおもちゃでもある.

(毎日新聞2022.9.13朝刊 毎日歌壇加藤治郎欄特選 2022年毎日歌壇賞優秀)


ヤバい色のいもむしをみてそれからはぼくがふたりになってしまった

(毎日新聞2022.10.24朝刊 毎日歌壇加藤治郎欄入選)


雨のあとの匂いも雨の匂いである今はいつの日か報われるか

(毎日新聞2022.10.31朝刊 毎日歌壇加藤治郎欄特選二席)


としょかんの駐輪場にプリッツを撒くなよ そうだろ おまえも孤独だ

(毎日新聞2022.12.5朝刊 毎日歌壇加藤治郎欄入選)


お湯が出るころ手を洗い終えていて何が救いか見当もつかず

今日の未知の部分を詩歌も知らなくて塚本邦雄歌集を閉じる

(短歌研究2023年7月号 短歌研究新人賞予選通過掲載作品)

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