見出し画像

短歌(2021.投稿系)

紛れもなくひとからうまれたぼくなのだ浴槽でるとひどくさむくて

(毎日新聞2021.1.11朝刊 毎日歌壇加藤治郎欄入選)


「寒すぎて鼓膜がこおりついたかもしれん」「氷の声が聴けますね」

(毎日新聞2021.1.23朝刊 毎日歌壇伊藤一彦欄入選)


あわくうちよせる頸のない潮騒にビニールのかべ光あそばせ

(毎日新聞2021.3.1朝刊 毎日歌壇加藤治郎欄入選)


ひかりまで三歩くらいの位置に立つ 洗濯機のふちにせんざいをおき

(東京新聞2021.4.25朝刊 東京歌壇東直子欄入選)


雨粒は肌理にふれてもつめたくていのちはすべて陰惨だろう

(毎日新聞2021.8.9朝刊 毎日歌壇加藤治郎欄入選)


ぼくを知る 配信アプリでひとつずつ映画を選び観ていくように

夢にみるおまえはどんな顔をしてぼくより歩くのおそかったっけ

現実と夢と記憶の色彩は爆けて ぼくが真ッ白だから

(短歌研究2021年9月号 水原紫苑欄佳作)


おきたことでちらかる脳という小部屋 シャワーをながめに浴びていた

無人レジの無愛想さを望んでるあたらしい日々 へぇ そうだったんだ

(短歌研究2021年9月号 短歌研究新人賞予選通過掲載作品)


降り止めばあってもじゃまな雨傘のぼくを生かしたこの世の徒労

(毎日新聞2021.8.23朝刊 毎日歌壇加藤治郎欄入選)


うちわではなかったそれはクーラーでさっきまで居た、あなたの夢が

(毎日新聞2021.8.30朝刊 毎日歌壇加藤治郎欄入選)


環状線はずうっとまわるずうっっとずっとぼくらはこのままでいる (毎日歌壇2021.9.14朝刊 毎日歌壇加藤治郎欄入選)


みらいって言ったらいつもこわくってボトルの水から目線をはずす

(毎日新聞2021.9.20朝刊 毎日歌壇加藤治郎欄入選)


吹いた風にふりむくそこに広がった無の錯覚がぼくであるから

(短歌研究2021年10月号 短歌研究詠草島田修三選一首掲載)


ピーラーの刃先をゆびでなぞり洗うまだがんばれるっておもうことにして

(毎日新聞2021.11.22朝刊 毎日歌壇加藤治郎欄入選)


空へ手をのばすくせがある、空にある吊り手を思う名残のような

(短歌研究2022年1月号 短歌研究詠草高野公彦選一首掲載)

>~<っっ