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Higher

昨日、偶然、君の運転する車に衝突しそうになった。咄嗟のブレーキの時に手を振るのが見えて君だと気づいた。

ショートメールで「ごめん!加害者になるとこだった!」と詫びたら

「私も子供の迎えで急いでたの、ごめんなさい笑」と返信があったので

僕はthe cardigans の「higher」の動画のリンクを貼り付けて返信した。

「カーディガンズ!いい曲だね」と返信があった。



君と僕は出会った時から、音楽の好みがとても似ていた。君には旦那がいて、そして僕には彼女がいた。

あの夜も偶然だった。今思えば、あれこそ事故だったのかも知れない。君は覚えていないだろうけどBARで酷く酔った君が僕に絡んできた。足取りもままならない感じだったから帰りが同じ方向だった僕がタクシー呼んで家まで送るつもりだった。酩酊の君は相変わらず僕に絡んできて、運転手の目を盗んでは僕にキスしてきた。結局、君はタクシーを降りるべきだった家でなく僕のアパートで降りて、一夜を共にした。

その日から、単純な僕は勘違いして君に恋してしまった。君には旦那がいるし、結婚はしていないものの僕には彼女がいたからめったに会えなかった。会えない時間が感情を焦がしてしまった。僕の気持ちは君には重過ぎた。振り返れば僕は遊びを知らない男だった。

君にとって僕はジャンクフードだった。僕もまたガラクタになった心を君に擦り合わせていた。始まりもなければ終わりもない恋だった。

アパートには君が置いていったCDが行き場所を失っていた。君との思い出が涙と共に溢れ出た。僕の感情は涙と切なさで収縮した。君がいなくなった1Kの狭い部屋が途方もなく広く感じた。

「いつかは返さないと」と思いながら時間が過ぎて。ある時、ばったり君と会った時にあのCDを返したいと申し出たら

「あなたと繋がってる感じがするから、返さなくていいよ」って言われた。

更に時は過ぎて、君はまだ僕の友達でいてくれている。

たまに最近聞いてる音楽をメールする。相変わらず、音楽の好みは一緒だ。

僕の家の押入れにはようやく行き場所を見つけたCDが今も眠っている。

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