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新平年値もどきを算出してみました(平均気温)

2021年5月に平年値が更新されます。
気象庁では、西暦年の1の位が1の年から続く30 年間の平均値をもって平年
値とし、10 年ごとに更新しています。これまでの1981~2010年の観測値による平年値から1991~2020年の観測値による平年値に変わります。

1981~1990年の観測値が平年値の対象から外れ、2011~2020年の観測値が平年値の対象に加わることによって、新平年値がどう変わるのかを調べてみました。

対象項目は、平均気温、降水量、日照時間の3項目です。
今回は平均気温についてお伝えします。

算出にあたって・・

算出対象地点は自分なりの勘をはたらかせて次の5地点としました。
1 秋田、2 山形、3 東京、4 広島、5 熊本

理由は次の4点です。
・長期的な気温の上昇傾向は?北と南でどうか?
・梅雨の変化(大雨の時期のずれや降雨域の北へのずれ)
・過去10年に大きな災害の発生した場所での影響
・観測場所が2014年に変更された東京

40年前を容易には思い出すことはできませんが、以前ならば梅雨前線は本州南岸に停滞することが多くて、西日本で災害が起きることが多かったのに、最近は梅雨末期に限らず北陸から東北地方にかけて停滞することもまれではなくなった?ように感じていたり、九州では夏休みに入る(7/20)頃にはおおむね梅雨明け、その後数日は夕立ちがあってもそれ以降は安定した晴天が続いた?ような気がしたりといった昔の記憶が地点選定における自分なりの勘に反映されています。

算出方法について

算出方法は算出するにあたって初めて知ることになりました。
「気象観測統計指針」の第5章に平年値についての記述があり、次のとおり書かれています。

日別平年値は、統計期間内のそれぞれの値を単に累年平均して算出した場合(30 年間の1 月1 日の値を算術平均した値を1 月1 日の値とするなど)、前後の日で差が大きくなることがあり、実用上不便なことが多い。そのため、移動平均によって平滑化した日別平滑平年値を求め、これを使用する。移動平均には、KZ(Kolmogorov-Zurbenko)フィルタ(単純移動平均を数回繰り返す方式をいう。日別の累年平均値に対して9 日間移動平均を3 回行う。)を日別、日別7、14、28 日間の各項目(平年値、標準偏差、階級区分値、地域平均階級区分値)に対して用いる。

なお、正しい平年値を算出するには全観測値のうち統計に含めないとする観測値の除去が必要ですが、実施していません。あくまでも傾向を知るということでご了解ください。

ただし、除去しないことによる影響がわからなければ算出してみた新平年値も「そんなもん参考になるか」ということになってしまうので、気象庁が公開している平年値(1981-2010)と統計に含めないとする値を除去せず計算により求めた平年値(1981-2010)をグラフ上に表示するようにしてあります。

平均気温

グラフには次の3項目を表示しています。
 1)気象庁が公開している平年値(1981-2010)  灰色線
 2)計算により求めた平年値(1981-2010) 青線
 3)計算により求めた平年値(1991-2020) 橙線

どの地点も、1)青線と2)灰色線は重なっています。
よって傾向を見る分にはほぼ影響がないであろうと考えました。

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東京は2014年に大手町から北の丸公園に観測地点が移転されました。
移転前の同時比較観測から平均気温は約0.9℃低下するとされています。
気象庁の公開している平年値は計算結果と比べてみるとなるほどそのぐらいずれています。

「東京」の観測地点の移転について 2014年11月14日 気象庁 観測部
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/minkan/koushu141114/shiryou1.pdf

平年値比較

計算により求めた2つの平年値の差を求めた結果をグラフに示します。
わずか4地点なので安易な判断はよくないのですが、平均気温の上昇傾向はやはり明らかで、秋田、山形のほうが(広島は微妙)熊本よりも上昇幅がやや大きい傾向がみられます。

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次の稿では、降水量についてお伝えします。

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