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マニラKTV☆カラオケ物語9

【前回までのあらすじ】
健太はマニラ到着当日に、カラオケを5軒も梯子する。
4軒目に以前からのお目当てだったサラに会いに行くも
他のグループ店に移動していることが判明する。
しかしそこで偶然出会ったラーニャに一目ぼれをする。
ラーニャは何故か明日の健太のショッピングに同行したい
と言いだす。内心大喜びするも、サラにも会いたくなり
移動したグループ店に会いに行く。
美貌で底抜けに明るいサラにも、すっかりのぼせ上ってしまう。
サラからも明日会っても構わないとの感触を得るが、断念する。
二週間後の渡比に期待をかける。翌日、予定の時間より若干
遅れるが、予定通りラーニャとホテルのロビーで落ち合う。
楽しくショッピングモールを歩き回ったが、何故かラーニャ
は何も欲しがらない。あまりにも拍子抜けした健太であるが
この後に厳しい現実を思い知ることになる・・_| ̄|○


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午後の3時頃、ホテルのエントランスに到着した。

ここから藤田さんとは、完全に別行動となる予定である。


『健太、ごめんなさいね、私これからアパートに帰らないと往けないの』


『お店のアパートにみんなで住んでるんだけど』


『今日は私が当番で皆の食事の用意をしなければならないの・・』

ラーニャがうつむき加減に、申し訳なさそうに言った。


えっ??マジかよ、あ~ぁ・・やっぱりな・・

大方予想はしていたのだが、俺は心の中でため息をついた・・

もちろんあわよくば、ホテルの部屋に入って二人でまったりと至福のひと時を過ごそうなんて、当然考えていた訳だ・・

俺はあくまで表面上は笑顔を取り作りながら、『かまわないよ、今日は素敵な思い出をありがとう』

『君のことは忘れないよ』と言った。

ラーニャは悲しそうな表情を浮かべ『そんな、まるで別れの言葉みたいじゃない?』

『私たちこれからも一緒でしょう??』

『ああ・・心配しないで、夜はお店に行くから』と俺は言い通りすがりのタクシーを止めた。


タクシー代を受け取らないラーニャだったが、強引にポケットに押し込み走り去るタクシーを見送った。


俺はホテルの玄関を入ると、そのままロビーのソファーにへたり込んでしまった。


やれやれ、現実はそう甘くはないな・・そう考えている内に睡魔が襲ってきた。


俺はゆっくりと立ち上がり、部屋へと戻った。


ゆっくりとシャワーを浴びた後に、携帯の電源をバイブに切り替えてからベッドに横になった。

そのままウトウトとしている内に寝てしまった・・


どのくらい眠ってしまったのだろうか、目が覚めてカーテンを開けると外は既に暗くなっていた。


ふと横を見ると、枕元に置いてあった携帯のランプが点滅している。


確認するとたくさんのメールや着信が入っていた。


ほとんどがお店の女の子からであったが、藤田さんからも何件もの着信やメールが入っていた。


連絡が欲しいとの内容だったので、すぐに電話を入れた。


『健太か、いや~ごめんごめん、疲れて寝てるところ悪かったな~』


『いえ、すいません、こちらこそ確認が遅くなってしまって・・』


『申し訳ない、健太にちょっと頼みがあるんだけど・・』

『いまミシェルと出先にいるんだけど、戻るのがもう少し時間が掛りそうなんだ』


『実は、ミシェルの従妹の子がロビーで待ってるはずなんだ』


『名前は、グレイスで年齢は18歳だ』


『たぶん凄くお腹を空かせてると思うんだ』

『健太、すまないけどどこか食事にでも連れて行ってやってくれないか?』


『全然構わないですよ、了解しました』


『ありがとう助かったよ』

『ミシェルが言うには白いブラウスを着てるそうだ、よろしく頼んだよ』


やれやれだぜ・・俺は正直、内心は憂鬱だった・・

普段何かとお世話になってる藤田さんの頼みは、無下にはできない。

俺は着替えて部屋を出て、ロビーに降りた。


俺はロビーの中を捜した、あっ多分あの子だと思い近づいて話しかけた。


『はじめまして、健太だけど、話はミシェルから聞いてるよね?』


グレイスは恥ずかしそうに笑顔で頷いた、笑顔がすごくかわいい子だ、一瞬よからぬことが頭の中を過った。


『君は確か18歳だったよね?』

『IDカードとか身分の証明出来るものは持っているかい?』


俺はフィリピンの法律を思い出した

確か17歳以下を夜連れていると非常にやばいことになる筈であった。


グレイスはパスポートのコピーを差し出した。


俺はそれを受け取り内容を確認した、生年月日は、1988 11 14 となっている。

書類上は18歳で間違い無い、写真も本人に間違いないようだ。

俺は少しほっとした・・『お腹が空いているだろう?』(グトム ナ イカウ)と聞いた。
 
グレイスは恥ずかしそうに、『はい』(オポ)と答えた。


俺は笑顔で、『ご飯を食べに行こう』(プンタ タヨサ パグカイン)と言って腰を上げた。

グレイスの表情がパッと笑顔に変わり、バックを抱えて立ち上がった。


つづく


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