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マニラKTV☆カラオケ物語10

【前回までのあらすじ】
健太はマニラ到着当日にカラオケを5軒も梯子する。
4軒目に以前からのお目当てだったサラに会いに行くも
他のグループ店に移動していることが判明する
しかしそこで偶然出会ったラーニャに一目ぼれをする。
ラーニャは何故か明日の健太のショッピングに同行したい
と言いだす、内心大喜びするも、サラにも会いたくなり
移動したグループ店に会いに行く。
美貌で底抜けに明るいサラにもすっかりのぼせ上ってしまう。
サラからも明日会っても構わないとの感触を得るが、断念する。
一週間後の渡比に期待をかける。翌日、予定の時間より若干
遅れるが、予定通りラーニャとホテルのロビーで落ち合う。
楽しくショッピングモールを歩き回ったが、何故かラーニャは
何も欲しがらない。あまりにも拍子抜けした健太であるが
この後に厳しい現実を思い知ることになる・・
さあホテルに戻ってこれからと思った矢先、何故か帰られる・・
傷心の!?健太は部屋に帰ってふて寝をしてしまう。
そしてその後に藤田さんから、彼女の従妹を食事に連れてって
くれないかと頼まれる。とんだお荷物を背負込んだと落込むが
グレイスのあまりの可愛さに健太は驚く。


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俺はグレイスに『近くのフィリピン料理のレストランでいいかな?』と聞いた。


『あなたに任せると』、グレイスは言った。


『これからは、kenと呼んでくれ』と言うと笑顔で頷いた。


ホテルの玄関を左方向に100mほど進んだ角を左に曲がると、「カマヤン」という名のフィリピン料理のレストランがある。


550ペソで食べ放題のバイキング形式のレストランである。


店内は比較的空いていた、二人掛けの席に向かい合って座った。


お互いに思い思いの料理を運んで食べた。


グレイスは日本語がほとんど解らない。


俺もタガログ語のヒアリングも相手が話していることの3割程度しか理解出来ないから


どうしても会話はぎこちないものになってしまう。


俺はグレイスに聞いた『もしかして姉はタレントで日本に行ったことあるのかい?』

グレイスは目を輝かせながら喋った。『姉は元タレントで日本人と結婚してるの』

『私も日本にどうしても行きたいから、いまオーデションを受けてるところなの』


そうか、『夢が叶うといいね』と俺は言った。


このレストランは、勝手に席の前にやってきて、演奏をする音楽隊なるものが存在する。


他の席で演奏していた、彼らが自分たちのテーブルにやってきた。


俺は、『何かリクエストすれば?』と言った。


グレイスは、嬉しそうにセリーヌディオンの、My Heart Will Go Onをリクエストしていた。


俺は携帯のカメラでグレイスの可愛い横顔を一枚撮った。


演奏が流れる、俺は目を閉じて聞いていた。


色々なことが頭の中を過っていた、さっきトイレに行った時に携帯のメールをチェックしたことが心に残っていた・・


藤田さんから「ごめん朝まで帰れそうもない」という文面を受け取っていたからだ・・


この後に家に送り返そうか、それとも俺の部屋に泊めて自分は朝までカラオケ等で時間を潰そうかと考えを巡らせていたからだ・・


するとken、ken、とグレイスが俺を呼びかけた、俺はハッと我に返った。


いつの間にか演奏が終わっていたのだ、慌ててチップを渡すと音楽隊は他の客席に移動して行った。


俺はそろそろ出ようと言った。


グレイスは笑顔で頷いた、レストランを出てホテルに向かう歩道の足場は悪い。


気を付けないとバランスを崩して転びそうになってしまう。


途中でグレイスがよろめいた、俺は両腕で抱き止めた。


グレイスの髪の毛かうなじの周辺からコロンのいい香りが漂った。


俺は動揺した、このまま欲望の赴くままに突き進んでしまおうか・・


そして俺は黙って、グレイスの手を握った・・グレイスも手を握り返してきた。


とても柔らかい手だった、何だか20年以上も前の、高校生の頃を思い出してしまった。


あの頃の年に戻れればきっと、お似合いのカップルにも見えたんだろうなと・・ 


つづく


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