5回生コーチという1年
今回は昨年1年間取り組んだ5回生コーチの経験と気づきをシェアしたいと思います。
僕は今年就職活動をしたので6月に内定をもらうまでは自分が行ける時に参加をして、夏合宿以降は基本的に部活に参加していました。
僕は中学校からアメフトを始めて10年間選手としてやってきました。ですので1年間コーチとして練習に参加する経験は初めてでした。そして自らが練習に入るプレイングコーチでも無かったので本当にこれまでの10年間とは異なる立場からアメフトに関わりました。
その分これまでの10年間との違いも多くまた気づき、時に戸惑いもありました。
今回は主に1年間5回生コーチをしてみて
・気付き
・難しかったこと
・良かったこと
をシェアしていきたいと思います。
その前になぜコーチをしようと思ったかの経緯について触れたいと思います。
まず僕は5回生になるに当たって5回生コーチをしようとは思っていませんでした。正直にいうと5回生コーチをしたくありませんでした。なぜかというとせっかく5回生になって1年間自由な時間があるのだから今年1年間、部活に縛られたくなかったからです。
きっかけは4年間住んだ下宿先から実家に引越しをしている時にかかってきたヘッドコーチからの電話でした。
(文中ややこしいですが以降ヘッドコーチ(HC)と監督は同じ意味で同一人物です。)
「ちょっと話あるんやけど、今週のいつかクラブハウス来れるか?」
この瞬間すごい嫌な予感がしました。特に何かをやからした覚えもないし褒められるような事もしてないから5回生コーチの案件しかないなと。
3日後、僕は5回生コーチを断る理由を何個も考えて準備してクラブハウスに向かいました。
するとヘッドコーチから
「事情があって今年WRコーチが1年間参加出来ひんねんやわ。他探しても時期的にも結構決まってきてるし、今年はWRコーチお前にやってもらうしかないんやわ。」と言われました。
あんなに断る理由を考えていた僕ですが、あの監督にそんなことを言われるとあんなに準備した断る理由も強く言うことは出来ませんでした。
そして気付いたら帰る時には、
「ほなそういうことやから頼むわ」
と言われて、コーチを引き受ける方向になっていました。
実際僕の気持ちとしてもそこでヘッドコーチと色んな話をして気持ちが変わって来ていたのも事実でした。現役時代には聞くことの無かったような会話もしてHC自身、本当に勝ちたいんだなという気持ちが伝わってきたのがやる決め手になりました。そして後日、引き受けることにしました。
長くなりましたが、これがコーチをやったきっかけです。
それでは本題に戻りたいと思います。
・気付いたこと
練習に参加して教えるようになってめっちゃ痛感こと。それは教えてるおれが1番上手くなるぞってことでした。
これは本当に5回生コーチをして指導するに当たって1番思ったことです。
実際にはプレーしていなかったので上達することは無かったのですが、人に教えようと思ったら自分が深く理解していないと教えられない事に気付いたからです。
選手時代は感覚でやっていたテクニックや勝ち方も教える時にそれでは通用しないからです。このシチュエーションは雰囲気とノリでいけるとか言ってたら選手に何も伝わりません。笑
だからまず自分の中で雰囲気やノリという言葉を出来るだけ無くして言葉に置き換える必要がありました。この作業がとても大変でした。
これまでのアメフト人生でたまにセンスとかノリで終わらすコーチがいましたがその気持ちがすごく分かりました。それが1番楽だからです。僕も最初や面倒くさなった時は言ってしまってたことあると思いますが、自分自身がうまく言葉で表せない裏返しでした。
反対に、自分がしっかりと言語で説明して教えられる時は自分の中でも自信のある技術やプレーが多かったです。
何かを人に伝えようと思うと、自分の中で情報を整理して大事だと思うポイントことを選んで伝えると思うので、選手としても上手くなる近道だなと思います。
だから現役の選手は上手くなりたい時、コーチに教えてもらうことも大切ですが、時に自分が人に教えるということも上達につながることを知ってほしいです。
・難しかったこと
これは先程の気づきとも重なりますが、ミーティングで教えるというのはとても難しかったです。
アメフトのミーティングでは練習を撮ったビデオを、みんなで後から見ることがどこのチームでも練習の一環になっていることが多いです。
どこまでのレベルのミスを指摘しようとか、これは一瞬で言葉に変換して伝えられへんぞとかいうシチュエーションがめっちゃありました。
その度にあんまりちゃんと教えられてないなーとか、ほんまに選手に伝わってるんかなと思うこと多かったです。
そんな時に僕は最強の返し方を思いつきました。
ある選手に
「この時はどうしたらいいですか?」
って聞かれて正直あんま分からんなって時に
「じゃあ〜はどうしたらいいと思う?」
って質問返しをすることです。
これを思い付いてからは気持ちがめっちゃ楽になりました。一見コーチ放棄してるやんと思われるかもしれませんが、決してそんな事はないです。笑
たしかに自分が深く理解出来ていないということに落ち度はあるのですが、その選手自身にも考えてもらう機会を与えることにもなる事に気づきました。
自分が人に教える時に考えて答えを出していたように、選手にも同じことをやってもらったらいいと思うようになりました。
最初は自分の実力不足の回避だったのですが、結果的には一方的に自分の考えを教えるより、選手からもこうした方がいいと思うという意見が出ることで僕が教えてもらうこともあったのでwin-winだったのかなと思います。
アメフトのミーティングの在り方もコーチが一方的教えるだけでなく選手も同じくらい意見をいって進めた方が気づきが多いし、お互いに有意義な時間になります。
僕も選手だったから分かるのですがアメフトのミーティングってめっちゃ長くて集中力キープすることが難しいです。特に怪我をしてて自分が出てない練習ビデオを毎日長時間見ることは想像以上に苦痛です。その時間をただの退屈な時間にするのではなく、自分なりの意見を言うだけで長期的に見るとフットボールIQに大きく差が出ると思います。
そしてコーチは選手が思っている以上に選手の生の声や現場で出たミスのリアルな原因を欲しがっています。だから選手もコーチだからと臆することなく自分の思ったことをもっとどんどん言ったほうがコーチ的にも嬉しいと思います。
あと1番難しかったことは僕自身が深くディフェンスのシステムを理解を出来ていなかったことです。僕は中学時代にLBをしたくらいでほとんど10年間のディフェンスに関わってきませんでした。なのでディフェンスの守り方やカバーをそれこそ雰囲気やプレーしてる時の景色で覚えていました。
本当にディフェンスを理解しようと思えばDLやLBの動きから学ばないといけません。そこの部分にしっかり向き合って理解して選手に伝えられなかったことはとても申し訳なかったなと思っています。
**・良かったこと **
コーチをしていて良かったことはやっぱり1年間ずっと一緒に練習した選手が試合で活躍してくれることです。特に練習でも見せないようなビッグプレーを起こした時は、サイドラインで観客みたいに喜んでいました。
あとは練習やミーティングを通じで選手自身の変化や成長を目の当たりにすることです。シーズン当初やったら絶対こんな事言ったりするキャラじゃ無かった選手がシーズンを通して変わっていく姿は見ていて感銘を受けました。それを見て僕も彼らに負けないようにもっと頑張らないとって思いました。
あとは、練習中や練習外の時間に他愛の無い会話をしたり、質問をしてくれてそれに対して一緒に考えたりする時間も楽しかったです。
・最後に
コーチという違う立場を1年間する事は、これまで選手しかしてこなかった僕にとってとても貴重な体験となりました。
この機会を与えてくれた古橋さんに感謝しています。
もっとコーチと選手が対等な立場でいいと思います。コーチも選手もチームの中の役割や貢献の仕方が違うだけで「勝利」や僕たちのチームでいうと「日本一になる」というゴールは同じです。
そのために選手は良いプレーが出来るように努力するし、スタッフは選手が良いプレーを出来るような環境を整えるし、コーチは選手の良いところを活かすプレーを考えるという「勝利」に向けてそれぞれの役割を全うする必要があります。
昨年クレムソン大学が全米優勝した後に監督が優勝インタビューを受けていました。その時にエースDLの選手が、監督のヒーローインタビューの最中に優勝記念キャップを被せるというシーンがありました。その後監督も笑顔でその選手に話しかけてました。監督と選手の間に強い信頼関係が出来上がっている印象的なシーンでした。 日本ではあまり考えられないシーンだったので鮮明に覚えています。
いろんな強いチームの形があると思いますが、監督やコーチが怖いからという恐怖の理由で頑張るチームより、アメフトが好きで楽しくて自分が勝ちたい、監督を勝たせたいからという理由で勝利するチームの方がより魅力的だと思います。
特に自分の母校ではそういった考え方があったので、そのやり方で勝てるチームになりたいなと思っていました。
今年から関わることは少なくなりますが5回生コーチの1年は僕にとって違う視点からアメフトを見る貴重な経験だったと思います。
今年こそ日本一奪還することを期待しています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?