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イシュタルの塔8 最終剣グランドフィナーレ

こんなイマジネーションをするはるか前。
ユングのユも知らない境界性パーソナリティ障害が酷かった独身の頃。
俺は黒の剣を「女神を探し人に堕した女神を断罪する剣」と表現した事があった。
思えばあの時答えを言っていたのだ。
俺はようやく女神を探す事も断罪する事もやめる事が出来たのだろう。
診断名を貰って、それが十分離婚の要因に出来る事を話し、もし彼女が望むなら車一つで出て行こうと思っていた。
彼女はそれを選ばなかった。
神格化なぞしなくても特別視なぞしなくてもとうの昔に「ただ一人」は決まっていたのだ。
だが彼女もまた大地の女神の眷属であると時たま思い直す時がある。
我が家の「山の神」は俺の無駄遣いにたいそう厳しいからだ。

いつだったかは覚えていない。
けもの」が人のかたちを取った後であるように思う。

いつの間にか俺の中に砂漠に刺さった身長の数倍はありそうな巨大な両刃の剣が刺さっているというイマジネーションがあった。

名前は自然とあった。
その剣は
「グランドフィナーレ」という名だった。

「とてもじゃないが引き抜く事は出来ない」
そう感じていた。
これは一生俺の中にあるものだと。

カウンセリングの次の予約をしなくて良い。
心理士にそう告げられて正直不安になった。
回復してきたという実感はあった。
気分の突然の変調はなりを潜めて数ヶ月経った。

だが具体的に何か変わったわけではなく、認知が少し横にずれて「大丈夫なように感じる」だけだとも知っていた。

ひょっとして手に負えなくなったのか?

そのようにも感じた。
そう感じながらも俺が心理士に転移している悪くない傾向である事も自分で解っていた。

「かむがたり」が出現するような危機的なイマジネーションも一ヶ月以上なかった。

ある日の事。
グランドフィナーレが小さくなっている事に気づいた。

この投稿の後くらいである。

砂漠に片手ほどの長さの剣が刺さっている。
そうか。今なら抜けるんだ。
そう自然に感じた。

剣の柄を片手で握る。
驚くほど何もなく剣が抜けた。

特別な感慨はなかった。
それが当たり前であるように感じたから。
そして抜けてしまった剣の扱いに困った。
正直なところ「要らない」のだ。
しばらく考えたのち空に放る事にした。
グランドフィナーレを掲げて、空に還すように放り上げた。

4本の剣が出現し剣を放り上げたあたりに収束した。

そして収束した剣が一旦姿を失い桜の花びらが当たり一面に舞い散った。
砂漠だったはずの場所は温かな日の差す桜並木だった。

視界を邪魔するほどの舞い散る桜。

少し先に老賢者や世界樹の女神、イマジネーションの登場人物たちがいた。
彼らは一人ずつ話しかけて来た。
俺の心の中に戻るそうだ。

次にけものとヒーローと子供が現れた。
彼らも俺の「一面」になるのだという。

「もうあんまり呼ぶんじゃねーぞ、わりとメンドくせーから」とけものが言った。

少し寂しくなって、うるせーわバカもうくんなと俺は言った。
そして二人で笑い合った。

子供はメタ発言が大好きなので
「これが統合ってことなんすかねー わりとエンディングが陳腐」などとほざいた。

そうして彼らは桜の中に消えていった。

剣も。老賢者も。女神も。けものさえも、皆去ってしまった。
だが不思議と大きな寂しさは感じなかった。
ようやく彼らも休めるのか、という安堵感のようなものの方が勝っていた。
グランドフィナーレは抜かれ終わるためだけに存在した剣だった。
さまざまな物事を断ち切り終わらせる俺のやり方自体を「終わらせる」剣。

それ故に逆説的に一度も使われる事も鞘に収まる事も何も斬る事なくただ消えゆく剣。

俺は今まで逆らっていたのだ。
傷があるが故に恐れ、傷を負わせた者への復讐を誓ったが故に。

この最終剣のように時を経て消えゆく悲しみや傷があるという「答え」がある事に抗いたかったのだ。

適応的なコーピングの象徴としての「剣」
確かにそれは俺の生きる力にはなるだろう。
だがそれは同時に強く意識すれば「囚われ」でもある。

蝶の羽ばたきが中国大陸を吹き飛ばすという理論のようにどんなに遠くても他の波と混じり合いながら波はやがて向こう岸に届く。

俺の悲しみも怒りも愛しさも経られた時の中でやがていつかどこかに届く。

それでいい。
いや、それがいい。
そこに剣は要らない。
もちろん必要な時は時たま来るだろうけど、それは特別なものじゃなくていい。
「あの爺ィの予言どおりになったのはシャクだけど」

そう思いながら舞い散る桜の中でずっと空を眺めていた。
その後こんな事を書いている。

これで終わった、と感じていたんだが実はまだイマジネーションに残っているものがあった。

二度目の箱庭に登場した「卵」だ。
実はあれがずっとココロの中にあった。

俺はそれを宇宙卵と呼んでいた。
いつの頃からかその中に一糸纏わず膝を抱えて赤ん坊のように眠る白い髪の長髪の少年がいた。

こいつが俺の何かである事は間違いない。

ただ、その正体は解らず話しかけても宇宙卵の少年は沈黙を守り続けた。

◆◆◆

脳内ぶちまけ雑文「イシュタルの塔」
ついに2ヶ月前まで追いつきました。

ずっとコアであると思っていた剣を放り上げるとは思ってなかった。
この頃ベルセルクを読めないって言ってたんだけど、剣が邪魔だったんだな、と今は思う。
こんなぶっそうなもんがあっていいのかなーともいつの間にか感じていたしきっと潮時だったんだろうな。

しかしまだ終わってはいなかったんです。
卵があるなー
多分これで何か始まるんだろうなーとは思ってたけどさっぱり割れるイマジネーションが出ない。

俺はこの卵が何者であるかウンウン悩むハメになります。

次回
「剣の王と万色の闇」

差分

「宇宙卵」が割れた。
こいつの正体がようやくわかった。
なので一旦、卵の話は保留にして
次回は自分の中のサイコパスと対峙した話。

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