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レプトスピラ症を知る。 〜 犬も人も感染する伝染病

本稿は『けもの道 2019春号』(2019年4月刊)に掲載された記事を note 向けに編集したものです。掲載内容は刊行当時のものとなっております。あらかじめご了承ください。


執筆|遠藤貴壽
グリーンピース動物病院(兵庫県)院長、獣医師・猪猟師

猟犬を使っている人はその名前を聞いたことがある人も多いかと思いますが、今回はレプトスピラについてお話しします。

どんな病気か?

レプトスピラ病は、レプトスピラ属の螺旋型の細菌が原因で肝臓と腎臓を同時に侵される急性の伝染病で、犬だけでなく人間も感染する恐れのある危険な伝染病です。

どれくらい怖い病気かというと、伝染病予防法という法律で届出伝染病に指定されていまして、レプトスピラ病に罹った人を診察した医師や、感染した犬を診察した獣医師はその事実を役所に届け出なければならないと決められているのです。

原因は?

レプトスピラ属の細菌には、血清型という分類で200以上の種類が存在していますが、その中で日本国内に常在している種類は6種類あると言われています。

この菌の性質の特徴は、暖かい湿った環境を好むことでして、レプトスピラ病が発生する時期は初夏から秋までが圧倒的に多く、初冬から春先まではほとんど発生は見られません。

地域的には九州とか紀伊半島のような気温の高い地域に多発する傾向があります。ただし、その他の地域では発生しないということではなく、私自身は鳥取県に出猟した際に自分の犬がレプトスピラに感染した経験があります。

自然界でのレプトスピラ菌は、野ネズミやアライグマなどの野生動物に感染していることが多く、野ネズミやアライグマは体内にレプトスピラ菌を持っていても病気にはならずにその尿から菌を排出し続けて、他の動物の感染源になるという怖い存在でもあります。

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