TRUMPと出会ってから沼に落ちるまでの話 ~はじめての繭期2020に寄せて


血も涙もない、と噂のTRUMPシリーズが、今年も一挙無料上映されましたね。
自分が先日の刀ステ一挙無料配信で綺麗に沼に落ちたように、これで繭期の民が増えると嬉しいなと思います。一緒に永遠の地獄を生きましょう。

ちなみに自分は、金曜夜から手持ちの円盤を見返して、はじめてじゃない何度目かの繭期祭りをしていました。そして無事に精神が死にました。ここまでくるともうなんか、叩きのめされることがわかっててそれが来ると救いみたいな…Mかな…?

さて、本稿ですが、実は、自分がTRUMPシリーズにどうしても言いたいこと、懺悔したいことがありまして。その、自分が出会ってから沼に落ちるまでの話をしたいと思います。

お読みいただける方としては、土日のTRUMPとグランギニョル、それに加えてLILIUMをご覧になった方を想定しています。LILIUMは見ていただかないと話が始まらないんですよ…!
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2015年:TRUMP初見

自分が初めて見たTRUMPシリーズは、今回初日に配信された、2015年版TRUMPのTRUTHでした。

観に行った動機は2つ。
まず、特撮出演経験のあるキャストがたくさん出ていたから。音也、太牙、エンター、光実、凰蓮…しかも凰蓮ことメタルさんが女装のミケランジェロを演じるバージョン…w
太牙が純血の貴族だったり、あとは観に行ってわかったことですが、音也が人間の女と云々っていうキャラクターだったりと、キバとの重なりも多く…あとエンターは人外だし…
実際、初見のときには、あまりにもそういう特撮で演じた役との重なりの印象が強すぎて、TRUMPシリーズの本当の悲劇を理解できてなかったんですよ…。

そしてもう一つ、末満さんの代表作のひとつ、と聞いていたから。
実はこの2015年11月のTRUMPの直前、末満さんはDステ「夕陽伝」を書かれてました。
これもね、D-BOYSと、SPECTERの初演再演などでお馴染みの劇団Patchとで、同じ本を違う演出家、違うカンパニーでほぼ同時期に演るっていうすごい面白い試みだったんですが…!さておき。
夕陽伝を自分が観に行った回で、すごく印象的な出来事がありまして。
来場者プレゼントで、最後に、席番号抽選だったかな、お一人にキャストサインをその場で入れてだったかな?手渡し?で、ポスター進呈、ってのがあったんです。
そのとき当選して壇上に呼ばれた女性が、誰のファンですか?って聞かれて、「末満さんの…」って言ったんですよ。なんだかそれが忘れられなくて。
だって我が人生最推しである瀬戸くんとか、鈴木裕樹くんとか、もちろん前山くんも出てたし…っていう中で、ですよ。
そこで名前が挙がる末満って人、何者…!?って思ったんです。
ちなみにそのときは結局、ヒロインの小芝風花ちゃんご指名、ってなったのじゃなかったかなあ。あのとき、末満さんの…って言ってくれた方、あなたは間違いなく今の私をつくってます…(笑)繭期の先輩だったのだろうか…。

そしてその末満さんがさあ!?ダリ役でお出になるじゃん!?そりゃもう気になりすぎるよね!!!ってことで、あーなんか覚えてる、大学の文化祭の準備期間か、もしくは真っ最中?に観に行ったんです。


で。
当時の感想は、今思い返すと、まだ本当の悲劇を知らない…って感じなんですよね。

勘違いの1つ目は、あまりにもBL読みしてしまっていたこと。
はじ繭タグのツイートで、いっそBLって言ってくれた方が楽なくらいのクソデカ感情、ってのをお見かけしたんですが、いやほんとそれな。BLを貶める意図はない言い回しなのですが、もはやBLとかそういうんじゃねえ。

当時は、前述のとおり特撮に重ねすぎてしまっていたってのと、あと鑑賞当時の自分の気分によるところも大きかったかもしれない。やっぱりそういうのに影響されて、感想って変わりますよね。これだから観劇はやめられないんですが。

つまり何かというと、あまりにもアレンとクラウスの行き違いにばかり目が行ってしまっていたんです。
だって!アレンが音也(武田航平さん)なんだもん!それで人間の女に会いに行きたい云々とか言い出したら、なんかもう、それ!!人間と吸血種との立場は逆だけど、完全に音也がファンガイアの女を破滅するほどに愛した物語じゃん…。

あと、なんだろう、ダンピールをめぐるセリフに、マイノリティって…みたいなのを感じてしまっていたから、もしクラウスからアレンに向ける感情が恋愛的なそれだとして、でもアレンは人間の女を身ごもらせてて、って考えると、クラウスの受けたショックがもう耐えられなさすぎて。
しつこいようですが、このときはまだ、クラウスの本当の悲劇を知らなかったんですよ…。

ダンピールであるソフィに向かって、アンジェリコたちは、汚らわしいといってさげすみますよね。
でも傍でそれを聞いているウルも実はダンピールで。
似たようなことって現実によく起こってると思うんですよ。何かしらのマイノリティ性を抱えた人が、その場の話題でその属性が笑いものにされているとき、無理して調子を合わせたり、それができなければウルのように固まるしかなかったり。

ドブネズミの匂いがする、っていうのも、よく考えたらおかしいんですよね。
だって、本当にダンピールからドブネズミの匂いがするなら、アンジェリコたちは、ウルのことにも気づくはず。
(あと他作品でも実は、明確にダンピールと言われている人物以外にも、いわば隠れダンピールと言えるキャラクターがいるのですが、その子も周りには一人を除いてほとんど気づかれてないんです)
そうじゃないってことは、ドブネズミの匂いっていうのは、本当にその匂いがするわけじゃなくて、単なるさげすみ文句、いじめの定型文なわけです。

つまりダンピールと純血種って、傍目には違いがわからないわけですよ。本当に匂いが違うわけじゃない。カミングアウトしない限りは、ダンピールであることは誰にもわからないわけです。
それなのに、まるでダンピールは、純血種とは何もかも全く違う生き物みたいに、さげすまれる。言わなきゃわかんないくらい、同じ生き物のはずなのに。本当は違わないのに、違うということにして、迫害される。
そして、みんなにダンピールであると知れ渡っているソフィだけが嫌がらせされて、ウルにはエリートだなんだと勝手なことを言ってくる…
この不均衡な構造。さっき、何かしらのマイノリティ性って書きましたけど、言わなきゃわかんないって点では、セクシュアルマイノリティ、特にLGBの現状に、すごく近いものを感じてしまって。

だからこそなんです。クラウスとアレンをBL読みしてしまったのは。クラウス→アレンだったのに、人間の!女!!!って。クラウスは友達になりたかったって明確に言ってるのに何を見ていたんだろう。
まあ、これが、初鑑賞当時の勘違いの1つ目です。別に間違ってるわけじゃないとは思うのですが、繰り返すように、本当の悲劇にまだ気づいてなかったんですよ…


勘違いの2つ目は、不老不死ってそんなに嫌かい?って思っていたことです。
だって、あんなにもウルは死にたくないって言ってたし。
ソフィとウル、不老不死に対する考え方が対極にある二人の中で、自分はウルの方に共感していました。
だって、もうすぐ死にそうです、って言われたら、誰だって死にたくないじゃん。話が先走りますが、SPECTERにも短命の宿命を背負って不死を求めていろいろやらかす人が出てきますが、うん、作中にも現実にも、そういう人もいるわけですよね。

まあ、つまりは自分も、不死の力を求めて戦争を仕掛けた人間たちと、同じだったってことですね。若かったんだなあ←
時間が無限にあったら、あれもこれもそれも、やりたいこと全部できるじゃん!!てかそもそも死にたくないじゃん!!ってのは、なんというか、隣の芝生は青く見えるみたいなことなんだろうなあってのは、シリーズここまで履修してきた今だから言えることであって。
あとはまあ、不老不死でもいいじゃんって思った要因としては、友達が少ないとか、根本的に薄情だとか…これは今も変わってないかもしれない…wポジティブに、一人でも人生楽しめる、っていうふうに言い換えておきましょうか…w
とにかく当時は、ソフィは不老不死になることをなんでそこまで拒むのか?って思ってました。青かった頃の自分よ…。


あと、これは勘違いではないのですが、末満氏御自らご出演されたダリちゃんについて、おのれ許せん!!!!!!!と思ってました。
これはもう仕方ないですよね。TRUMP本編では、ラファエロが明確に「父上が人間の女に産ませた」って言っちゃってるんで。
それであの態度とか、最低最悪の不倫男だな、あ、最低最悪だから作演出家自らその罪を背負って出てきたのか、なんて思ってて。だって自分で蒔いた種なのに、ウルの前でわざとダンピールを罵倒するわ、ラファエロには無理難題言っといて褒めもしないどころか失望したとか言うわ、もうほんと、最低!って。

でもこのあと、ダリちゃんごめん!!!!と絶叫する羽目になります。が、それはまだずっと先の話。



2018年:LILIUMとの出会い、そして沼へ

時は流れて3年後。
やっぱり上述のダリ許せんが大きかったのか、はたまた不老不死に興味がなかったのか、しばらくTRUMPシリーズに触れることはありませんでした。
2017年のグランギニョルすらも、まあ地方就職1年目で上京が難しかったというのもありますが、あの三浦くんが出ているのに観に行かず。
ちょっと気になってはいて、友人からLILIUMのDVDを借りてはいたのですが、なかなか見る気も起きず。

そんなこんなで2018年、わたくしは、「快盗戦隊ルパンレンジャーvsパトレンジャー」にドハマりしていました。
そこで、早見初美花/ルパンイエローとして活躍していたのが、LILIUMでファルス/ソフィを演じた、工藤遥ちゃんだったんです。

忘れもしない、あの、DVDを貸してくれた友人を含むグループで旅行していた日の、朝食会場にて。
テレビでルパパトが始まり、画面にかじりついている自分に、その友人が、「これ、どぅー?」と聞いてきて。
そうだよ!あっそっかハロプロ詳しいんだっけ!とか言ってたら、「お前貸したDVD早く見ろよ~どぅーヤバいからな?」と言われ。
まあそもそも舞台に気軽に行くようになったのもこの友人の影響だったりするんですよね…おそろしい人…。

そして帰ってすぐに見たLILIUM。
一度目はまず、LILIUM単独での謎を追うのに精いっぱいだったのと、TRUMP本編の記憶が薄れてたので、?????状態でした。聞き覚えのある名前や単語はめちゃくちゃ出てくるけどどゆこと?????って。
あととにかく、どぅーがとにかくイケメンすぎて、もうそれを堪能するだけで必死だったっていうのもある。
何回か見て、ネットも漁りまくって、やっと本編をちゃんと思い出してつながったときは、うわああああ!ってなりましたよ…。
ほんと、どぅーがルパパトに出てなきゃここまでハマることもなかったかもしれん…。ご縁ってすごいですよね。


さて。最初に懺悔の叫びを。
BLじゃねええええ!!!!!!!
自分は何を見てたんだ!!!!!

LILIUMで自分は、「不老不死」のやばさを思い知りました。これはTRUMP本編であれだけソフィが拒絶するのもわかる、と。
しかし、ソフィはやっぱり変わった子ですよね、自分が実際に不老不死になる前から、そのやばさがわかっていたんですから…。


まず、あんな達観したような性格のソフィでさえ、ここまで大がかりなことをやらかしてる!っていうのが、1つ目の大きな衝撃。
3000年の孤独は、人をここまで狂気に走らせてしまうのか、と。
仮にも同族の少年少女を、ためらいもなく苦しめ、殺してみるなど。同族殺しは重罪なのに(TRUMPで萬里がクラウスを責めてましたね)。
確かに少し生意気ではあったけれど、積極的に争いごとに首を突っ込むほどではなく、むしろ自分を慕ってくれるウルとさえ距離を置こうとするような、一人を好む性格の、あのソフィが。
もっとも、ソフィにとってこの3000年は、ただの孤独な時ではなく、「ウルがいない3000年」なわけですが…。ちょうどクラウスにとっての孤独が、「アレンのいない永久」であるのと同じように…。
決して孤独が埋まらないと、もうウルはいないとわかっているのに、それでも、そんな名前をつけてまで、こんな、こんなことをするまでになってしまったのかと。強がりでなく、一人でも生きていける、みたいな雰囲気だった、あのソフィがですよ。ほんとにショックが大きかった。


そして2つ目の衝撃は、スノウやリリーによって、人に忘れられながら生きるとはどういうことなのか、置いてけぼりになるとはどういうことか、これでもかというくらい強く描写されたこと。

スノウは死ぬのが怖かった、死から逃れられるならそれでもかまわないと思って、ソフィを受け入れた。
でも、その結果、あんなふうに、ひとりぼっちで生きることになってしまった。
しかも、かつての親友リリーは、目の前にいるというのに。そこにいるのに、でも、思い出が失われるとわかっているから、作ろうとはしない。
不老不死に近いスノウが、こんなにも苦しい生き方をしている、というのを見て、考えが180°変わりました。
こんな不老不死なら、いらない。ぜんぜん楽しくなんてないし、むしろ苦しいだけ。忘れるときも死ぬときも、一緒の方が、どれほど楽か。

スノウ・リリー・マリーゴールドで歌う、「TRUE OF VAMP」という曲の中に、
「愛する人たちの命の火が ただ消えるのを待つばかりよ」という歌詞があります。
そう、みんなが不老不死じゃないから、ただ、見送るだけ。それしかできない。
スノウの場合は、みんなが記憶をリセットする中で、そのみんなが忘れてしまう分の記憶を、もう何度も何度も、自分の中で見送り続けてきたんでしょう。自分だけは持ち続けて。


そして、最後に、取り残されるリリー。
待ってよ、置いていかないでよ、と言っても、リリーだけは向こう側にはいけない。

TRUMP本編のソフィは、クラウスに噛まれたあと、そんなにセリフがないんですよね。クランが消失して、そして冒頭の4500年後に戻る。
そこでのソフィは、えらく達観したような雰囲気を出してて、不老不死の苦しみなんて感じさせないような感じがあって。

でも、似たような状況に陥ったとき、リリーは違った。みんなと一緒に行きたいと、何度も、何度も。

リリーは、クランでいじめられていたソフィとは違って、友達がちゃんといたわけです。チェリーとも仲良さそうにしてたし、スノウとはかつては親友であり、今やもうファルスを含めた3人が一心同体のようなものだし、もちろんマリーゴールドに手を差し伸べるような優しさも持ってる。
つまりリリーは、人とのつながりを大事にして生きるような、そんな人なんですよね。

そんな人が、一緒に何年も何十年も何百年も暮らした仲間から、突然一人だけ引き離されて、耐えられるわけがないんだ、と。
一緒に行けると思ったから、イニシアチブであんなことを引き起こしたのに、自分だけがその世界から拒絶されるなんて、それは無理だわ、と。

スノウとリリー、2人を見てようやく、不老不死はつまり、孤独にしか行きつかないんだと、思い知らされたわけです。


クラウスやソフィの場合は、スノウやリリーほどには、人とのつながりが描かれなかったんですよね。
クラウスはアレンという一人の人にしか執着を見せていなかったし、ソフィもウルが生きている間はずっとウルを拒絶し続けていたから、なんだろう、彼らは、一人でも生きていける人、みたいに見えてたんですよね。共に時間を過ごした人たちを見送ったとしても、そこまでこたえるような性格じゃないんだろう、と。
だからTRUMP本編のときは、不老不死=孤独だということに、まだ見てる自分は気づいてなかった。

でも違ったんですね。クラウスはもう、見送り続けて、何も感じなくなった、感じないようになってしまった。それこそ血の戦争の頃からずっと、ずーっと。アレンと出会う前には、何かに手を伸ばすことを完全に諦めていたし、ソフィに会うまでもまた、手を伸ばそうなどとは思わなかった。強いのではなく、諦め続けないと生きてこれなかったんですね。
そしてソフィは、間違えていた。友達などいらないと思っていたのは、過ちだったんですよね。ウルは紛れもなく、たった一人の、大切な、友達だったわけです。TRUMP本編はそれに気づくまでの物語ですが、あのあとソフィは、思い知ってしまったんですね、ウルだけが親友だった、と。

有り体にいえば、ぼっち系キャラだったクラウスやソフィでは見えにくかった「不老不死=孤独」の苦しみの図式が、スノウやリリーによってこれでもかと浮き彫りになった物語が、LILIUMなわけですね…。

そんなわけで、不老不死のやばさを知ってしまった自分は、これはリリーとソフィが無事に死ねるまで、シリーズを追い続けるしかないぞ…と、覚悟を決めたわけです。



グランギニョルでの絶叫

実はLILIUMのあと、前述の友人からグランギニョルの円盤も借りました。
こんなにLILIUMで衝撃を受けておいてなんですが、やっぱりダリちゃんの不貞行為(と思っていた)は、どーーーーしても許せなかったんですね。

しかし、もうご覧になった方はわかると思うんですが、終盤、絶叫しましたよね。

ダリちゃん!!!ごめん!!!!!
いや、でも、言えよ!!!!!!!

いやー、家で円盤鑑賞でよかったかもしれない。下手に劇場で叫び出さなくてほんとによかったです。

そっからですよ、これはシリーズ制覇しないと気が済まないやつだ、となって、そのとき買える円盤すべてを買い集めたのは…。
2018年秋、マリーゴールドが上演される頃には、繭期いっちょあがり、って感じになってました。

いやもうね、ほんとに、ダリちゃん、不器用にもほどがあるんですよ。
最後、「フリーダとスーの望みだから」ってウルをデリコ家の子として育てることにするわけですが、
初見のときはね、もうあまりの衝撃で、うわああああそういうことかああああ!!!ってなってましたけど。
冷静にTRUMP本編を振り返って、あと最新作COCOON星ひとつを見ちゃってると特に、そうじゃねえええ!!!不器用か!!!!って…。
そんな、二人の願いだからって、なにもそんな茨の道を行かせなくてもいいじゃありませんか。だって、デリコの子だ、純血だ、っていう嘘をつかせ続けることになるんですよ!!それを全く考えてない!!
はあ…苦労を知らない貴族だからなのか、不器用だからなのか…たぶん、どっちもですよね…。

もう…貴族の家、ほんと、なんなんでしょうかね…?
ゲルハルトはあまりに厳しい教育のあげく、精神的に去勢されたと言われていましたが、ダリもまた、クロードに厳しく育てられていたんでしょうね…。前述の友人がCOCOON観たとき、「吸血種みんな子育て下手すぎ」って言ってて、ほんとそれ。
だから、完璧なデリコ家!っていうのに、やっぱりどこか憑りつかれていて、あんな選択をしてしまったんでしょうか…。

COCOON月の翳りではアンジェリコとラファエロがメインに描かれますが、ゲルハルトもダリもかなり圧をかけて育ててしまっているのが見て取れます。特にダリは、真実を告げぬまま、ウルを守れと、呪いと呼べるほどの重荷を背負わせて…
なんでそう、自らが受けた仕打ちをそうやって繰り返すんだ!!!!ソフィもリリーに同じことしたし、なんでそう!!!!!あんたたちはそろいもそろって!!!!!!
しかし、この、頑張ってるのに結局同じ悲劇を繰り返してしまう、というシリーズの味を知ってしまったのも、このグランギニョルなんですよねえ…。世代を超えて繰り返される悲劇…。

そして一方で、あんなアンジェリコフィーバー(そういうサントラの曲名にもなっている)してるアンジェリコは、フラ家の血なんて引いてないんですよね…。もうあのイケイケダンスをどういう顔してみたらいいのかわかんなくなりますよね…。
だから、どうなんだろう、結局、血なんてのは人の本質じゃなくて、本人が自分や他者をどう評価して、その評価に基づいてどう振る舞うか、ってことの方が、本当は大事なんですよね。
でもその評価に、この吸血種の社会は、血を用いてしまうから、めんどくせえなもうううう!!!


グランギニョルから本格的にハマった理由は他にも、イニシアチブ実験でのいろんな可能性に魅せられたこと、クラウス・ヴラド機関・ダミアンストーンという物語のはじまりにつながる要素を見せられて気になっちゃったこと、などたくさんありますが、
ひとつ挙げるならば、フリーダ様の存在でしょうか。

TRUMP、LILIUMと続くあからさまな差別社会の物語に、辟易してしまった人も多いと思います。もちろん、倫理観がないです!っていう前提で描いてくれてるので作品を嫌になることは一切なかったのですが、はーー吸血種マジめんどくせえな!そんな差別やめちまえよ!とは思ってました。

そこにフリーダ様ですよ。
お言葉がもう素敵すぎる。
保守的な吸血種の社会において、地位も名誉もあるものが声をあげなければなりません、って…
ああ、この世界にも、「共存主義者」っていう概念があるんだ、って、ちょっと希望が見えるんですよね…
まあもっとも、この希望は後の時代を描いた話で、めちゃくちゃ時代が変わっても何も変わってねえじゃん!!!!って綺麗にへし折られるんですけどね!!!!

いやでもフリーダ様マジかっこいいですよね、
「誰しもそれぞれの呪いを抱えて生きています」とか
「幸せであろうと努力しています」とか…
フリーダ様という人は、間違いなく、シリーズの中でも希望を見せてくれるキャラクターだと思います。

そうなんですよ結局、このシリーズに出てくる人たちはみんなそれぞれに呪いを抱えて生きているんですよ!
それは、不幸であれという呪いだけではなく、時に愛さえも呪いになる。
サントラの曲にも、「愛という名の呪い」と「それぞれの呪い」って曲があって…。
つまりそれは言い換えれば、宿命とか、因果みたいなもので、逃れることはできないけれど、でもみんな必死に生きようとする。
そんな物語にね、ハマってしまったんですね…。
決して悪人が多いわけではないんですよ、むしろ、みんな頑張ってる、でも、頑張ってるのに全部悪い方に転がっていくんですよね…。


ウルの真実とフリーダ様という希望を見せられ、
一方で、血盟警察の裏の顔とか、アンジェリコの真実とか、ダミアンストーンという大きすぎる敵の存在とか、いろんな絶望にも叩き落してくる、グランギニョル。
この、シリーズで過去に絶望していたことに対しての希望が見せられて、それと同時に新たな絶望にも叩き落される、この味を知ってしまうと、もう、後戻りができなくなってしまうわけです。

実はですね、本稿を書きながら今回の配信ラインナップを全部円盤で見直したんですが、なんだかんだ、このグランギニョルがいちばん、希望と絶望のバランスが取れてる気がするんですよね…。(COCOON星ひとつもそんな感じだけど今回は入ってないので…)
本当は発表順としてはTRUMP→LILIUM→SPECTER→グランギニョルなんですが、自分が見た順番も、また配信の順番もグランギニョルが先になってて、やっぱりこのグランギニョルという作品は、観た人をTRUMP沼に叩き落すには効果てきめんなんだよなあ、と実感する次第であります。


ふうう…。自分の思い出をこうして振り返ってみるのもなかなか感慨深いものがありますね。
ここまで読んでいただいた方、ありがとうございました。
このあと、配信最終日に合わせて、考察も書いていきたいと思います!

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