今こと必要なのは「勤勉革命」

今、稲盛和夫さんの「生き方」を読んでいます。この本の中で、勤勉は仕事で成功をもたらすだけでなく、人格形成にも重要であること、それに対して現代の日本から勤勉の文化が失われているのでは、という懸念が書かれていました。

ここからは私の見解なのですが、明治から戦後に至るまでの日本人の勤勉性の源泉は、江戸時代の「勤勉革命」と「武士道」にあったのではないかなと思っています。

「勤勉革命」とは、江戸時代において日本は欧米とは違い、大きな資本が形成されたり、技術が発展しませんでした。その代替として、人力の力を活かして農業や工芸品作成等の生産性向上を図ったことです。「青天で衝く」でも描かれていましたが、渋沢栄一の実家のように藍玉生産に励み、また生産農家間でも番付表を作成して競争していたような有様も勤勉革命の現れだと思います。

そして加えて「武士道」です。江戸時代の武士階級は生産をしないという問題はありましたが、社会の指導者となる為に学問・武道に励み、指導者としての覚悟が求められました。こうした武士道的な文化が、幕末の思想とも相絡みながら、明治期以降の社会にてリーダーを目指す若者が学問、自己修養に励む基盤となったと思います。

では、こうした日本人の勤勉性は現代ではどうなのでしょうか。

一概には言えないですが、社会の二極化の中で、大きな資本が圧倒的な力を持ちつつある傾向があります。元々「勤勉革命」が大きな資本の代替として人による勤勉を求められた事を逆に考えると、資本が大きくなるほど資本頼みとなり、創意工夫が少なくなる恐れがあります(寡占化が激しい業界ほどイノベーションが少なくなる、という日経記事が先日ありました)。実際、そういう風潮はあるのではないでしょうか。

中堅中小企業向けコンサルを手掛けている身としては我田引水ですが、資本が乏しい中堅中小企業における勤勉性こそが期待されるところです(まさに現代の「勤勉革命」です)

あと、「武士道」に根差した勤勉性は廃れて久しいとしか思えません。いわゆる社会人になってからも学習を続けるリカレント教育は先進国の中でも低位と言われます。学ぶということに対して受け身な姿勢が強く、「もっと世の中をよくするために」学ぶということの意識が弱くなっていないか懸念されます。

「働き方改革」よりも私は「勤勉革命」の方が今こそ大事なのではと思います。

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