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電気のおはなしその66・導線で縄跳びをすると感電する危険性があるよ!(ファラデーの電磁誘導の法則)

66回目ともなると(いや、最初からか)書く分野に節操がなくなってきて、適当に思い付いたことを書いているだけになってきた感がありますが、まぁ別にそれはそれでいいでしょう。必要なら後で順番を入れ替えたり内容を調整していけばいいんだから。

というわけで、今回は、

電線で縄跳びをすると、場合によっては感電死しますよ!

という怖い(?)話です。

電気のおはなしその63・電池以外の方法で電気を作るということ feat.フレミングの右手の法則の回で、コイルと磁束から電気を作り出すことができる

図1・電磁誘導の実験

という話をしました。これは小学校の理科の実験でも経験するもので、電線をたくさん巻いたコイルに磁石を挿入すると、コイルの中に磁石が入る瞬間や出る瞬間に最も大きな電圧が発生し、磁石を止めてしまうと電圧は発生しない、というものでした。磁石が強力なほど、コイルの巻数が多いほど、そして磁石を動かす速度が速いほど大きな電圧が発生します。

これは、「コイルを貫く磁束の変化が大きいほど高い電圧が発生する」ということを意味し、式では次のように表します。

式1・ファラデーの電磁誘導の法則の式

ΔΦ/Δtというのは、「微小時間の間に、どれだけ磁束Φの大きさが変化したか」を表す数式です。Nはコイルの巻数です。電圧の値にマイナスが付いているのは、「発生する電圧は、コイルの中を貫いて流れる磁束の量が変化するのを妨げる向きの電圧が発生する」ということを意味しています。これはちょうど、電気のおはなしその43・コイル(2)磁界は保守派で書いた内容と符合しています。

このように、ある磁束が存在する中でコイルを動かすか、固定されているコイルに対して磁石を動かすか(あるいは両方ということもあり得る)により、磁石から電気を生みだすことができるんですね。これは殆どの方が体感したことがあるはずです。昔ながらの自転車のライトは、停まっていると発電せずヘッドライトは点きませんが、走り出すと発電機内の磁石が回転して磁束変化が生じ、発電してライトが点灯します。スピードを上げるとヘッドライトが明るくなる理由は、速度に比例して発電機内の磁石がより高速に回転し、ΔΦ/Δtの値が大きくなるからです。

図2・自転車のヘッドライトの原理図

これを理解していると、例えば50Hz用の発電機で60Hzの電気を発電しようとして回転数を1.2倍にすると、そのままでは発電電圧も1.2倍になってしまうことが分かります。逆の場合は電圧が低下します。

また、(ここでいよいよタイトルのネタが登場しますが)もし導線を両手に持って縄跳びをしたとすると、地球の地磁気が存在している空間中で電線を動かし、電線を横切る磁束を変化させているという状態になりますから、右手と左手の間で電圧が発生し、人体に電流が流れることになります。電線縄跳びに発生する電圧は、縄を回す速さに比例して大きくなります。

ここで、実際に何ボルトの電圧が発生するか計算してみましょう。
まず地磁気の大きさですが、理科年表によれば、日本国内では50μT程度の磁束密度だそうです。また、縄跳びする人間のモデルは

図3・電線縄跳びをする人のモデル化

こんな感じで、仮に一回の縄跳びで2㎡程度の面積を電線が横切るとします。1秒間に1回縄を回したとすると、電線内を横切る正味の磁束量は、磁束密度×面積により100μWbと求まります。

本当は、地面に対して平行に流れる地磁気から見ると、縄跳び1回に対して横切る面積は1㎡→0→1㎡→0となるので、「面積1㎡×2」になることに気が付いたんですが、計算結果だけを考えれば「2㎡×1回」でも同じなので、それで計算します。

1秒間に正味100μWbの磁束を横切ったときの発電電圧は、

となります。1秒間に1回縄跳びをすると、100μVの電圧が発生するわけですね。

ここで、縄跳びをするときに足を地面に付けてジャンプする周期を1秒としましょう。二重飛びだと200μV、三重飛びだと300μV…と電圧は上がっていきます。つまり、n重飛びのnを大きくすればするほど、比例して両手の間に発生する電圧が高くなっていきます。
これを上げていくと、右手と左手の間の電圧が大きくなり、やがて人体に対して電流が流れ感電することになります。感電の危険がある電圧を100Vとすると、計算上

100÷(0.0001)=1000000

というわけで

電線を使って縄跳びをする場合、100万重飛びをすると、両手の間に発生した電圧が100Vに至り、感電して死ぬ危険性があるため、100万重飛びはやめましょう!!

お粗末さまでした。

以上。

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