電気のおはなしその21・線形回路とその性質(1)
では最初っから、電気の問題ターイム。
…はい。オームの法則より、5÷10で0.5アンペアです。
ん?何そんな簡単な問題を出しているかって?
まぁまぁ。
では次の問題に行きます。
…これももちろん、15÷10で1.5アンペアですね。
ではさらに次の問題。
…はい。もちろん、100÷10=10アンペアですね。元の20倍です。
さて。
何故こんな、気の利いた小学生でも分かるような問題を出しているか?
実はこのような
回路の電圧と電流が、完全に比例関係にある回路
のことを
線形回路
と呼ぶんですね。
電気回路が線形回路である条件は、
となります。つまり、抵抗・コイル・コンデンサで構成されている回路は線形回路、ダイオードやトランジスタなどが含まれる回路は非線形回路です。
回路が線形であることは、この後に解説する「重ね合わせの原理」や「テブナンの定理」「ノートンの定理」が成立するための、メチャクチャ重要な条件となっております。
電気関係の国家試験では、抵抗やコイル・コンデンサなどの組み合わせ回路が提示され、抵抗値や電圧・電流などを求めさせる問題が良く出題されるのですが、このとき、
回路が線形回路であること
重ね合わせの原理やテブナンの定理などが適用しやすいこと
を判断し、それに従って解けるかどうかが、よく問われるんですよね。
…というわけで、電験3種の問題、いってみよー。
この回路、確かに、
右端の150Ωと200Ωの直列が350Ωとなる。
その350Ωと100Ωの並列抵抗値を求める。
求めた抵抗値と、150Ωの直列抵抗値を求める。
その求めた抵抗値と、200Ωの並列抵抗値を求める。
電源から流出する電流I1を求める。
その値をもとに、順々にI2を求める。
という順序で求めていけば、確かに答えが求まらないことはないです。
しかし、この問題の出題者は、
この回路が線形回路であり、各部の電圧・電流が比例関係にあることが分かっているかどうか
を問うているのです。
つまり、
この回路は、電源電圧が何ボルトであろうと、I1とI2の比は変わらない
ことに気付くかどうか。
…では、計算しやすくするためにはどうすればいいか。
簡単です。
I2=1Aと勝手に置いて、そこから各部分の電圧や電流を逆算し、最後にI1を求めてしまえばよい
ことになります。
これを回路図に書き込んだのが次の図です。
200Ωの両端の電圧は200V
150Ωの両端の電圧は150V
100Ωの両端の電圧は200V+150V=350V
100Ωに流れる電流は3.5A
150Ωに流れる電流は4.5A
150Ωに発生する電圧は675V
電源電圧は350V+675V=1025V
200Ωに流れる電流は5.125A
電源から流れ出る電流は9.625A
というわけで、正解は1/9.625≒約0.1と求めることができます。
なーんだ、やり方が分かれば簡単じゃん!と思われる方が多いと思いますが、それでいいんです。べつだん何か難しい三角関数や微分・積分の計算なんてしなくても、これまでに知っていた(けれども、言われるまで気が付いていなかった)理論をきちんと使えるかどうか、っていうのがすごく大切なことなんですね。
某所で電験3種の講座の講師をしていたとき、受講生から
って言われたことがありますが、個人的には全然そんなことはないと思います。確かに覚えるべき公式はありますが、それは日頃の日常の中に当然のこととして潜んでいるモノも多く、それを思い浮かべれば当たり前に導けるものだったりするんですよね。それに気が付くかどうかです。
一例を挙げると、自転車で夜道を走るときヘッドライトを点けますが、停止中は光らず、走り出すと明るくなり、思いっきり速度を上げるとすごく明るく点灯するようになりますが、あれはファラデーの電磁誘導の法則そのものなんですよね。式で表すと、E=Blvなんて式になっちゃうんですけどね。
その話をするときに、改めてこの話はしようと思っていますよ。
以上。