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電気のおはなしその62・電気回路と磁気回路

ちょっとまた雰囲気を変えた話をしますよ。
電気回路の問題は分かるけど、磁気回路になると何が何だか…という方もいらっしゃるかと思うので、ちょっとその辺の話をしてみます。

電気のおはなしその8・重力場と電場・磁場 feat. ニュートン先生の回で、

磁極が存在していれば、その磁極に対して力が発生する空間のことを磁場(または磁界)という。

電子が存在していれば、その電子に対して力が発生する空間のことを電場(または電界)という。

のようなことをちょこっと書きました。また、電気どうしが反発・吸引する作用と、磁石の磁極どうしが反発・吸引する作用は良く似ています
実は、電気と磁気はまるで鏡写しのような性質があることが分かっています。そして不思議なことに、電流から磁界を作ることができ、また磁界から電流を作ることもできます。

このように、何故か電気と磁気は鏡写しのような性質を持ち、これを双対の関係と呼んだりしています。

…ということは、電流のように磁流があったり、電圧のように磁圧(?)
もあるのでしょうか。また電気抵抗のように磁気抵抗もあるのでしょうか。

答えはYESで、実は磁流は存在しますし、磁気抵抗も存在します。次に示すのは第1種電気工事士の試験問題の引用です。

図1・ある問題

こうやって図にすると、急に親近感?が出たかと思います。そう、小学校の理科の実験の電磁石+α程度のレベルです。

まず、磁界を発生させる源は、N回巻いたコイルです。理科の実験でやったように、エナメル線をたくさん巻くほど磁石は強くなりました。また、乾電池を直列にして電流を多くすると磁石は強くなりました。したがって、

磁界の発生力は、コイルの巻数×電流の大きさ

で求まることが分かります。この値を起磁力と呼びます。これが、電気回路の電圧に相当します。

次に、鉄心に流れる磁力ですが、これを正式には磁束と呼びます。つまり、電流の大きさに対応するのが磁束の大きさです。

そして、電気回路を思い起こすと、回路に流れる電流の大きさは電圧に比例し、電流が流れる回路の抵抗値に反比例しました。これがオームの法則です。これに対応するように、磁束の大きさは、起磁力に比例し、磁気回路の磁気抵抗に反比例します。

ある材質の物体が、どのくらい電流を通しにくいか(電気抵抗値が大きいか)の値を抵抗率と呼びます。この物体全体の電気抵抗は、電流を通す断面積に反比例し、長さに比例します。これは、水道のホースの水に対する抵抗と同じで、ホースが太いほど水の抵抗は小さくなり、ホースが長いほど抵抗が大きくなるのと同じです。

これと同様、ある物体の、磁気に対する抵抗値が磁気抵抗率で、その物体全体の磁気抵抗は、(磁気抵抗率)×(長さ)÷(断面積)となります。

ところで、「磁気抵抗率」という指標は通常用いません。電気抵抗率に対する磁気抵抗率という指標自体は存在しますが、「磁気の通しにくさ」ではなく「磁気の通しやすさ」である透磁率を通常は用います。したがって、

ある物体全体の磁気抵抗=(1/透磁率)×(長さ)÷(断面積)

で表されることになります。これは、電気でいうところの導電率と同じ考え方ですから、

ある物体全体の電気抵抗=(1/導電率)×(長さ)÷(断面積)

という形にしても、立派にオームの法則となっているんですね。

こうやって対応させて考えると、磁気回路の計算って全然難しくないということがお分かりいただけるかと思います。電験2種の問題に出るレベルでさえ、電池に抵抗を複数並列に接続しましたレベルだったりします。

そうそう、最後に、電磁誘導の法則に出てくる「磁束密度」って奴ですが、これはその名のとおり磁束の密度のことです。すなわち、断面積がSの磁気回路にX[Wb]の磁束が流れていたとすると、その断面での磁束密度はX/S[T]と求められます。断面積がSの導線にIアンペアの電流が流れていたら、電流密度がI/Sで求められるのと同じですね。


…というわけで、冒頭に登場した問題の正解は「イ」でした。

以上。

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