電気のおはなしその19・電験3種の抵抗の直並列問題を解いてみる(1)

ここいらでちょっと実践的な話として、過去に電験3種の国家試験で出題された問題を取り上げてみようかと思います。

電験3種 平成25年 理論 問8

見てのとおり、抵抗を直列・並列に組み合わせた回路において、流れる電流を求める問題です。
パッと見、いかがでしょうか?簡単?難しい…?

実はこの回路、電流が流れる抵抗は3本のみで、5本の抵抗は電流が流れない、つまり完全に無視して構わない回路なのです。次の図に示します。

青…電流が流れる部分 赤…電流が流れない部分

この赤色のライン、つまり【右上の20Ω~右の10Ω~右下の20Ω~中下の(50Ωと10Ωの並列)~右上の20Ω】と一周するラインは、その間に電源が全く存在していません。つまり、抵抗の直列・並列の組み合わせたものの両端を短絡したのと同じ状態ですから、この部分に電流は流れないのです。
したがって、この回路で電流が流れるのは青色の部分、つまり【5Vの電源の+端子~左上の5Ω~中上の(10Ωと40Ωの並列)~5Vの電源の-端子】だけとなり、10Ωと40Ωの並列は計算すると8Ωとなるので、結局

5Vの電池に13Ωの抵抗をつないだ。このとき、回路に流れる電流は何アンペアか?

というだけの問題であることが分かります。計算すると約0.38アンペアとなり、正解は(2)と求められます。

…と、この問題を解説したとき、質問の声が上がりました。

「右側の5本の抵抗には電流が流れない、と言われましたけど、感覚的にちょっと納得できません。たしかに理屈的にはそうなのかも知れないですし、言われると確かにそうかなと思うんですが、実際に電流が流れている回路に接続されているのなら、やっぱり少しは電流が流れる気がします」

受講生Aさんの声

この意見を聞いたとき、あぁ、なるほどなぁと思いました。確かに、現実世界では電線にもほんの少しですが抵抗があるため、中上の10Ωと右上の20Ωの接続点に対し、中下の50Ωや10Ωの方はほんの少しですが電圧が小さくなるため、実際には「電流が流れない」とした5本の抵抗にも電流は流れます
しかし、以前「本当の意味での直流というのは無い、全部交流です」という話をしたのと同様、厳密に抵抗がゼロという電線は(超伝導という特殊な場合を除いて)存在しないものの、特に断りがない限り、電線は完全にゼロΩである、とみなして考えるわけです。
オームの法則から分かるように、I=V/Rですから、電圧差がゼロVの場合はV=0となり、電流Iも必ずゼロとなるわけですね。

もう一問行きましょうか。

電験3種 平成21年 理論 問2

(1)は、クーロンの法則により、「それぞれの帯電体の電気量の積に比例し、距離の2乗に反比例」ですから✖。
(2)は、距離の2乗に反比例なので✖
(3)は、その通りです。電気力線とは、磁石の磁力線と同様、「その点に別の点電荷を置いた場合、その点電荷が受ける力の軌跡」を示すものですから、接線の方向は電界の方向になります。
(4)は、その面と直角の方向なので✖です。「等電位面」というのは、地図でいうところの等高線と同じ概念ですから、その等高線の上にボールなどの物体を置けば、等高線と直角の方向に転がり落ちることが分かります。
(5)は、「誘電率」が出てくるのですが、コンデンサーの性質だとか、静電容量、誘電体の誘電率などの話はまだしていませんでした。抵抗の話の後に、コイル、コンデンサーと話を進めていきたいと思いますので、その際に話すことにしましょう。

今日は朝一から夕方まで仕事、その後ダブルヘッダーで帰ってきたのは22時過ぎ。ちょっと疲れているので、この辺で勘弁してもらいましょう…

以上。

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