電気のおはなしその69・三相交流(3)三相V結線

「え?三相交流ってY結線とΔ結線以外にあるの?」

と言われそうですが、実は三相Δ結線

から一相分を除いたV結線という方式が存在します。

これじゃ三相交流にならないんじゃないの?と思われるかもしれません。
そこで、次の図のようにa,b,c相と名前を付けてみます。

b相の電源がb相の負荷、c相の電源がc相の負荷に繋がっていることは分かります。ではc相はどうなるのか?というと、図に矢印で示したように、b相とa相の電源の和がc相になることが分かります。これでベクトルを描いてみると、

このように、電圧はきちんと120度の位相差となり、負荷から見ると三相交流が供給されることが分かります。
次に、電流を考えると、V結線では線電流を変圧器の巻線がそのまま供給していることが分かります。これは負荷から見てΔ結線の線電流になりますから、三相電力は√3VIとなります。

では、変圧器の利用率を計算してみます。

まず、通常のΔ結線の場合、単純化するために変圧器の電圧が1、電流が1の変圧器を3台使用したとすると、線間電圧が1、線電流が√3の三相交流を供給することができますから、三総電力は√3VI=3VIであることが求まります。要するに、電力1の変圧器3台で3の電力を供給することができます。

V結線にすると、変圧器の電圧が1、電流が1として、その変圧器が2台存在することになります。三相電力の計算式より、√3VI=√3が三相電力です。

変圧器の利用率というのは、ある電力容量の変圧器の何割が供給できるか、という値ですから、Δ結線では一台あたり1の電力なのに対し、V結線は「2台で√3の三相電力」ですから、一台あたりは√3/2になります。これが、「V結線は変圧器の利用率が√3/2になる」という事なんですね。例えば、1kVAの変圧器を2台用意しても、三相負荷に供給できる電力は1.73kVAが最大で、それ以上の三相電力を取り出そうとすると過負荷になってしまう訳ですね。

わざわざ利用率を落として使うV結線なんて意味があるの?と思いがちですが、大容量変圧器というのはとにかく高価なので、3台を2台に減らせるというのは初期コスト・ランニングコスト的に有利になります。また、もう一つの大きな特徴として、もし将来工場の拡張などで電力が不足した場合、同容量の変圧器をもう1台用意してΔ結線にすることにより、低いコストで容量増大を図ることができる、という点が挙げられます。もし見込みが外れて電力需要が伸びなければ、V結線のままで使い続ければよい…という事ですね。

今日から新年度の出勤仕事が始まりました。毎期毎期思いますが、期の最初は疲れる…!
という訳で手抜きな感じですが、ひとまずアップしておきます。

以上。

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