見出し画像

電気のおはなしその28・「熱」ってなぁに?(1)

(あ。熱とはいったい何なのかを話してなかった。次はその話にするか)

俺氏の心の叫び

とか書いてしまったので、今回は「熱」とか「温度」って一体何なのか?という話をしましょうね。電気というよりも基礎物理学の範疇ですが

図1・久々に登場のやる夫

さて。
「この世は原子でできている」という話は、最重要項目としてこれまでにも何度か話をしてきました。改めて言うと、

  • この世(宇宙)は、何もない空間(真空)と、原子から成り立っている。

  • 原子とは、中心に原子核があり、周りに電子が飛び回る構造をしている。

  • 原子核・電子ともに電気の性質を持ち、同極どうしは反発、異極どうしは吸引力を持っている。

  • この電子が移動する現象を電流と呼んでいる。

こんなところでしょうか。これを読んでいるあなたの体も、見つめている液晶画面も、キーボードを今打っている私も、そしてインターネット経由で情報を伝送しているケーブルも、全部原子で出来ています。複数の原子が結合して一つの機能を持つ形を構成している場合、それを分子なんて呼んだりしていますが、とにかく極限まで細かく分けると原子で出来ているわけです。
この原子というのは、

中心に原子核があり、周りに電子が飛び回る構造

となっていますが、このとき、電子がゆっくり飛び回っているのか、それとも高速に飛び回っているのかで、おのずと性質は変わってくることになります。少し量子力学的な話になりますが、この電子というのは、まっすぐに飛んでいるわけではなく、ゆらゆらと揺れながら(あるいは、激しく上下に振動しながら)飛び回っているんですね。

図2・原子の内部構造(原子核の周りを電子が振動しながら飛び回っている)

つまり、

原子というのは、全体として常に振動している。振動がゆっくりだったり激しく振動したりしている。

ということなんですね。

さて。それでは、われわれ人間の(人間じゃない人が見ていたらごめんなさい。多分ほとんどの方は人間だと思うので、その前提で話をしています)体を構成している原子、例えば手や指の表面にある、炭素とか水素とか窒素とかの原子は、どのように振動しているのでしょうか。
実は、というか、答えを言ってしまうと、

温度が高い=激しく振動している
温度が低い=ゆっくり振動している

ということなんです。そして、

温度というのは、原子の振動の激しさの指標

ということなのですね。

図3・低温状態の原子と高温状態の原子の対比

原子が大量に結合しあって塊を作るとき(これのことを結晶なんて呼びます)、温度が高いとお互いの振動が激しくなり、手をつないでもすぐに振り切れてしまいます。しかし、温度が低いと、つないだ手がガッチリとつながり合って強固になります。
身近な例を挙げると、水を冷やすと氷になりますが、これは

温度が下がると、水の分子同士が結合する手の振動がゆっくりになるので、振動で手が外れてしまうことが無くなり、お互いにガッチリと手をつなぎ合うので強固な結晶になる

というのが理由だったんですね。

もうひとつ例を。

人間が熱湯などに触れるとヤケドしてしまいますが、アレはどういう現象かと言うと、ものすごく激しく振動する(=高温の)原子と人間の手の表面の原子が接触した結果、激しく振動する原子に引きずられて人間の手の表面の原子も激しく振動してしまい、その振動によって原子同士をつないでいる手が外れるなどしてしまい、人間の皮膚を構成している分子の構造が変化してしまう。それによって皮膚を形作っているタンパク質が元に戻らないような変形を起こしてしまう、という現象なのですね。もし、その「分子構造の変化」が軽微なものであれば、人体が元々持っている修復機能によって修復されますが、余りにも広い範囲で構造変化が起こってしまうと、自己修復しきれなくなってしまい、一生ヤケド跡として残ってしまうんです。

さて、「原子の振動の度合いが温度」という話をしましたが、それではどんどん振動を小さくしていき、やがて振動がゼロになってしまうことはあるのでしょうか?
はい、それはもちろん存在します。「絶対零度」なんて呼ばれたりしますが、「摂氏-273℃」になってしまうと、原子の振動が止まってしまいます。したがってそれより低い温度というのは存在しません。
では、どんどん原子の振動を大きくしていくと、極限はどこまで達するのでしょうか?
実はこれは、今の人間の科学ではまだ分かっていません。「世の中の最高温度は何度か」はまだ分かっていないんですね。

少し現実的な話に戻します。
理科の問題で、「10℃の水400gと90℃の水200gを混ぜると何度になるか」のような問題がありました。このとき、低温側が10℃、高温側が90℃であれば、それらを混ぜたら絶対に10℃以上90℃未満の、どこか中間の温度になるということは経験上誰でも知っていることでしょう。10℃と90℃を混ぜても絶対に100℃とか0℃とかにはなりません。

これは、「温度というのは、原子の振動の度合い」だということを思い出せばすぐに分かります。10℃の水は振動が小さく、90℃の水は大きく振動しています。これらが接触すると、

10℃側は、90℃側に触発されて振動が大きくなる。
90℃側は、10℃側によって振動が小さくなる。

からです。
上記の問題の答えを計算すると、振動が小さい側の勢力が400g、大きい側の勢力が200gですから、10×400+90×200=22000。そして総勢600gとなるので、22000÷600≒36.7℃という答えになります。

なんだか、書いていたら思ったよりも長くなってしまったので、話を分けることにしますね。次回は、原子の振動から電子の振動、そして振動電流の話から電磁波の放出(ボルツマンの法則)辺りを軽く話していこうかと思っていますよ。
なんだか難しい話みたいに見えますが、ここ最近は皆さんも当たり前のように日常でお世話になっている話です。お楽しみに…と言えるほど楽しくもないかもしれませんが、引き続きよろしくお願いいたします。

以上。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?