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電気のおはなしその64・フレミングの左手の法則と右手の法則は共存している

フレミングの右手の法則とくれば、次は左手の法則ですね。

図1・フレミングの左手の法則

フレミングの右手の法則と左手の法則を見比べてください。実は、異なっているのは電流Iの向きだけで、そのほかの力F、磁束Bは同じ向きです。

フレミングの右手の法則

右手の人差し指の方向に磁束Bが存在する空間で、
電線を親指の方向に動かすと、
中指の方向に電流を流すような電圧が発生する。

フレミングの左手の法則

左手の人差し指の方向に磁束Bが存在する空間で、
中指の方向に電流を流すと、
親指の方向に電線が動く力が発生する。

ということなんですね。右手は発電の法則、左手はモーターの法則です。
はい、それでは今回のお話は以上。

…ではつまらないので、もう少し重箱の隅を突っつきます。

学校の理科でフレミングの右手・左手の法則を習うとき、それぞれ別個に習いますよね。そして、「発電の時は右手」「モーターの時は左手」、覚え方は「右手で自家発電なので、つい右手と左手の法則は別個に成立するものだと思っている方が多いかもしれませんが、実はフレミングの右手の法則と左手の法則は、同時に成り立っています。次のように考えれば分かります。

  1. 左手の人差し指の方向に磁束が存在する空間がある。

  2. その中に左手の人差し指の方向に電線を置いて電流を流す。

  3. 電線は左手の親指の方向に力を受けて動く。

  4. その状態を外部から見ると、「右手の人差し指の方向に磁束が存在する空間の中で、右手の親指の方向に電線を動かしている。ということは、フレミングの右手の法則により、右手の中指の方向に電圧が発生するはず。

図2・フレミングの左手の法則の例

では、上図のように、磁束の中を電線が通り、電線に電流が流れている状態を考えます。電線は力を受けて上に動きます。このとき、電池と電線について回路図を描くと次のようになります。

図3・図2に対応する回路図

このように、フレミングの左手の法則によって力を受けた電線が加速度を受けて移動するとき、同時にフレミングの右手の法則によって起電力を発生します。そして、電源電圧と起電力との差の電圧を電線の抵抗で割った値の電流が回路全体に流れます。
フレミングの右手の法則によって発生した起電力に流れ込む電流は、起電力の+側から流れ込むため、これは電力の流入(詳しくは電気のおはなしその59・コイルに交流電圧を掛けたときの電圧・電流・電力を参照)です。エネルギー保存より、この電力が力学的な出力(電線に働く仕事)と一致します。

電験3種などで誘導電動機の理論を学ぶとき、二次コイルの出力側に負荷抵抗が存在し、これが機械的出力となる…という回路図が良く描かれますが、その「機械的出力に対応する抵抗」は実在する抵抗器ではなく、コイルに発生する逆起電圧に対して電力流入となる成分、すなわち本当の正体は発電機になります。これが見通せていると、ちょっとは理解しやすくなるかな?

その他にフレミングの左手の法則が適用される例としては、今となってはもう過去の遺物になってしまったブラウン管式のテレビでしょうか。
ブラウン管は、電子によって画面を描画するために、縦軸は静電力、横軸はローレンツ力を用いていました。

あ、ブラウン管式テレビの動作原理については、どこかで改めて説明してもいいかもしれませんね。

おまけにもう一つ、磁気検出に用いるホール素子を紹介しておきましょう。ホール素子は、

半導体素子の中を電流が流れるとき、そこに磁界を掛けると、半導体素子に電圧が発生する現象

であるホール効果を利用して磁気検出を行うものです。

図4・ホール素子

図のように、素子の右側→左側に電流が流れているとき、素子を上→下に貫くように磁束が存在していると、半導体素子の中を流れる電流はフレミングの左手の法則による力を受け、緑色に塗った側に曲げられてこちら側に集まります。つまり、緑色の部分とその反対側との間で起電力が発生し、これを磁気検出に使用しているわけですね。

さて、今回はこんなところで。今日の法則:右手で自家発電

以上。


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