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電気のおはなしその34・各種のダイオード(2)

前回の続き行きます。

ツェナーダイオード(定電圧ダイオード)

ツェナーダイオードは、PN接合に逆電圧を掛けて使います。つまり、P型側にー、N型側に+という電圧を掛けます。
すると、空乏層が広がってしまい電流が流れないのですが、ある程度以上の電圧を掛けると、空乏層に発生する電界の強さによって電子が大きな力を受け、やがて電子が空乏層を突き破って移動することで電流が流れてしまうようになります。これを逆方向降伏なんて呼んだりしますが、この降伏が起こったとき、素子に流れる電流を変化させても逆方向電圧(ツェナー電圧)はほぼ一定に保たれるという現象が起こります。これを積極的に利用し、安定した一定の電圧を得ることを目的として使用させるのがこのダイオードです。
ツェナーダイオードは、電源回路の電圧安定用として幅広く用いられています。単品のダイオードとして用いられるほか、定電圧ICの内部に組み込まれた素子として利用されます。また、静電気などの高電圧から回路や素子を守るために利用されることもあります。
素子としての見た目は、一般用ダイオードと変わりません。ちなみに、順方向電圧の特性も一般用ダイオードと基本的には変わりませんから、ツェナー電圧以内の逆電圧しかかからない場所に用いることで、一般用ダイオードとして使用することもできます。(部品箱の中にどうしても一般用ダイオードの手持ちがなく、比較的高い電圧のツェナーダイオードならあった、というような場合以外にわざわざそんな使い方はしませんけれども)

バラクタダイオード

別名バリキャップ(商品名)とも呼ばれるダイオードで、ツェナーダイオード同様、逆方向電圧を掛けて使用されます。ただし、降伏電圧以内の電圧しか掛けることはありません。
「バラクタ」というのは、「バリアブル・リアクタ」の略で、リアクタンス、具体的には容量性リアクタンスを可変させることができる素子として用いられています。
これは、逆電圧を掛けた時に発生する空乏層をコンデンサの誘電体、P型領域のホールとN型領域の自由電子をコンデンサの極版とみなして用いるもので、逆方向電圧の大小によって空乏層の幅が変化する、すなわちコンデンサの極版間距離を可変させることで、「逆方向電圧の大小によって静電容量を可変することができるコンデンサ」として振る舞うものです。(コンデンサの話はまだしていませんが、そのうちします)
バラクタダイオードは、電圧制御発振器の同町回路用リアクタンスとして用いられるほか、電圧制御フィルタ(ローパスフィルタ・ハイパスフィルタ・バンドパスフィルタ)のリアクタンス素子として用いられることもあります。外観はやはり一般用ダイオードと基本的には変わらず、順方向電圧を掛けて使えば一般用ダイオードと同様の特性を持つこともツェナーダイオードと変わりません。

バラクタダイオードは、その性質上、逆方向電圧の上に発振回路の交流電圧が重畳されて使用されますが、上記のような性質上、発振電圧が大きすぎるとダイオードが順方向バイアスとなって順方向電流が流れてしまい、発振周波数の跳躍や不安定などといった現象として現れることがあります。こういうのは教科書には載っていないことですね。解決策としては発振電圧が大きすぎる値にならないように回路を設計したり、安定発振領域で逆方向バイアスが小さくなり過ぎないように発振回路の定数を設計したりして回避します。

フォトダイオード

フォト=photoというと写真の意味かと思ってしまいますが、本来は光を意味する言葉です。その光を紙に焼き付けて画像にするものが写真、英語で言うとphotographで、日常で使っているフォトという言葉は写真を意味するフォトグラフを縮めて読んでいるというのが真相です。
それはともかく、光に関係するダイオードという意味になるフォトダイオードですが、これはPN接合面に外部から光が入り込むように作られています。その結果、光を当てないと電流が流れず、光を当てると電流が流れるという感光素子として働きます。
フォトダイオードも、通常逆方向電圧を掛けて使用します。光が当たらない状態では、通常通り逆方向電圧によって空乏層が広がった状態となりますが、光が入ると、光のエネルギーによって振動を増した(光励起と言います)電子は、共有結合の手を切って飛び出してきます。この電子が回路電流となって流れるため、「暗所では電流が流れず、光を当てると電流が流れる」という作用になります。

また、フォトダイオードに限っては、実は順方向電圧を掛けて使用することもできます。順方向特性は通常のダイオードの特性と変わりませんが、光を当てることによってダイオード内を流れる電子が光励起され、照射する光の強弱によって流れる電流が変化するという形で光検出(というよりも、光変調)を行うことができます。

レーザーダイオード

レーザーダイオードは、その名のとおりレーザー光線を発するダイオードです。レーザーポインターが流行りだしたころ、ポケット型のレーザーポインターを悪用し、スポーツ選手の目に当てたりするなどという事件が発生しましたが、ある種「子供のおもちゃ」にすらなってしまったレーザーポインターの中などに広く使われています。
レーザーダイオードの発光原理はLEDに近く、PN接合に順方向電圧を掛けた際に電子がエネルギー障壁を落下する際に発する光を外に取り出すものですが、LEDと異なる点は、P型半導体とN型半導体の間にある活性層の中で、光が何度も往復する間にエネルギーが強められ、それがレーザー光となって放出される点です。
レーザー光とは何なのか?という話をしていませんが、レーザー光というのは波長や位相がきれいに整った光のことで、一般に強力なエネルギーを持っているため、人間の目に入ると網膜を焼損してしまうような事故となります。

図1・レーザーダイオードの原理図


活性層は、両端が鏡となっています。一方が反射率100%、他方が例えば99%のように作成すると、鏡の間で光が往復するようになります。このとき、鏡の間を往復する距離が、ちょうど波長の整数倍となる光のみが重なり合って増幅されることから、波長選択性を持つことになります。すなわち、レーザー光を作ることができます。
このような構造にして、99%の方から漏れ出した光を外部に取り出すことにより、位相がそろった単一波長の強力なレーザー光を作ることができます。


いつも、おおむね文字数2000文字弱程度を目安にして書いているのですが、今回もだいぶ長くなってしまいました。まだもう少し列挙したいダイオードもあるので、次回に続きます。

以上。

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