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電気のおはなしその24・キルヒホッフの法則

前回、例として挙げた回路である、電験3種の2013年理論問6です。

図1・電験3種・2013年・理論・問6

この答えを求めるために、まずは「重ね合わせの原理」を用いた解法をお話ししました。しかし、実はこの回路、解き方は他にもあるのです。そのひとつとして、名前を聞いたことがある方も多いと思いますが、「キルヒホッフの法則」について取り上げたいと思います。

キルヒホッフの法則は、「キルヒホッフの電圧則」「キルヒホッフの電流則」の二つに分かれています。「第一法則」「第二法則」なんて呼ぶこともありますね。
このキルヒホッフの法則というのは、実はこれまでにも暗黙のうちに使っていた法則なのです。実は、

電圧は辻褄があっているよ。
電流も辻褄が合うよ。

…という、ただそれだけの話なんです。

実例を挙げましょう。
この回路において、左上の40Ωの両端の電圧V1と、右隣の40Ωの両端の電圧V2を足したものは、60Vにならないとおかしいです。

図2


同様に、右上の60Ωの両端の電圧V3と、左隣の60Ωの両端の電圧V4を足したものは、80Vにならないとおかしいですよね。

図3


また、青色で示したように、40Ωの両端の電圧V5と、10Ωの両端の電圧V6と、60Ωの両端の電圧V7を全部足したら、0Vにならないとおかしいです。
このとき、ループ一周の電圧値の「+ー」「+ー」「+ー」を合致させるために、V5はV2と同じ電圧ではあるものの逆向きに定義している点がポイントです。(ここがすごく間違いやすい)

図4

「そんなの当たり前すぎるよ!」って思うかもしれませんが、このように

電圧は辻褄が合っている

というのが、キルヒホッフの電圧則です。
次に、電流について考えてみます。
図に示すように、左上の40Ωから右に流れる電流と、(右隣の40Ωに流れる電流+10Ωに流れる電流)は同じにならないと変ですよね。

図5

同様に、右上の60Ω・60Ω・10Ωの接続点でも同じことが言えますが、図にするのは省略します。
こちらも、あまりに当たり前すぎる!というお話ですが、これをキルヒホッフの電流則と呼んでいます。
以上のことを、もうちょっと平たく書き直してみると、

回路中にループを取ったとき、ループ内の電圧の合計はゼロである

とか、

回路の接点において、その接点に流れ込む電流の和はゼロである

みたいな感じになります。良くある「キルヒホッフの法則」の文言ですね。

では、このキルヒホッフの法則を用いて、この問題を解いてみましょう。
まず、図のように電流I1、I2、I3を定義します。どの電流も、別に右回りに取っても左回りに取っても、電圧や電流のプラスマイナスの辻褄さえ合っていれば、正解は正しく求まります。

図6

ではまず、一番左のループについて。

40I1+40(I1ーI2)=60

これが、「左上の40Ωと右隣の40Ωの両端に発生する電圧の和は60V」に対応します。

次に、真中のループについて。

40(I2ーI1)+10I2+60(I2+I3)=0

が成立します。これが、「40Ωの両端の電圧と、10Ωの両端の電圧と、60Ωの両端の電圧を全部足したら、0Vにならないとおかしい」ことに対応ですね。

最後に、一番右のループについて。

60I3+60(I2+I3)=80

が成立します。これが、「右上の60Ωの両端の電圧と、左隣の60Ωの両端の電圧を足したものは、80Vにならないとおかしい」ことに対応します。

以上より、I1、I2、I3に関する連立方程式が得られました。この連立方程式を解くことで、I1=1、I2=1/6、I3=1が求まるわけです。

この回路はとても良く考えられている出題でして、前回のように重ね合わせの原理で解いてもよいですが、今回のようにキルヒホッフの法則を用いてもいい、はたまた次回お話しするようにテブナンの定理を用いて解いても解きやすいような作りになっているんですね。
こういう、良質な過去問題を徹底的に詳しく解説することで、電験3種などを受験するための勉強も、実は最も効果的に進めることができるんじゃないか?と思っている次第です。

たんに答えを暗記するだけじゃ全然意味がありませんけどもね。

以上。

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