電気のおはなしその42・コイル(1)コイルとはなにか?
ではいよいよ、本格的な電気の世界に入っていきますよ。
…え?これまでは前座だったの?って話になってしまいますが、私がこれまで意図的に書いてこなかったことがあります。それは、電圧と電流の間に時間差が発生する場合です。
以前オームの法則の話をしましたけど、オームの法則が示していることは、
ということで、電圧と電流は常に比例関係、電圧を倍にすれば電流も倍、5倍にすれば電流も5倍で、電圧と電流の間に時間差など発生しないという話なのでした。現に、オームの法則を表す式V=IR、I=V/R、R=V/I、どの式をとってみても時間tなんて値は出てきませんでした。
ところが、コイルだとかコンデンサという部品は、その両端に発生する電圧と、その素子に流れる電流との間に、タイミングのズレが発生してしまうという性質を持っています。したがって、通常のオームの法則をそのまま適用することができず、虚数jを使ったりして「電圧と電流の間には時間のズレがあるよー!」と示しているんですね。
さて、まずはコイルです。
コイルは、単に電線をぐるぐる巻いたものです。小学校の理科の実験で電磁石を扱いますが、あれが典型的なコイルということになります。理科の時間では、次のような実験をしたのではないでしょうか。
電磁石に電流を流すと、磁石になってクリップなどがくっつく。
巻数を増やすほど、磁石は強くなって多くのクリップがくっつく。
電池を直列にしても、やはり磁石は強くなる。
コイル内部に鉄の棒などを入れると磁力は強くなる。
スイッチを切ると、磁石の性質は失われてしまう。
さらには、次のような実験もしたのではないでしょうか。
コイル内に磁石を入れると、電流が流れて針が振れる。
その電流は、コイルに磁石が入るときと出るときに流れる。
磁石をゆっくり入れると電流は小さく、早く入れると大きくなる。
コイルの巻き数が多いほど、その電流は大きくなる。
磁石を強力なものにしても、電流は大きくなる。
これらの実験は、電流と磁界に関する極めて本質的な実験で、電磁気学を学ぶ上では絶対に忘れてはならない基本的な原理を表しています。
まず電磁石の実験から、電流は磁界を作り出すということが分かります。以前、電流の正体云々のときにも少し取り上げましたが、電流は磁界を作り出す、そして、磁界の変化が電流を作り出す、という双方向の原理、これは必ず知っておかなければいけません。もっとも、ここまで話の流れを追ってこられた方は、「うんうん、そう言えばそうだったよね」という感じだと思います。
また、感覚的にも非常に分かりやすい話として、コイルを多く巻けば巻くほど、そして電流を大きくすればするほど磁力も強くなります。磁力から電流を作り出す場合も、巻数が多いほど、そして磁力が強いほど、加えて磁力の変化が大きいほど大きな電流が流れます(正確に言えば、大きな電圧が発生するため、大きな電流が流れるという段取りです)。
小学校の理科の実験で習った、コイルの基本的な性質を再確認しましたので、さて次はコイルに電圧を掛けたときに流れる電流を詳しく見ていきましょう…となるのですが、これまた長くなりそうなので一旦ここで切りますね。
以上。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?