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電気のおはなしその83・電気から力を得るということ

普段当たり前のようにコンセントから電力を受け取って生活している我々ですが、別に電気そのものが欲しいわけではありません。電気エネルギーを電球で光にしたり、電気エネルギーをエアコンで熱(温熱・冷熱)にしたり、電気エネルギーをモーターで動力(力)にしたり…。
その中でも、最大の恩恵と言えるのは、電気から力を得ることができる、というものでしょう。もし電気以外のエネルギー源から力を得ようとすると、内燃機関のエンジンとか、

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………
他に何があるんだろうか?人力?馬力?牛に引かせる??

というわけで、力を得られるというのが非常に重要な性質なわけです。もしガソリンエンジンを使うとすると、騒音、燃料の供給、排気ガス、定期的なメンテナンス(オイル交換など)などなど、モーターに比べるとその煩雑さ、面倒臭さ、大変さは全く比較になりません。電力であれば、モーターに電線を接続するだけで、クリーンな動力が永続的に得られますからね。こんな便利なことないです。

ところでここからが本題。電気から力を得るためには二種類の方法があります。何と何でしょう?

それは、電荷どうしの力を利用する静電力と、電流と磁石の相互作用を利用する電磁力です。この二種類、電気から力を得る動力源としては、事実上電磁力しか使われていません。それは何故でしょうか?

答えを言ってしまうと、静電力は弱すぎて使い物にならないからです。下敷きをこすって髪の毛が持ち上がるってのを子供の頃にやったことがあると思いますが、1万Vからの電圧を発生させておいても、髪の毛が持ち上がるくらいの弱い力しか得られない訳ですね。もしモーターのような大きな動力を得ようとすると、何百万Vの電圧を作らなきゃいけないし、そんな電圧を掛けたら放電して火花が出て終わりです。
それに対して、電磁力は、電線をコイルに巻いた電磁石相互間の力を利用するものですが、これは静電力に比べるとはるかに大きい力を得ることができるわけですね。
電気工事士の国家試験で、力率が悪くなる場合は必ず「遅れ力率」なのですが、これは電力を力に変えるための手段が、事実上コイルで磁界を作ることで電磁力を得るモーターしか存在しないからです。もし静電力で強力な力を得るモーターを作ることができるのであれば、進み方向で力率悪化もあり得るはずですが、何故か自然は、電磁力の方が強く、静電力は弱くなるようにできています。その理由は分かりません。

あ、もっとも。

人間の筋肉は、脳から出た電気信号が神経を伝わってくることで力を作り出していますが、筋肉が力を生み出す原理は静電力です。静電力はとっても弱いんですが、力の大きさが「各電荷の大きさの積に比例し、距離に反比例する」というクーロンの法則が示す通り、距離をうんと縮めてしまえば大きな力が生まれるということを利用して、筋肉は結構大きな力を作り出しているんですね。

というわけで、今日はこのくらいで。

以上。

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