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犬への詫び状

子供のころに犬を飼っていた。お調子者で優しくて、ビロードのようにつやつやとした黒い毛並みが美しい犬だった。わたしよりも友達が多くて、散歩に出ると、わたしの知らない人が犬の名を呼び、公園に行けばわたしの知らない犬たちの輪にするりと入って戯れていた。 人間に対しては唸りもしないし、絶対に噛んだりしない。ほうきのようなしっぽをふわりふわりと振って、上目遣いで口角を上げ、ピンク色の舌を覗かせて、いつも機嫌良さそうにへっへっへっと笑っている。彼女の言葉がわからない不甲斐ないわたしたち

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