見出し画像

胸骨圧迫時に背中に板を入れるべきか?

胸骨圧迫をする場合に、背中に板を入れていないとダメだという人がいます。いわゆる背板(はいばん)を入れるという処置です。軟らかいベッドの上などで胸骨圧迫をすると確かに良くないような気もします。

いつものように結論から書きます。

背中に板が入っていたら外す必要はないが、背中に板を入れることは優先事項ではない。


上記の本のP.75にあります。ネットでのリンクはこちらです。

可能ならば固い支持面の上でCPRを行う事を提案する。
院内心停止において、マットレスを固くできるCPRモードのあるベッドではCPRモードを使用することを提案する。
院内心停止において、胸骨圧迫の深さを改善する目的で、患者をベッドから床に移動させないことを提案する。
バックボードを使用する効果のエビデンスが非常に少ないので、バックボード使用についての推奨を決めることができなかった。

詳細は読んでいただくのが良いでしょう。色々比較したところ圧迫の深さは変わりがなかったとのことです。あったとしても数ミリだそうで、これは違いがあると言えるのか?というレベルです。例えば、あることをすると明らかに1ヶ月に1円お小遣いが増えると言うデータがあったとして、はたして1円が違いがあると言えるのか?と言うことです。
それよりも、背中に板を入れる場合には、心肺蘇生を一時中止しなければなりませんし、人手も必要です。そこまでして数ミリ深い圧迫を目差すべきなのか?と言うことを考えなければなりません。

AHAのガイドラインでは以下のようにあり、成人では背中に板を入れる事を推奨も否定もしていない感じです。
It is preferred to perform CPR on a firm surface and with the victim in the supine position, when feasible.
(可能であれば、心肺蘇生を固いところで、傷病者を仰臥位にして行う事が望ましい。)
Manikin studies show generally acceptable thoracic compression with CPR performed on a hospital mattress.
(マネキンの研究によれば、病院のベッドの上で行う心肺蘇生は許容できる事が示されている。)
小児では推奨しています。
During IHCA, it is reasonable to use a backboard to improve chest compression depth.
(院内心肺停止患者に対して、圧迫の深さを改善させるために背板を入れる事は合理的である。)

ヨーロッパ蘇生協議会のガイドラインには以下のようにあり推奨していません。
For the in-hospital setting, moving a patient from the bed to the floor is NOT recommended. The ERC does not recommend using a backboard.
(院内では、患者をベッドから床に移動させることを推奨しない。ERCは背板を使用することを推奨しない。)

前田らの論文では以下のように結論づけています。

「背板は、その大きさや挿入方向、心停止患者の体重、マットレスの硬さにより効果が異なるため、常に有効というわけではない。したがって、ベッド上での胸骨圧迫に背板をルーチンに使用しないといけないというものではなく、マットレスの変形が大きく、やりづらさを感じる場合には使用を考慮してもよい。ただし、わが国で一般に使用されている大きさの背板の効果は限定的であるため、盲目的に過信してはならない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?