内部放電する時パドルはどこに?

心肺蘇生の講習会ではたまに内部放電という技を習います。これは電気ショック(同期、非同期も含めて)をしようとしたのですが、操作をしている間に自然に不整脈が治ってしまった場合に、充電されたエネルギーを放電すると言う技です。

例えば、心肺停止時に患者さんの心電図が心室細動を示したとすると、非同期の電気ショックを200Jぐらいで(器械によって異なります)充電し、パドルかパッドを患者さんの胸に当て、ショックボタンを押して放電すると言う処置を行います。ショックボタンを押す前に最終波形、つまり心電図はまだ心室細動なのかを確認します。しかし、自然に別の不整脈になってしまった時に、ショックボタンは押せません。なぜならボタンを押せば、200Jのエネルギーがパドルによってかかる事になるからです。電気ショックは強い痛みを伴い、強い副交感神経刺激になりますので、心拍再開を妨げます。心室細動や無脈性心室細動以外に電気ショックをかけてはいけません。

しかし、充電されたパドルをそのまま器械に戻して良いのか?と言う疑問が生じます。もし戻す途中で近くにいた人や、自分に電気ショックがかかったら大変です。

電気ショックは200Jと言う単位はよく分からない感じですが、電圧で言えば2000ボルト近くかかっているそうです。こちらのコードブルーでは藤川先生は電気ショックをする患者さんの身体に触れていたために藤川先生が電気ショックを受けてしまい、心停止してしまうと言うシーンがありますが、本当にそうなってもおかしくないようです。

昔スカパーか何かで「怪しい実験」みたいなタイトルの海外の番組があって、人体と同じような電気的性質を持った人形を2体使って、両者を触れさせたまま電気ショックを一方にかけてみたところ、もう一方に心停止してもおかしくない電流が流れたというのを見ました。よって、電気ショックは「絶対に」必要な患者さん以外に電気が流れないようにして行わなければなりません。

そのため、電気ショックが必要なければ、直ちに内部放電を行います。

一般的には、患者さんに今まさに電気ショックをかけようとした体制のまま、別の人に内部放電の操作をしてもらいます。器械によって内部放電のところにダイヤルを合わせたり、充電ボタンが充電中や充電後は内部放電のボタンになったりします。よく分からなかったら電源を切れば内部放電されるようです。あとしばらく時間が経つのを待てば、やはり自然に内部放電されるようです(が、心停止の場合、胸骨圧迫を早く再開しなければなりませんので、お勧めできません)。

しかし、胸壁からやや浮かせてやるべきだとか、パドルは除細動器に戻して行うべきだとか言う意見があるようです。

何と機械屋さんから言えば、器械に戻してから内部放電するのが一番安全だと言うことです。

理由は以下の通りです。

内部放電のボタンが押されれば、パドルから通電することはないのだが、それは故障していない場合であって、絶対に故障しないと言えない。よって、患者さんに謝って通電されるのを避けるため、パドルは器械に戻して欲しい。

しかし、充電されたパドルを器械に戻すと言う行為にリスクを感じる事が多いと思います。

充電されたパドルを器械に戻すには、空中パドルという状態に一次的にしなければなりません。空中パドルは絶対にダメと言われることが多いのですが、空中でパドルのショックボタンを押しても放電されることはない(確かにAEDなどはパッドがちゃんと貼られていないと通電せずに、しっかりパッドを貼ってください等と言います)そうです。つまり空中放電の操作をしても内部放電されるそうです。が、こちらも故障していないとは言えませんね。また、誤って人にぶつかってショックボタンを押してしまったら、通電する可能性があると思います。

色々間をとると、胸壁からややパドルを浮かせて内部放電してもらうのが一番無難なのかなあと感じました。

さて、現在はパドルではなくパッドが推奨されているので、パッドを使ったらこんなこと考えなくて良いじゃないか!と思った貴方。正解です。パッドなんて捨てちゃえ!とすれば、こんなことを考える必要はありません。

しかし、パドルを使っている病院もあると思いますし、心房細動に限ってですが、パドルの方が正常洞調律に戻す率が高かったという論文もあるようです。

そして、以下の記事を参照頂けるとありがたいのですが、そもそも、心室細動が自然に別の不整脈に短時間で変化することが有り得るのか?いやないと思ったら、内部放電すら覚える必要はなかったのかも知れない、、、、、、、



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