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心肺蘇生中にSpO2などを測定すべきか?

心肺蘇生の講習会をしていると、心肺蘇生のシナリオ中に、受講生の方が、血圧は?SpO2は?と聞かれます。測定できませんと答えていますが、はたして何か心肺蘇生の質を測る指標があるのでしょうか?

日本蘇生協議会のガイドラインのP.74には次のようにあります。

「CPRのガイドとするためには、いずれの生理学的指標のモニタリングにおいても推奨を行わない。利用可能なエビデンスは、その効果のいかなる評価も推測の域を出るものではないためである。」

と言うことなんです!なので心肺蘇生中は、胸骨圧迫をしっかりする(リーダーはしっかりされているか頻繁にチェックする)、換気をちゃんとする(こちらもリーダーがチェック)、適応であれば素早く安全に電気ショックをかけることしかないのです!

血圧は血液の流れがないと測定できません(流れがないと音が聞こえません)。心肺蘇生中は動脈も静脈も圧迫されて圧の差が出来ないので血流がほとんどありません(脳は頚静脈に逆流防止弁があるので脳内の静脈圧は上昇せず、血流が生み出されると言われています)。よって、血圧を心肺蘇生中に測る意義はほとんどありません。

SpO2は拍動している部分は動脈であるという前提で測定しています。心肺蘇生中は指などの末梢組織に充分な血流が行き渡りませんので、ほとんど即的出来ません。また、心肺蘇生中のように静脈も拍動している状態では正確な値が出ません。
ただ、測れるようになったら心拍再開したかも?と分かるので利点と言えば利点ですが、心拍再開をすぐ認識しなければならないかと言えば、そうではないので、それほど大きな利点ではありません。が、SpO2は指に挟むだけなので、大きな不利益もないのでSpO2を測定します!と言う人を否定するほどの根拠はありません。

動脈ラインについても圧が測定できたとしても、先ほど述べたように血流がない(動脈ラインは血流は測定できません)ので、意義のある循環があると判定はしずらいです(もちろんキレイな波形が出てきたら心拍再開したのではないか?と言う指標に出来ます)。
もともと動脈ラインが入っている人が心肺停止したら、わざわざ抜去する必要はありませんが、心肺停止中の患者さんに動脈ラインを入れるのはかなり大変です。他に優先すべきことがあるでしょうね。

PETCO2(呼気二酸化炭素分圧)が有用だという意見がありますが、こちらは気管挿管をしないとなかなか使いづらいです。気管挿管を行うと生存率が下がるという意見もあるため、こちらも行うべきとするデータはなかなかないようです。

結論は、心肺蘇生を評価するためのあてになる指標はありませんので、
胸骨圧迫と換気をしっかりやりましょう。
必要なら電気ショックを行いましょう。
と言うことになります。

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