パワハラ問題の顛末
様々なメディアで東京ヴェルディのパワハラ問題が取り上げられているが、2021年9月21日にクラブよりJリーグへ調査報告書が提出され、現在はJリーグ側からの何らかの反応や回答を待っている状況である。
それでは、まず今回の問題について、時系列で簡単にまとめてみよう。
パワハラ問題の経緯
2021.7.26 コンプライアンス委員会を立ち上げ
2021.7.27 新潮社からパワハラ問題に関する質問状送付
2021.7.29 新潮社によるパワハラ問題報道
2021.7.29 Jリーグへ経過報告①
2021.8.7 コンプライアンス委員会による会議開催
改善要望書を提出することを決定
2021.8.11 コンプライアンス委員会からクラブへ改善要望書を提出
2021.8.12 Jリーグへ経過報告②
2021.8.17 Jリーグへ経過報告③
2021.8.18 中村社長より選手全員に対し、改善要望書を受領するまでの
経緯及び内容の説明
2021.8.20 改善要望書の対象となった監督、強化部長、森本代行の
3名から、改善要望を受けた各自の受け止めについて、
個別に選手に説明
2021.8.23 Jリーグへ経過報告④
対象選手2名に対し、8/20の説明に関する選手の受け止め方に
ついて確認
2021.8.28 日刊スポーツおよび時事通信によるパワハラ問題報道の続報
2021.9.1 永井秀樹監督 辞任
2021.9.2 藤吉信次コーチ、鈴井智彦分析 辞任
2021.9.10 講談社「FRIDAY」でパワハラ行為に及んでいる際の音声を入手
したと報道。また、公式YouTubeチャンネルで肉声を公開
2021.9.11 永井秀樹前監督が辞任後初めてTwitterを更新
2021.9.21 調査報告書をJリーグに提出も、具体的な内容については非公開
結局、2021年9月21日に提出された調査報告書は非公開の為、パワハラ問題の有無でさえ言及していない状況である。この様な状況であるにもかかわらず、クラブからは2021年9月21日のリリースで、以下再発防止策について発表をしている。
【再発防止策について】
1)トップチーム内のコミュニケーションの土台となる人間関係作り
2)ウェルフェアオフィサー等の設置
3)ホットラインの設置
4)強化部による各選手やスタッフとの個別面談(年3回)の定期実施
5)執行部・強化部・監督による定期面談の実施
6)当社職員に対するカウンセリング、相談等の実施
7)コンプライアンス委員会によるモニタリングの継続
8)親会社による定期監査の強化
対応は大失敗以外の何物でもない
まずメディアからの報道について。これ自体を否定するつもりは無く、仮に事実無根である場合は、それなりの対応を取れば良いと考えている。しかし、これだけの報道がありながら、クラブ側が未だ法的措置を執らないという事は、少なからず事実である事を認めていると言えよう。
また今回の問題について多くの事が明らかになっていない状況(原因すら現時点ではクラブ関係者以外には不明のまま)であるにもかかわらず、再発防止策を発表するという事は、自ら問題が実在したという事を認めている証左である。
パワハラ問題の詳細については言及を控えるが、これだけの報道がありながらもクラブ側からは信頼を回復する様なリリースは一切無く、その様な対応も一切無い。唯一の救いは、精神的にかなりの負担を強いられている選手・スタッフのプライバシーに関する事を発表していない事くらいである。これはコンプライアンスの観点から言えば極めて当たり前の事である。またこの様な何らかの問題が発生した場合の報告としては、プライバシーの確保は当たり前の上で、「事象の詳細」「経緯」「原因」「改善策」が最低限きちんと示されていなければ何の意味も為さない。故に、今回の東京ヴェルディからの発表は、誠心誠意対応していますというアピール以外には何の意味も為していない。実際にコンプライアンスに関わる対応について、東京ヴェルディだけでなく親会社であるゼビオホールディングス社もきちんとした体制が取れていなかったと言わざるを得ない。
また、少なからず監督当人が当該問題に関与していた事は報道から明らかであったにもかかわらず、発覚以降もコンプライアンス委員会の立ち上げから監督辞任までの約1ヵ月、監督としての立場でコンプライアンス委員会と歩みを共にしていたという事については大問題であると私は考えている。関係者から経緯や事実関係を確認し、原因と改善策がはっきりとするまでは、その職務を一時的に解くという対応が必要であった。
今回の問題に際し、サガン鳥栖や湘南ベルマーレ等、過去の事例があったにも関わらず、その事例を共有できていないどころか、独自の対応を取り続け、結果的に「隠蔽体質」との疑いを掛けられている東京ヴェルディ。そしてハラスメント問題に対して無頓着という事も明らかになった。初動からの対応について、今回の対応は大失敗であったと私は断言する。
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