フィギュアスケート北京五輪で検討したい、五輪予選の開催と団体戦の中止

フィギュアスケートグランプリシリーズ(GPS)もアメリカ大会を皮切りにいよいよスタート!!!…と言いたいところなのですが、新型コロナウイルスの蔓延を理由にカナダ大会とフランス大会は中止が決定しているなど前途多難な状況となっている。
既にグランプリファイナル(GPF)は延期が発表されており(そもそも2大会中止になっているのにファイナルも何もあったもんじゃないという意見はさておき)、来年2月に予定されていた四大陸選手権は既に中止が発表されている。
新型コロナウイルスの状況が年明けに改善しているとも思えない状況なので、現実的に考えると世界選手権も開催困難が想定され、開催してもイレギュラーな形での開催となる可能性は高いだろう。国の方針によっては自己都合でない理由で参加できない選手が出てくるかもしれない。(尚、GPFは北京で行われる予定で、北京五輪のテスト大会の立ち位置なので、選手が集まるのかという問題はさておき、無理くり開催する可能性は否定できない)

係る状況下、気になるのが2022年の北京五輪だ。
そもそも北京五輪も開催できるのかという議論もあるが、それを言い出すと何も言えなくなるのでこの記事では開催された場合ということで話を進めるが、開催される場合是非検討すべきでないかと思うことがある。
予選の開催と、団体戦の中止だ。

まず、予選開催についてだが、これは今シーズンが絡む話なので検討すべきだと考える。
五輪の出場者は、まず前年の世界選手権の結果により国ごとに枠(最大3名・3組)が与えられ、五輪シーズンに国内の選考を勝ち抜いた選手が出場するという流れで決まる。
国内の選考の方法は自由で、多くの場合は五輪シーズンの頭に選考方法が各国のスケート連盟から出るケースが多い。アメリカは全米選手権一発勝負のことが多い一方、日本はシーズン全体の結果や過年度の実績も踏まえることが多く、近年では全日本選手権5位ながらソチ五輪代表に選ばれた髙橋大輔や、全日本欠場ながら平昌五輪代表に選ばれた羽生結弦などが比較的大きくニュースで取り上げられたので記憶にある方もいらっしゃるだろう。
さて、ここで問題になるのが"前年の世界選手権の結果"なのである。要は、今シーズン(2020-21年シーズン)の世界選手権=五輪の出場枠を争う重大な大会なのだ。
これが開催されない、あるいは必ずしも平等の条件でなく開催されるというのは五輪に誰を出すのかという話で大揉めしそうだ。
更に言えば、2020年の世界選手権は中止となったため2021年の世界選手権の出場枠は2020年の世界選手権の枠(=2019年の世界選手権の結果)を引き継ぐと発表されているので(以下のリンク参照)、割を食う国が出てきている。(例えば、男子シングルのカナダは2019年の世界選手権でやらかしたため1人しか出場できない)

仮に2021年世界選手権が開催できなかったとすれば、北京五輪の出場枠は2019年の世界選手権の結果に依存するのだろうか?そうなった場合その決定がなされる可能性は極めて高いと思うが、2年経てば勢力図が大きく変わるのは当然のことで、どうにも理不尽な感がある。
そこで、予選を開催してはどうだろうか?というのが本記事の考えだ。

そもそも過去フィギュアスケートの世界選手権では予選が開催されていた。どういうものかと言うと、予選と銘打ってフリープログラムを滑り、その上位陣が本選のショートプログラムに進出できるというものだ。
実は、フィギュアスケートをより世界に広めようという動きの中で、北京五輪後に世界選手権予選ラウンドの復活という案が現時点で国際スケート連盟の議会内で出ているのだが、これこそが予選開催のメリットである。
要は、大会開催前に出場選手を絞りすぎないで済むという点である。

世界選手権がなかなか通常通り開催できないであろう今シーズン、五輪開会前に予選を開催すれば出場枠の不公平感の問題はかなり軽減されると思う。
半分冷やかしで参加する選手が出てこないようにミニマムスコア(大会に出場するために、それまでの大会で最低限取っておかないといけない技術点)の設定は必要と思料するが、そのうえで各国に予選出場枠最大3枠を与えれば、予選の結果で恨みっこなしという発想だ。
これならばここ2年の勢力図の変化も気にしなくて良いし、五輪開催時点での実力者上位30名が出られることになる。同じ国は最大でも3人というのはいつもの五輪と変わらないので、違和感は少ない。(このやり方だと20位前後の実力の選手を3人抱える国でも3人出られるので、おそらく3人出場する国が例年よりは多くなることが想定されるが)

この予選開催案で想定される問題としては、選手側が連戦となるため怪我のリスクが高まる点だろう。そこで、合わせて団体戦の中止をすべきと考える。

団体戦は歴史が浅く、2014年のソチ五輪が初回開催である。
興行的な理由なのか、なぜか個人戦より前に団体戦を行い、なおかつ基本的には個人戦出場者でないと出られない(個人戦出場権が無い種目の選手は団体戦のみでのエントリー可)という縛りがあるため、元々団体戦出場者と不出場者でスタミナ消費の差があり不公平ではないかと一部ファンからは不評も買っているが、メダルを獲得できる機会が増えるというメリットも選手側にはあるといった具合だ。
尚、団体戦から日程の近かったペア及び男子シングルの表彰台6組のうち、団体戦不出場は3組となっており実際に影響があったのかは結果だけ見ると微妙なところであるが(ペア銀のスイ・ハン組と男子金羽生、銅フェルナンデスが不出場)、連戦の疲労というのは確実にあるだろう。ましてや五輪は過密日程なので試合と試合の間が1週間空いていないケースもあるのだ。(ペアに至っては団体戦フリーの3日後に個人戦ショート)

そこで、乱暴な言い方だがどうせ連戦に近い状態になってしまうのであれば、北京五輪については団体戦を削り個人戦の予選を導入したらどうかということである。個人戦出場全選手を対象にすれば不公平は生まれない。(この案の非難すべき点としては、全選手が大変になるというところだろう)
さすがに予選もやって団体戦もやって…となると怪我のリスクが付きまとうのでそれは避けるべきというところも念頭に置いている。
団体戦に個人戦不出場者でも出られるようにすればよいではないかという声は、団体戦を普通に開催している現状でもあるのだが、そもそもが競技人口の多いスポーツでは無いので、より強豪国が有利になるだけであり個人的には団体戦を今後も実施するのであれば賛同しかねる。

余談だが、予選の開催の仕方は歴史を辿るとバラバラであり、2011年の世界選手権では一部選手のみ予選の対象となった。例えば日本男子なら髙橋大輔・織田信成は予選免除だったが小塚崇彦は予選からの出場となっている。(前年の世界選手権で織田信成が28位に沈んだことによるが)
本選では、織田がジャンプ跳びすぎで点伸びず、髙橋が演技途中で靴のビスが外れるなどして点伸びず、予選から出場の小塚が素晴らしい演技で2位に輝くという面白い結果となっている。4位には予選3位のブレジナが入った一方、予選2位のマヨロフはショートプログラムで失敗が相次ぎ28位に沈みフリーに進出できず…と男子の予選参加組は明暗を分けた(予選1位は小塚)。予選参加による連戦の負担感が本選に影響を及ぼすかは、この事例から見ても不明瞭なので、五輪での予選開催もそこまで違和感は無いと考える。

最後に日本を応援するという目線でも話を付け加えておくと、仮に2019年の世界選手権をベースに五輪の出場枠を決められたとしても、日本は男女シングル各3枠、ペア1枠、アイスダンス1枠と申し分ない枠数を獲得できるので日本としては特段気にしなくて良い話ではある。それどころか、シングルの強さは申し分なく、長年の課題であったペアも三浦・木原組に世界で通用しそうな気配が漂っているので、むしろ団体戦をやりたい側の国かもしれない。
とはいえ、国を問わず全選手の憧れである五輪であるからこそ、未曽有の事態である今だからこそ、より納得感のある大会の開催に期待したい。

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