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読みたくなる文章の書き方、簡単な4つの手法を紹介

私は、Yahoo!ニュースや時事メディカルなどのウェブメディアで連載したり、自分のブログで記事を書いたりする物書きです。

医療に関する知識を紹介することが多く、毎回専門的な内容を噛み砕いて説明しなければなりません。


私たち専門家が自分の専門分野について長文記事を書く時は、かなりの慎重さが必要です。

「伝えたい」という、ほとばしる熱意だけで書くと、恐ろしくつまらない記事ができあがってしまうからです。


私自身も、よくよく注意しないと、

不足のない説明を求めすぎて、教科書のように単調になる

正確に順序立てて説明することにこだわるあまり、文章にリズムが失われる

専門用語や難しい言葉をたくさん登場させ、文章を漢字だらけにしてしまう

といった状況に陥りがちです。

残念ながら、公的機関や医療機関のような公益性の高いウェブサイトで、こうした「分かりにくい文章」をよく見かけるのも事実です。


加えて、

文字が小さい

行間が詰まっている

文が長くて改行が少ない

といった、いわゆるUX(ユーザーエクスペリエンス)の観点から見て不親切な記事もネット上には多くあります。


人は、書き手が思う以上に、他人の書いた文章に興味はありません

「分かりにくい」と思った瞬間、読者は途中で断念してウィンドウを閉じてしまいます。


特にインターネットには星の数ほど多くの記事がありますし、大半が無料ですから、

「他にもっと分かりやすい文章がいくらでもあるだろう」

という発想に至りやすいとも言えます。


では、多くの人に文章を読んでもらうには、どういうことに心がければよいのでしょうか?

文字の大きさ、行間など、外観上の工夫が必要なのは当然ですが、今回は文章の書き方に着目して解説してみたいと思います。


中でも、今回は「リード文」(=書き出しの数行)で使いやすい手法を4つ紹介します

文章だけでなく、プレゼンテーションでも使えますので、興味のある方はぜひ参考にしてみてください。

(ノウハウ本などを参考にしたわけではなく、自分の経験上で感じたことを書いていますので、どこかで既出の内容かもしれませんがご容赦ください)


意外な情報の提示

「早めに風邪薬を飲めば、早く風邪が治ると思っている人がいるかもしれませんが、それは間違いです」

「人間ドックを受けることには、非常に大きなデメリットがいくつかあります


読者が知らなそうな、意外な情報を冒頭でいきなり提示する手法です。

「え?そうなの!?」

と冒頭から読者を引き付けることができます。


例えば、私の書いた記事「医療ドラマの手術と実際の手術とはどこが違うのか?」の冒頭は、

私が大学時代、手術見学をして最初に驚いたのが、外科医が執刀時に「メス!」と言わなかったことでした。

で始まります。

医療ドラマでは、外科医が「メス!」と言い放つシーンが定番だからです。

一般的な通念を覆すことができるような事実があれば、それを冒頭に書くのがよいでしょう


また、ここに具体的な数字を入れるのも有効です。

「Aという薬は、実は女性の90%が服用しているというデータがあるのをご存知でしょうか?」

「おたふく風邪にかかると、4人に1人が精巣炎になるのを知っていますか?」

のような方法ですね。

「量」や「大きさ」に対する一般的なイメージと、実際の数字に乖離がある場合に使える手法です。


具体的な物語の提示

「私が研修医1年目で、初めて救急外来に出た日のことです」

「これは、私がまだ外科医になったばかりの頃のことです」


個人的な体験が一つの具体例になるケースでは、このような物語的(ナラティブ)な書き出しが有効です。

「どんな話が展開されるのだろう?」と読者を引き付けることができるからです。


私は医師なので、こうした書き出しによって、

「読者の知らない視座から見た世界が描き出される」

と予感させることができるのですが、こうした専門職でなかったとしても、

「私が田舎のコンビニでアルバイトを始めて1週間ほど経った日のことです」

「私が塾講師をして3年ほど経った頃のことでしょうか」

のように、「どういう立場から見た話が始まるか」を書くことによって、誰もが「物語」を語り始めることができます。


結論が知りたくなる問題提起

「私たち医師が、患者さんに対して決してやってはいけないと思っていることがあります。何だと思いますか?」

「みなさんが病院に行く前に必ずやっておくべきことが2つだけあります」


冒頭から、「答えが知りたい」と思わせる問題提起をします。

強い問題提起であれば、より読者をひきつけることができます。


この手法は、リード文以外でも使えます。

例えば、

救急の現場において、絶対に見逃してはならない重要な外傷がある。
それは何か?
骨盤骨折だ。

のような形です。

続きが気になる問題提起があり、そのすぐ後に答えが得られると、読者は気持ちよく読み進めることができます


特に意識せず書くと、

救急の現場において、骨盤骨折は絶対に見逃してはならない重要な外傷である。

としてしまいがちですが、これでは読み進める時の心地よいリズムは生まれません。


プレゼンでも似たような手法が使えます。

例えば、新しいタブレットを紹介するために人を集めたとして、

「このタブレットは、これまでのどの商品よりも軽くて薄いです」

と言うより、

「このタブレットには、これまでのどの商品よりも優れた特徴があります。

それが、軽さと薄さです。」

と言う方が、一文目で聴衆の関心を引きつけた分、二文目のメッセージが届きやすくなります。


疑問の提示と共感

どんな疑問を持った読者が読んでいるかを意識し、具体的な読者像を想像してリード文を書くことも大切です。

例えば大腸カメラについて説明するなら、

「初めて大腸カメラを受ける時は、痛くないか?下剤は耐えられるか?など疑問や不安を持つ方は多いのではないでしょうか?」

胃がんの症状について説明するなら、

「胃がんにはどんな症状があるのか、気になる方は多いのではないでしょうか?」

といった形で始める手法が使えます。


疑問や不安をピタリと言い当てていると、「これはまさに私のことだ!」と思って食い入るように読んでくれます。

マーケティング業界においては、この具体的な人物像のことを「ペルソナ」と呼び、ペルソナに合った情報提供が理想的とされます。


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すでに人気のある作家がファンに向けて書いた文章なら、どんな書き出しでも読んでもらえるでしょう。

読者は「その人の文章を読むこと」自体を目的にできるからです。

私たちが好きな小説家や漫画家の新作を、迷わず買ってじっくり読もうとするのと同じです。


ところが、私のような一般ライターが、不特定多数の人に文章を読んでもらうことは、そう簡単ではありません。

読み進めにくい文章になっていないかどうかをかなり意識して書かないと、あっという間に読者は離脱してしまいます


私はプロの作家ではありませんし、偉そうなことを言える立場にはありませんが、文章を書く時に少しでも参考になれば幸いです。


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なお、ブログで本格的に情報発信したい、という方は以下のnoteがおすすめです。

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