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埼玉のお友達

会社の同僚の娘ちゃん、ういちゃんとツムギが初めて会ったのは、二年前の七月、会社の有志で桃狩りに行ったときでした。

学年は二つ違ったけれど、大人っぽいういちゃんとこどもっぽいツムギはちょうど精神年齢が合うようで、すぐに仲良くなって大はしゃぎしながら一日を目一杯楽しんだのでした。

それから、家族同伴OKの会社の人たちとのイベントで、何度か一緒に遊んでいますが、最近はお年頃の女子同士、会うまではすごく楽しみにしているくせに、久しぶりに会うとモジモジしてしまう二人になっています。

先月、初めて、ういちゃん母娘、ウチ母娘の四人だけで出かけてみました。

ツムギがずっと行きたいと言っていた『トランポランド』に誘ったのです。

ひとりひとつのトランポリンで飛ぶルールになっているので、あまり会話がなくても楽しめましたが、その後食事をして帰ろうと、テーブルに向かいあっても、最後の方までなかなか話をすることができませんでした。

ようやく、姐さん風を吹かせて話しかけたツムギのひと言が「ういちゃんたちは学級閉鎖あった?」

それから、オンライン授業があるとかないとか、共通の話題を見つけることができたようです。


今度はういちゃんがトランポリンにハマって、「また行きたい!」と言うので、その場で次回の約束をしました。


その日の出来事を宿題の日記に書こうとしたういちゃん、お母さんに「ツムギちゃんはお友達だよね?
東京のお友達とトランポランドに行ったって書いていいよね?」と聞いてきたそうです。


二回目の『トランポランド』には、ういちゃんのヤンチャな弟くんも参戦しました。

私たちも一緒になって、トランポリンドッチボールで真剣に戦ったり。

お昼に『トランポランド』を後にして、近くの広い公園でピクニックをすることにしました。

こどもたちはご飯を食べ終わると、遊具に向かって走って行ってしまい、うい母と私は、青空の下、芝生の上で海を見ながら赤ワインを飲みました。


彼女とは、元々仲は良かったけれど、ツムギがいなければ、こんな付き合い方にはならなかっただろうなぁと、理想的な休日を過ごしながら考えていました。

「幸せだねぇ」

ふだん会社の理不尽と戦っている戦友の私たちは、何度も何度も、思い出したように口にするのでした。


ういちゃんとツムギと私の三人になったタイミングで、ういちゃんに『東京のお友達』の話を聞いたら、照れ隠しか、「そんなこと言ってないよ!」と必死に否定されてしまいました。

「ツムギ、ういちゃんはお友達だよねぇ?」
今度はツムギに聞くと、「楽しいと思ってるってことは、もう友達ってことなんじゃない?」と、こちらも精一杯の返事。

「ツムギに初めて埼玉の友達ができた〜」って、あんなに喜んでいたくせに。


ひとりっ子で、イトコもひとりも居らず、急に大量にできたハトコたち(私のイトコのこどもたち)は、少し歳が離れ過ぎていて、ういちゃんと同い年ではなかったことが、かえって姉妹っぽくていいんじゃないかな?と、私からは見えています。


この「幸せ」に味を占めた私たちは、今度は泊まりもいいねぇ、なんて、次々行きたいところが持ち上がっています。


赤ワインを飲みながら、なんとなくいろんな話をしていたら、「え?ツムギちゃんと、何度も会って関係性ができてから一緒に住んだんじゃないの?」と驚かれました。

いつも私がツムギの愚痴を言うと「ケイさん、考え過ぎだよ〜」とか「こどもなんてそんなもんだって」と説教していた子育ての先輩が、「知らなかったー。二人ともすごくがんばったんだね。泣けてきちゃったじゃん」と、目頭を押さえながら言ってくれました。


私にとっても大切な『埼玉のお友達』


独身だった三年前と、同じ人間関係も続けながら、違う人間関係も築けている今。


ツムギと私は、間違いなくお互いの人生に影響し合っているんだなぁと、改めて感じたのでした。

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