☆娘の秘密基地☆
元々は、私が姉と住んでいたファミリー タイプのマンションに、夫と娘が引っ越して来ました。
そうすることに決まったのが二月の終わり。引っ越して来たのが四月の頭。
20年住んでいるこの家にはそれなりに不具合もあるし、姉が他県に移ってからは、ひとりで気ままに過ごして来ていたので、とりあえず、最低限三人の衣食住が賄えるよう、体裁を整えるのが精一杯でした。
それでも、娘には少しでも、新しい自分の家を気に入ってもらいたいと、物置になっていた部屋を空にして、娘と大量のぬいぐるみを迎え入れました。
娘は「自分の部屋がほしい!」と主張していたものの、「お父さんとケイト(娘は私のことをニックネームで呼びます)と川の字で寝たい!」と言うので、まずはシングルベッドをふたつ繋げて三人で寝ることにしました。
娘の部屋は、軽くリフォームをすることにしたので、それまでベッドを組み立てたくなかったため、それはそれで都合の良いことでした。
ところが、それが地味にストレスを抱える原因に。
夫が仕事でいない日には、とにかく私と一緒にベッドに入りたがります。
もちろん、嬉しいことではあるのだけれど、娘が寝てからやりたいこともたくさんあって、なかなか希望に応じてあげられない。すると、娘はあの手この手で寝る時間を遅らせ、結局、早く寝なさいと言わざるをえなくなり、毎晩疲労が溜まって行く一方。
でも、私にはひとりで横になる空間がありません。
娘の寝相が激しく悪いことも、私の安眠を妨げました。
当初は当然のように娘を真ん中にして寝ていましたが、早々にギブアップして、娘を壁側に追いやりました。
この子は自分が産んだ娘ではないんだ。と、初めて思ったのはこの頃かも知れません。
可愛いなぁ、で許せないことがある。
それを思う度にまた、自分の心の狭さを感じずにはいられませんでした。
引っ越しが決まって最初に選んだ娘のシステムベッド。ベッドと勉強机を置くには小さ過ぎる個室だったので、多少圧迫感を心配しながらも、細部まで拘って、納得のシステムベッドを注文しました。
予定より一ヶ月も早く届いたそのベッドは、機能的にも使い勝手が良さそうで、なんとなく、嫉妬心のようなものが湧いて来ました。
いや、もっと複雑な気持ちだったと思います。
リフォームが終わった翌日、夫が組み立てをがんばり、ありあわせの敷マットと布団で娘の寝床を仕上げました。
もうしばらくは一緒に寝たいと駄々をこねるだろうと覚悟していたのに、あっさりハシゴを上り、新しい自分の基地に潜って行きました。
その夜、ようやく二人っきりになれたねーと、安室ちゃんを口ずさんで喜んでみたものの、二つ並べたシングルベッドに一人ずつ横になりながら、広いねー、大の字になれるねー、と感激し合う違和感。
もっと一緒に寝てあげればよかったのかな。と、母っぽいことを思ったりしたのでした。
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