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大阪育ち道産子の知らんけど・・141「昔話5 はぐれケータ 大阪編」

はい、今日こそ「ある事件」書くで。

ヒサザキくんと仲良くなり、学校に行くんが苦痛じゃなくなった。
マスダくんは、ちょっかいをかけてこんようになった。
ココからおれは「アウトローの道」を歩き始める。
ちゃうても、ヒサザキくんと仲良くなってから「ある事件」までの
1〜2ヶ月くらいのめっちゃ短い期間やけど。

ドッジボールでも彼と一緒やから無敵やし、
誰からも妙に丁寧に扱われる。
スカート先生ですらウザくない気がする。
自分が強くなったとでも思たんか、なぜか気が大きくなり、
他のクラスメイトとも距離を取り始め、
他の先生の言うコトも聞かんようになってった。

そう、勘違いして調子に乗っててん。
イキってた、って、コトやな。
残念やけどよくある感じやな。

まるで、不良気分のオレσ(゚∀゚ )を震え上がらせたんも、
あのヒサザキくんやった。

1.今日、帰りに

「オレん家寄れや。また、お菓子買うて遊ぼう」
「うん」
仲良うなってから、何度か彼の家に遊びに行った。
家には目立ったオモチャこそ無かったものの、
運動神経の良い彼と遊ぶのは楽しかった。
ナニより……。
家からおカネを持ってくる彼と、一緒にお菓子を買いに行けるんが、
そりゃあもう楽しかった。

「ほら、おまえの分」
「いいの?」
「今日はナニ買う?」
「ラムネとベーゴマとビックリマンチョコ!」
「はよ行こ!」
「うん!」

追求したコトもない。
その場を見たコトもない。
でも知ってた。
彼は家のおカネをくすねていた。

2.その日は

ヒサザキくんに招かれ、一緒に家の中に入った。
いつもは玄関で待ってたのに。

彼はカギっ子で、オレらが学校帰りの時間には、
父ちゃんなり母ちゃんなりが居たコトは無かった。

「コッチコッチ」
ドキドキしながら、茶箪笥のある部屋まで一緒に行くと、
彼はひきだしを開け、ガマクチ財布から、
折りたたまれた千円札を抜き出した。

ガラララララッッッッ!!!!!!!!!

勢いよく引き戸が開いたかと思うと、大きな影が彼に突進して行く。
次の瞬間、首だか肩だかを掴まれた彼は、
茶箪笥の反対側の壁まで吹っ飛ばされ、
背中を強打して崩れた。
再び影が迫り、彼の髪の毛を掴んで引き起こす。

「この悪ガキ!!!」
バッチーーーンッ!!!
「バレてへんとでも思てたんか!!!」
ビッターーーンッ!!!

後にも先にも、あれほど芸術的な往復ビンタは見たコトない。
絵に描いたように、みるみる腫れるヒサザキくんのほっぺた。

ヒサザキくんの髪の毛を掴んだまま、
大きな影はオレの方を振り返った。

3.アンタは

「誰や!!!」
声なんか出ない。

「ドコの子や!!!!!!」
まだまだ出ない。

「アンタも盗ってたんやろ!!!!!!!!!」
気絶したい。

幽体離脱寸前のオレの脳裏に浮かんだんは、
「ブラックタイガーより強いな(タイガーマスクに出て来る強敵)」
やった。

「ソイツ関係ないで」

と、ヒサザキくん。

「シバいたろ、思て、連れてきただけじゃ、クソばばあ。
いっつも同じトコに入れてるんがアホなんじゃ。
盗られんのイヤやったら、判らんトコに隠したらええねん。
ケチらんと小遣い増やせや」

ゴツッッッ。
ゴツッッッ。
ゴツッッッ。
今度はニブい音が3~4回聴こえ、ヒサザキくんはハナヂを流す。
大人のグーバンチも、
こんな一瞬でハナヂが出るんも、
ヒトがボコボコに殴られるんも、
全部初めて目にするモンやった。

「アンタはもう帰り。もうこのコに着いて来たらアカンで。
このアホにいらんコトされたら言うといで」

恐怖で動けんまま、なんとか視線をヒサザキくんに向けると、
彼はニヤリと笑い、ハナヂをなめながら、オレに親指を立てて見せた。


☆彡 さー、ナニしよ‼️

その後、どう帰ったかは憶えてません。
結局私は、殴られも咎められもしませんでした。
ダサくて情けないハナシです。

せめて一緒に殴られるなり、
自分の母ちゃんに正直に話しておカネを返すなり、
くらいはできたはずなのに、です。
そんなコトすらできない私に
「アウトローの道」を歩む覚悟など、
持てようはずもありません。

それにしても。
カッコ良過ぎると思いませんか、ヒサザキくん。
ヤハリ、彼は私のヒーローでした。
私を追い払うように帰した彼のお母さん(ブラックタイガー)。
息子のトモダチを庇う姿勢を汲んだように思えてなりません。

みなさんは、どんな覚悟をお持ちでしょうか。
「コレだけは」というものを上げてみましょう。
馴染んでくると、あなたを奮い立たせてくれます。
知らんけど。

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