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マネージャーの4つの気づき (後編)

  前編に続き、〝マネージャーで経験した4つの気づき〟の残り2つをご紹介します。人は忘れやすい動物です。普段から意識して行動していきたいと思います。

「人間力を高める」


 そもそも、〝人間力〟とは何でしょうか。

私は、スポーツ界ではよく言われる「ライフスキル」に近いものだと思っています。

さらに突き詰めると、挨拶とかマナーとか、「人に迷惑をかけないように」とか「感謝の気持ちを持って」とか、小学校で学んできたことそのものではないでしょうか。

ちなみに、あるテレビでビートたけしさんは、人間の躾は「礼儀作法や所作」で、「それが人間力」と表現されていました。

日本リーグの遠征では、地元協会が手配していただいた高校や中学校の体育館を、試合前の練習会場として使わせていただくことがあります。

事前にわかることなので、スーパーカンガルーズグッズをプレゼントしたり、サイン会や記念撮影も提案します。

外国籍選手や日本代表選手がサイン攻めにあっている時間、若手はお借りした体育館の掃除です。

モップをかけ始めると、現地の先生方が「こちらでやりますから!止めてください!」と止めにきますが、こちらも絶対に譲りません。

私が、「これも練習です。子どもたちの大事な練習時間をお借りしました。掃除だけでもさせてください。」とお願いします。

すると、先生方は、生徒に「見てみろ、実業団の選手でも練習後はちゃんと掃除をしてるぞ!」となります(笑)

そのうち、「一緒に手伝います。」となり、コミュニケーションが生まれます。

こうなったらこっちのものです。
試合当日、一緒にモップをかけた同士、熱烈なファンとしてスーパーカンガルーズを応援してくれます。

感謝の気持ちやマナーから、コミュニケーションが生まれ、愛されるチームへと成長することを実感できる体験です。

ここを疎かにしないよう、「人間力を高める」こと、特に若手の教育に力を注いでいました。

「感性を磨く」


 今までのうち、「向上心を持つ」「共感の気持ちを持つ」「人間力を高める」の3つはそれぞれがプラス、足し算でしたが、この「感性を磨く」はかけ算だと思います。

ここが0ならば全て0という事です。

その出来事はあるプレシーズンにおきました。

大阪市のイベントとして、大阪中央体育館(現在は丸善インテックアリーナ)で、バスケットボール教室を行った時の帰り道での出来事です。

バスケットボール教室も無事終了し、「お疲れさん!帰ろうか」となった時、ある選手が、ニヤけながら、「あ、ケータサン、大阪ドームで野球のオープン戦やってるっス」と誘いをかけてきました(笑)

私はその誘いのり、若手数名を引き連れて、プロ野球観戦に行くことになりました。

球場はオープン戦だったので比較的すいていて、特に外野席はガラガラ。

もう、試合観戦というより完全に宴会です。

私は後輩の作戦に見事ハマり、1万円以上ビール代を払わされました(笑)

野球観戦もほどほどに、酔っ払い状態で球場を後にしました。(駅でビールの売り子に遭遇、自己ベストの売り上げでお弁当を余計にもらえたとお礼を言われました)

そして、電車に乗って楽しく会話していた時です。

たまたま居合わせた(障がいを持っているだろう)1人の子どもが、ある選手を「うーうー」と叩き出したのです。

最初は、「?」という空気でしたが、ハンディキャップがあることから会話もできず、あまり気に留めないようにしていました。

しかし、その子はしつこく「うーうー」と叩いてきます。

さすがに、その子の母親も「すみません」と謝り出しました。

その時です!
電車が駅に着き、その叩かれていた選手がもたれかかっていた扉が開いたのです。

その子は〝次、扉が開くから危ないよ〟と教えてくれていたのです。

これには、その場にいた全員がハッと心を打たれました。

我々は感動して、お母さんに身分を明かし、バスケットボール教室で使っていたウェアをその子にプレゼントしました。

一同、心が洗われるような思いで帰路につきましたが、話はここで終わりませんでした。

後日、その子のお母さんから丁寧な手紙が本社に届きました。

あの日、あの子はウェアをとても喜び、毎日寝る時も着ていること、笑顔が増え活発になったことなどが書いてありました。

私はチームにその手紙を披露し、シーズン開幕戦にその親子を招待することを提案しました。

もちろん全員賛成です。

そうしてなみはやドーム(現在のラクタブドーム)での開幕戦にその親子を招待し、コートサイドで試合を観ていただきました。

その子は例のウェアを着てきてくれ、試合中は終始興奮して応援してくれました。

試合も快勝!
試合後はチーム全員でコート中央に招き入れ、記念写真を撮りました。

それから、その子が就職するまで、欠かさず応援に来てくれました。

その後、お母さんの手紙によると、パン屋さんに就職したそうです。

仕事が忙しいので試合を観に来てくれることは出来なくなりましたが、チームはその子に寄り添い、優しく接する時間を過ごすことができました。

お母さんには大変感謝されましたが、実はこちらの方が大事なことを教えてもらったような気がしました。

そして、〝この子のためにがんばろう〟〝恥ずかしいところは見せられない〟と全員が一致団結して全力でプレーする力をもらいました。

あの電車の一件が無ければ、あの子の行為を無碍に扱ってしまっていたら、心豊かなシーズンを送ることはできなかったでしょう。

あの子が電車で見せた人を思いやる心と勇気ある行動、無邪気に応援する姿、一生懸命に語りかけようとする笑顔、私はバスケットボールをする意義がここにあるような気がしました。

私も感性を磨き、この子のように素直でピュアに生きていきたいと思いました。

人に何かを与えたり、人のためになるようなことをすることは、自分にとっても成長する引き金になることがあります。

さらに、それをチームで共有できたら、それこそが、〝チーム〟の持つ意味であると思うのです。


今回は以上です。忘れがちですが、この4つをこれからも大切にしていきたいと思います。
ここまでご拝読いただき心から感謝します。
次回がマネージャー編の最終回です。
ぜひ、最終回も読んでください。

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