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あの夜、バスの中で。

2016年4月14日21時26分。
わたしは会社から帰るバスの中にいた。博多駅を出た65番のバスが、城南線を通って日赤通りに入るために角を曲がろうとしているところだった。バス車内のスマートフォンが一斉に鳴った。「熊本で震度7」。目の前が真っ暗になった。両親は、弟家族は、親戚は、ばあちゃんは、友人は…胸が詰まった。ただ今は、そのバスに乗り続けたままの時間を過ごすしかない。高まる焦燥感。しかし自宅近くのバス停まで大人しくしておくしかない現実。このズレが苦しかった。

程なくして両親と連絡が取れて、弟家族や親戚たちの無事は確認できた。それはまず良かった。ただそれ以外に何もできない状況そのものは変わらない。熊本がどんな状態なのか、自分に何ができるのか、何かできることがあるのか。皆目検討がつかない。翌朝、自家用車のある友人から飲料水を熊本に運ぶと連絡があった。「それは素晴らしい」と同時に「国道3号線は渋滞しているんじゃなかろうか」という考えが頭をよぎった。わたしは今でもその時何を選択すべきだったのか、わからないままでいる。

『大切な人が被災したときに、自分にできることが見つかる本』
(発行:一般社団法人BRIDGE KUMAMOTO)

熊本在住の尊敬する編集者/写真家であり友人の大塚淑子さんが『大切な人が被災したときに、自分にできることが見つかる本』(発行:一般社団法人BRIDGE KUMAMOTO)を編集したと耳にした。モチーフになっているのは、「令和2年7月豪雨」と呼ばれる熊本県人吉市などに甚大な被害をもたらした災害だ。被害状況やボランティア活動のデータなども参考になるが、さまざまな立場の方による手記や対談に勇気づけられた。

『大切な人が被災したときに、自分にできることが見つかる本』
みんなのボランティア談&図解
『大切な人が被災したときに、自分にできることが見つかる本』
ボランティアの先輩に聞く!

中でもわたしが何より胸を打たれたのは、P25-26に掲載された写真であった。一見真っ黒、しかしよく見ると色のついた小さな点がいくつか見える。説明はないけど(見つけられなかっただけかもしれないけど)、わたしには停電した夜の街を撮った写真に見えた。あの地震の夜も、この水害の夜にもいたであろう、真っ暗な空の下で不安な時間を過ごしたたくさんの人たちをことを想像した。

『大切な人が被災したときに、自分にできることが見つかる本』
P25-26

あの日の夜、結局ほとんど何もできなかった自分にこの本を読ませたいと思った。一歩踏み出す勇気になっただろうと思った。いやしかし、この先も何が起こるかわからない。だから今読むことが未来への準備になるということなのだ。そんな大事な本を、こんな高いクオリティで制作したみなさんに、大きな感謝を。本当にありがとうございます。また本を配る役割で関わらせてもらえたこと、光栄に思います。ありがとうございます。

虚屯出版カウンターの左側に置いてます。(配布終了しました)

ということで本書は虚屯出版糸島市の筑前前原駅から徒歩7分ほど)でも無料でお配りしています。ぜひみなさん、ご遠慮なくお持ち帰りください(配布終了しました)。たくさんの人に届いてほしい本です。

配布場所

虚屯出版https://publishing.ulotamlo.com/
〒819-1116 福岡県糸島市前原中央3丁目2−14 2F
https://goo.gl/maps/XVpqASa14x6SDfiP8


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