今昔物語

わたしはたわし

どんなにおちこんでいても
ツクツクと気持ちのいい曲を聞けば少しは回復するでしょう?と帰り道のデカボーリングピンが話しかけていた

いえ、そんなことより梅雨前線が近づいてるんですってよ
とババアは言う

くると悟って「置き配でおねがいしゃす」と書いたメモを玄関に貼ったって
わたし(たわし)のポストには、どんな周期で配られてるかもわからないローカル情報誌がくしゃくしゃになって入っているだけなの

私のみる世界は儚い
昨日あった花はもう枯れているし
それは実は昨日ではなくてもっと昔の話なんですもの

青みがかったような、高架下のような、夜道のような、その車に乗るまでの道中のような、曖昧で懐かしい気持ちに、突如として気持ちを戻されようとも
私はあの駐車場にあった自販機の飲み物はもう思い出せないのだから

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