千葉ジェッツの強さをビジネス面から紐解く
今回は、千葉ジェッツがスポーツビジネスっていうか、スタートアップとして優秀だったんじゃないか、という点を書いていきたいと思います。
前回の記事で、B.LEAGUEのチームは総年棒3億を目指しましょう!
という話の中で、唯一"旧企業チーム"では無い千葉ジェッツがそれを達成している点から、経営面で秀逸なのであろう、ということに触れました。
というわけで、もうちょっと千葉ジェッツのことを知りたいなと思い、早速千葉ジェッツを成功に導いた島田社長の書籍を読んでみました。
ホップ、ステップ、ジャンプ
島田社長が再建に乗り出してから行ったプロセスとして「ホップ、ステップ、ジャンプ」というフレーズが使われています。
ホップ→資金注入
ステップ→いい選手に投資し、魅力的なチームを作る
ジャンプ→集客
集客よりも先に選手に投資し、コンテンツとしての商品価値を上げる、というプロセスを狙ったわけですね。更にこのように述べています。
なりふり構わず観客を入れ、無理に盛り上がっている感を醸し出そうとしても、うまくはいかない。観客動員にフォーカスしたはいいが、来てくれた観客が試合を面白いものだと思わなかったら、タダ券があっても次はもう見に来てくれないはずだ。
チケットを買ってもらい、さらに時間をかけてアリーナに来てもらっているのに、負けてばかりでは顧客に"不良品"を売りつけているようなものではないかとさえ思った。
バスケないしスポーツビジネスの本質をシンプルに捉えているなあと、非常に勉強になった部分です。選手への投資が何故ここまで進んでいるのか、納得することができました。
通常であれば、スポンサーというのは広告効果を求めるわけなので、観客動員に従ってスポンサー獲得も進んでいくわけですが、千葉ジェッツは"ホップ"として、先にスポンサー獲得を進めることに成功します。
これが良いサイクルを生み出す起点となったわけですが、著書でも書いてあるように観客動員が少ないのにも関わらず、早い段階で日本一のスポンサー獲得料を手にしており、「アンバランスなクラブ」とも言われたくらい、本来は難しいことです。
「打倒トヨタ!」でスポンサー獲得?
では、何故千葉ジェッツはスポンサー獲得を先行できたのか。著書の中では「打倒トヨタ!」戦略があったと述べています。
「利益1兆円を上げている世界的大企業である"トヨタ自動車"を、千葉の地元企業が一丸となってやっつけましょう」
bjリーグからNBLに移籍するにあたって、こういった大きなビジョンを掲げて、地元企業を巻き込み契約をものにしていったわけですね。NBLに移籍したのも、この「大義名分」を掲げるためと言えなくもないと述べています。
成功の根本は、島田社長の起業家としての経験値
事実として、「打倒トヨタ!」戦略は当たったといえると思うのですが、そういった個々の戦略よりも、島田社長の起業家としての経験値が最も根本の成功要因だと感じました。
千葉ジェッツをスタートアップ企業に見立てれば、島田社長は伸るか反るか分からない事業を大きなビジョンと実行計画を掲げる事で、シード投資を受けることに成功したという見方です。
要するに資金調達の能力がズバ抜けてるなと。そして、そのキモには起業家特有のリスク感受性の低さにあると考えます。これは褒め言葉で、要はビビらないってことです。
bjリーグからNBLに移籍する決断をしたことなんかは、その代表例。
著書にも書いてありましたが、これはbjリーグからは圧倒的に非難を浴びたし、NBLからも歓迎ムードなわけでもない。当然、社内からも批判の声が上がったことは想像に難くありません。
経験上、個人のメンタルだけでいえば、ぶっ潰れること間違いなしですし、不確実性も多分にあったはずの中での決断が出来るのは、今のバスケ界で言えば、おそらく島田社長だけなのではないでしょうか。
他にも、株主が多数ばらけてしまっていた為に、意思統一がはっきりしない観点から、明らかに減損していたはずの株を簿価で買い戻す交渉を行ったとありましたが、普通のリスク感受性があると、このコンサル案件受けないです。笑
財務ダメ、事業伸びるか不明、株主はバラけてる。相当な労力を投下して、うまくいけばラッキー案件なわけです。
それを、就任時点では特にバスケが好きでもない、しかも悠々自適な生活ができていた島田社長をアサインできたことが、千葉ジェッツの奇跡と言ってもおかしくないレベルです
これからのバスケビジネスに必要なこと
今後のバスケ界に必要なのは、選手への先行投資、並びにその為の資金調達力だと考えます。
その為には2パターンあると思っていて、
1:島田社長のように起業経験に基づく、資金調達力がある代表あるいはCFOのアサイン
2:川崎をDeNAが買収したように、大資本傘下の基で積極投資をできる環境を作る
日本のバスケが盛り上がるには、基本はこの2パターンが増えてくる他ありません。DeNAがどんな動きをしてくれるかが、今後バスケ界にどれだけ資本力がある企業が参入してくれるかキーになります。
DeNAにはただ黒字化事業を作るだけでなく、バスケビジネスにおける投資ロールモデルを創出して欲しいと願います!
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