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「後工程はお客様」の暴走〜情シス目線のプロジェクトマネージメントTips#28

世の中にプロジェクトマネジメントに関するコンテンツは非常にたくさんあるのですが、よく見てみるとどうしてもSIer目線のものが多いように思えます。SIer目線の場合だと、どうしても利害が一致しないせいか事業会社というか情報システム部門目線から見るとピンとこないものも多く、ちょっと腹落ちしないことが多くあります。
というわけで無いなら作ろうということで「情シス目線のプロジェクトマネジメント」なるものを書いてみようかと思い不定期だとは思いますがシリーズ的に書いていこうと思います。

暴走する「後工程はお客様」

よくシステム構築の現場で耳にする言葉に「後工程はお客様」という言葉を聞きます。言っていることを簡単に要約すると後工程=実際に使う人達はお客様だからmその人たちのことを真剣に考え、彼らに批判を受けないように寄り添って考えなさい・・・・みたいな話がほとんどです。困ったことにこの言葉を後工程の人たちが口に出したりします。

この考え方は表向きだけ聞くと「ごもっとも」みたいに扱われがちですし、その場で否定されることはあんまりありません。否定したりするとプチ炎上したりします。

しかし、この解釈もある程度(できる範囲で気遣いをする)までは良いのですが、際限なくいくとかなり大変なことになります。利用者の声なんて究極を言うと際限がないものですし、どこまで聞いていいかわかりません。当然コストにも跳ね返ります。そして本来のプロジェクトの目的には関係ないことだったりもします。

そうなってくるとプロジェクトは膨張して立ち行かなくなってしまいます。

お金が余ってしょうがないプロジェクトなら良いのかもしれませんが、一般的な社内システムのユーザーは飛行機で言えば「エコノミークラス」のお客様でしかありません。豪華な食事を出すわけにも行きませんし、一流のパーサーがひざまずいて要望に対処するみたいな事も非現実的です。

コスト(時間とお金)も大切なプロジェクトの約束事のひとつなのです、
約束をしたのは大切な「お客様」である経営者でありその後ろの出資者なのです。

だいたい「後工程がお客様」というならば、エンジニアに要件を伝えるユーザーはエンジニアがプログラムを作りやすいように説明スべきですし、エンジニアが嫌がる難しい仕様は出すべきではありませんね。

少なくとも特定の人達が一方的に受ける言葉ではないはずです。

本来は自工程保証の話

この辺の話は元々は「自工程保証」の話で、次工程に出すときには、本当にお客様に出すものと同じ意識で、品質を考えなさいという話です。

情報システムで考えたら、後のテスト工程でバグを見つけられればいいやと言う姿勢ではなく開発の段階から品質を保証するように作り込みをしなさい。という話なのです。

つまりはスクラムのもとになったトヨタ生産方式の根本的な考え方の一つなのだと思います。

社内システムにとってお客様というのは、使うユーザー以上にその会社の製品やサービスを購入する「本当のお客様」や会社に出資している「株主」であるべきです。
システムの利用ユーザーが大満足していても、その先のお客様に良い影響が出ないのなら会社として自己満足なものでしか無いのです。
利用ユーザーもその後工程を考えて本当に効果が出るのか、自分の主張が収益に貢献できるものなのかをしっかりと考える必要があるのだと思います。

全行程で「後工程はお客様」を考える

この言葉が間違った解釈に成ってしまうのは、全プロセスのたった一箇所を指してこの言葉を引用してしまうことにもあります。

システムの開発はあくまでビジネスのほんの一部に過ぎず、ゴールではありません、人材や仕組みやルール、他の製造設備と同様に製品やサービスを提供する「いち要素」でしかないのです。ECサイトのように直接お客様が使うシステム以外はシステムの利用ユーザーの先のプロセスも存在するし、そこをちゃんと意識しないといけないのです。

開発者の後工程の人(ユーザーの代表)も次の工程に思いを馳せなくては。この言葉の意味を果たさないのだと思います。


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