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DXが丸投げ出来ないわけ〜情シス目線のプロジェクトマネージメントTips#61

世の中にプロジェクトマネジメントに関するコンテンツは非常にたくさんあるのですが、よく見てみるとどうしてもSIer目線のものが多いように思えます。SIer目線の場合だと、どうしても利害が一致しないせいか事業会社というか情報システム部門目線から見るとピンとこないものも多く、ちょっと腹落ちしないことが多くあります。
というわけで無いなら作ろうということで「情シス目線のプロジェクトマネジメント」なるものを書いてみようかと思い不定期だとは思いますがシリーズ的に書いていこうと思います。

今回はDXにおいてベンダー丸投げ、情シス丸投げだとうまくいかないということについて掘り下げてみたいと思います。

けっこう惨憺たる現実のDX

世の中でDXという言葉がもてはやされ始めてもうずいぶん経っていますが、いまだにDXがうまく行っているという話が少数派な気がします。体感で言うとたぶん6〜7割は失敗しています。(自分思い込み数値)チョット調べてみたらもっとひどくて成功率は1割台、ひどくて一桁%暗いという話もあります。・・・・つまりは9割は失敗していることになります。

しかしながら、いまだDXという言葉の魔力は衰えることを知らず、DXに関するセミナーや製品・サービスの案内は毎日腐る程メールボックスに飛び込んできます。

アメリカ映画「スターリングラード」の冒頭シーン

まるで死屍累々の戦場に次々と新兵が送られてくるスターリングラードの攻防戦のような絶望的な状況なのですが、なぜかクレムリンは全く怯むことなく「生き残るためにDXをしろ」とプロバガンダを高らかに叫んでいます。

それをやらされる現状のおもりに疲れ切った老兵の情シスや、DX部門と名付けられた鉄砲の打ち方も知らない新兵はまさに銃を持たずに突撃される映画「スターリングラード」の冒頭シーンのようです。

南無阿弥陀仏・・・・

丸投げされ続けるDX

しかも悲惨なのはそれらが「丸投げ」されてしまうことです。

ITベンダーやコンサル会社、SIerなどの口車に乗せられて「全部おまかせ」で社外に丸投げしてしまうパターンもあるし、DXのために新設した「DX推進室」的な部門に社内で丸投げしてしまうパターンもあります。

ネットや書籍でちょっと調べればこのような「丸投げ」は・・・もうちょっと具体的に言うと誰かに「DX」を任せてしまう事自体がDX失敗につながるということははっきりと謳われているのに、あいかわらず「丸投げ」は続いている。

正直、なんかしらんけどやらないとブームに乗り遅れる感があるDXを、やっぱりわからんから誰かやってくれないかなぁ、責任も取りたくないし・・・とか、なんだか知らないけどシステム化に金を注ぎ込んで切れそうだから、だれか自分の積年の悩みをぱぱっと解決してくれないかなぁ・・・といった感じで丸投げされ続けるのです。

ドイツ映画「スターリングラード」のラストシーン

逆にベンダーから見るとDXは「失敗」が許される、しかも不利な完成請負になりにくいDXは明らかに美味しい仕事です。失敗しても「適合できませんでしたねぇ」とコメントすれば全ては水に流せるのである。「金返せ」と言われることはないので投入した時間の分だけ確実に収益になるのです。

だからどんなに絶望的な死屍累々な状況でも、この冬の戦いは続くのです。

DXのトランスフォーメーションってなんのこと?

原因の一つがデジタル・トランスフォーメーションは「トランスフォーメーション」だからです。

「トランスフォーメーション」とは「変革」、「変化」を意味します。何が変革するかといえば、少なくともITではありません。なぜならITが変化していくことはもはやニュースではないからです。ITシステムの刷新自体は昔からあることでいまさら「DX」なんて名前を付ける必要はないからです。

変化する対象は「ビジネス」であったり「組織」・・・小さく見ても「業務」です。つまりはデジタル・トランスフォーメーションで変革するのはビジネス側・・・つまりは現場の人や仕事なのです。その現場が変わるのを他人であるITベンダーやDX部門に任せてしまうことってどうなんでしょう。

アニメ「鬼滅の刃」のワンシーン

アニメ「鬼滅の刃」での名台詞「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」の通りなのです。ITを駆使して戦いに挑んでくる「他社」に勝てるわけはないのです。それどころか「DX」を達成することは無理なのです。

ここまでは普通に言われていることですね。

DXは現場の悩みを解決しない

次は「デジタル・トランスフォーメーション」のデジタルのほうを掘り下げます。「デジタル・トランスフォーメーション」の「デジタル」は普通のデジタルやITではありません。Webアプリケーションをデータベースと組み合わせて情シスやITベンダーが現場の望むシステムを構築したところで、ぜんぜん「デジタル・トランスフォーメーション」ではないのです。

言葉の定義は別としても新しいデジタル技術・・・・IoTとかビックデータとかノーコードツールとか生成AIなんかを使わないと経営者も世間も認めてはくれないのです。それが正しいか間違っているかは全く別にして世間は「DX」と認めてはくれないのです。

しかも、そういった新しいデジタル技術は「何にでも使える」汎用性のあるものではなかったりします。高い正確性が求められる業務に生成AIがなかなか使いにくいように「新技術に適した業務課題」が求められるのです。つまりは「新しいデジタル技術」と「業務課題」のマッチングが大事になるのです。言ってしまうと現場の悩みを「DX」は解決してくれるとは限らないのです。

昔からある正論に「課題があって、それを解決するためのIT」というものがあるが、残念ながらそれは「DX」に当てはまらないのです。

マッチングと実行

「DX」とは「業務課題」と「新しいデジタル技術」のマッチングが必要です。「なにが何でも解決しないといけない課題」の解決ができるとは限りません。むしろ「誰も課題だと思っていない課題」が最も適した「DX」の課題だったりもします。

しかしながら「変化」するのは業務です。業務をする人たちが下手をすると「望みもしない課題」に汗をかき血を流しながら、向かわないといけないのです。

というわけで「DX」に必要な人材は自社の業務の課題を多く知り、マッチングするsたらしいIT技術の知識ストックも多い人がマッチングを行い、その業務を受け持つ人が、その人達の気質や課題感を知って、場合によっては逃げられないように仕向けてやる気を出すようにそそのかす技術が必要なのです。

つまりは「中の人」にしかできない仕事なのです。

だから「丸投げ」はできないのです。





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