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生成AI導入がうまく提案できない〜情シス目線のプロジェクトマネージメントTips#63

世の中にプロジェクトマネジメントに関するコンテンツは非常にたくさんあるのですが、よく見てみるとどうしてもSIer目線のものが多いように思えます。SIer目線の場合だと、どうしても利害が一致しないせいか事業会社というか情報システム部門目線から見るとピンとこないものも多く、ちょっと腹落ちしないことが多くあります。
というわけで無いなら作ろうということで「情シス目線のプロジェクトマネジメント」なるものを書いてみようかと思い不定期だとは思いますがシリーズ的に書いていこうと思います。

今回は生成AIの導入で、うまく使えそうなターゲットがあってもなかなか提案しにくいというお話です。ちなみに解決策はないいわゆる「ぐち」です。

JTCでは今だ効果は「費用削減」が支配

いわゆるJTC〜ジャパニーズ・トラディショナル・カンパニー(伝統的な日本企業)ではIT投資に求められる効果は「費用削減」や「工数削減」だったりします。費用削減はともかく工数削減ってなんだかリストラの影が後ろにつきまとい、あまり明るいイメージではないのですが、やはり日本の企業の多くが不確実な「売上拡大」「サービス向上」よりもコスト削減を重視する傾向にあります。

自分たちのクビを切るために自動化の提案をする(させられる)業務部門ってなんだか哀しいですね。

セキュリティの向上に使えそうでも・・・・

このあいだイベントの会場で生成AIのコンサルをしている会社のブースで七仕込んだのですが、たくさんある生成AIのユースケースの一つにセキュリティの監視がありました。

具体的に話がでたユースケースたくさんのアクセス・利用ログの中から、いつもと違うアクションがあったらピックアップしたい・・・というものです。たとえば通常と異なる人が通常と違うデータにアクセスしていたり、顧客情報のダウンロードをしていたりとかをピックアップして抽出する作業です。別に100点を取る必要がない要件ですし、たくさんのデータの中から「あやしいかな」という情報を見つけつのは人間よりもコンピューターのほうが向いています。みつけたあとは「もしかして不正などではありませんか?」という牽制球を特定された利用者に送るだけです。(たいていは業務で必要だったのでみたいな回答になります)

こういうケースの場合本来はやったほうが良い・・・というか厳しくなるセキュリティ要件の中では場合によっては必須に近いことなのですが、現時点では手間がかかりすぎて「やっていない」仕事なのです。

まだやっていない仕事の工数削減

こういった場合は、その業務は「まだやっていない」ので削減する工数が存在しません。つまりは提案・決済をしてもらいにくい事態となるわけです。セキュリティ上のリスクとその作業の省力化について同時に設営しなくてはならないですし、その業務の必要性をいくら解いたところで「今に比べた削減効果みたいなのはないの?」と言われてしまえば説得には苦戦してしまいます。

普通に考えれば会社の価値を高めるセキュリティの向上が低コストで維持しやすい形で実現できるのですから、説得もしやすいのですが、コスト削減至上主義の世界ではそれが非常に厳しいことになります。

誰かが「ROIで判断できるなら経営者はいらない」と言っていましたが、残念ながらJTCの多くはROIでしか判断できません

本末転倒なシナリオも

こういった場合につい考えてしまうのは次の作戦です。

1.まずセキュリティリスクで脅して人力の作業プロセスを作る
2.地獄のチェック作業を誰かにやらせる
3.しばらくしたら、このチェック工数が大きいことを問題にする
4.できれば人間のチェックの精度の低さも問題にする
5.生成AIを使った工数削減・精度向上案を提案する

本当にバカバカしいですが、こういった事って実際に発生してしまいます。以前、毎月増大していくネットワーク費用の抑制を提案したところ「今より下がらないのなら効果は認めない」と拒否されて、長々と交渉していたら、通信費が問題になるくらい増大してしまった・・・という笑えない話がありましたが、それとおんなじです。

最初から生成AIを使っていたら、本来こんなに苦労しなくていい作業を人間・・・しかも職場の仲間にさせるのはものすごく忍びないことです。

生成AIは企業の価値向上にこそ使われるべき

生成AIという夢のあるデジタル技術は「企業の価値を高める」ことにこそ向いていると感じます。今までやってきた仕事でなく、今まではできなかった新しい価値を生むプラスアルファの新しい仕事にこそ活用すべきだと思います。そうなれば現在巷で問題になっている「精度が人間ほど上がらない」みたいな事にはならないと思います。
比べる対象のある「従来やってきた仕事」がないのですから、今と比較する必要もないですし、本来の生成AIのもつポテンシャルを最大限に活かすことが出来ると感じます。

はやくこの分野だけでも「工数削減」の呪縛から抜けられることをお祈りしています。



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