SAPに新たに加わったWalkMeについて
この記事はアドベントカレンダー「SAP (unofficial) Advent Calendar 2024」の12月10日の記事として書いています。
実は昨日も書きましたが、今年の9月にSAPのグループ会社となったWalkMeのイベントで行われたクイズ大会においてSAP関連の難解な問題を正解したことでぶっちぎりで優勝し、かっこいいフーディーをいただきました。これもChill SAPさんのSAP Inside Track Tokyo 2024の動画で勉強させていただいたおかげなので、恩返し的な意味でもう一度書かせてもらおうと思います。
WalkMeとは?
WalkMeは2024年にSAPに買収されたイスラエルで創業したSaaS企業です。この企業が提供しているサービスはデジタルアダプションプラットフォームというものです。
アダプションとは顧客が商品やサービスを使いこなせるようになるためにベンダー側が支援する活動のことで、わかりやすく言うと利用者サポートのことになります。そしてデジタルアダプションはそれをデジタルの世界で実現したものということになります。
実装としては対象となるWeb上のシステムに対し、そのシステムにはほぼ手を加えることなく、Web画面の上に皮膜を重ねるような感じで操作ガイダンスや入力補助を配置することが出来るツールになっています。
それによって新しく参加したメンバーもくわしく親切長いダンスや、入力ガイドによって、間違えることがなく処理を行うことが出来ますし、その先輩やサービスデスクのメンバーのサポートコストを抑制することができます。
また、その利用者の操作を可視化することで、トレーニングの参考にしたり、業務のネックを見つけ出したりすることも出来ます。
なにが嬉しい?
WalkMeの良いところは、このアダプションツールをトレーニングさえ積めばユーザー部門のメンバーでも構築することができることです。これにより情報システム部門や開発会社の何倍も現場の仕事のコツに密着した的確なガイダンスや仕組みを実装することが容易になっています。また業務に変更があってもシステムそのものを変更することなく柔軟に対応していくこともできます。
さらに良いところは、これを使わないこともできることです。最初はガイダンスによってよちよち業務をしていたとしても、しばらく経つと仕事に慣れて熟練してきます。そういったときにはいちいちガイダンスが出ると邪魔になってしまいますが、普通に元のシステムを利用すれば問題有りません。
全体最適と個別最適の両立
これだけでも充分な効果は見込めそうなツールなのではありますが、その先にはもっと重大なメリットも存在します。
従来よりERPの世界では「全体最適」が求められてきました。できるだけ個別の例外プロセスを排除して、取引業務全体を統一したプロセスやデータで管理することにより、業務のシンプル化やオペレーションの可視化が実現するというものです。しかしながら全体最適はその反面、個別の業務とのギャップが発生し、ユーザーから見ると「使いにくい」という問題が発生します。導入プロジェクトではこのギャップの解消にかなり苦労してしまいますし、ユーザの不満の温床になりがちです。
それに対してSAPではBTPをうまくつかったSide by Side開発により全体最適を維持しつつ(SAP本体には手を加えず)個別の業務課題に柔軟に対応するという方法で対処を進めてきました。しかしながら、それにも限度というものがあります。Side by Side開発といえどもそれなりの開発コストも掛かるので業務量が少ない場合にはなかなか手を出せないと思います。
それをこのデジタルアダプションツールのWalkMeを業務部門自らが使うことで、様々なきめこまかい業務対応が実現できるようになるのです。
たとえば購買の要求画面をWalkMeにより購入する対象品ごとに作成することもできるのです。照明器具を購入するときの注意事項、机を購入するときに確認すべき事項などなどパターン別に用意することも可能になります。
このようにデジタルアダプションプラットフォームは情報システム部門にとってもユーザー部門にとっても積年の課題だった全体最適と個別最適のベストな着地点を見出すツールとして期待ができるのです。
というわけでSAP本体には直接関係ありませんが、新たにSAPに加わったツールにより、よりいっそうSide by Side開発の実現に近づいた・・・・みたいなお話でした。
大事なことを最後にいいます。
SAPの勉強をするときっと良いことがあります。
フーディ(パーカー)もらえるかもしれません。