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エッセイ万歳⑤ー『存在の耐えられない愛おしさ』

はじめに

今現在、最も勢いのあるエッセイと言っても過言ではないくらいの素晴らしい作品が、伊藤亜和さんの『存在の耐えられない愛おしさ』である。noteに伊藤さんが書いていたエッセイが、数々の著名人に見出されて、この本の発行に至っている。ちょっとした、シンデレラストーリーである。
私も、少し読んだだけで、伊藤さんの才能がありありと感じられた。なんというか、滝沢カレンさんのようなウィットに富んだ表現がありつつも、確かな文章力・国語力があり、世界の切り取り方も独特。
読んでいて、爆笑させられるところもあり、立ち止まって深く考えさせられるところもある本当に素晴らしいエッセイだ。


印象に残ったエピソード1ー「宇宙の真理」

このエピソードは伊藤さんと、風変わりな元彼・夏目さんこと「メメ」さんの関わり合いを描いたものだ。スピノザ研究をしているなどメメさんの少し変わったところを好きになった伊藤さんが、お付き合いを始めてからお別れするまでのことが書かれている。
端的になぜ印象に残ったのかというと、私もメメさんのように相手を大切にできなかったことがあるからである。若気の至りというか、そこまで昔の話でもないのだけれど、失ってからその大切さに気づくのである。最後のエピソード「観測する」でも、もう一度メメさんは出てくるが、普通に復縁しないところがまたいい。
伊藤さんみたいな素敵な人を逃したのは、大変辛いことだけれど、それも含めて人生で、その辛さがあるからこそ、その後の人生が豊かになるのだと思う。
言葉にすると、チープだが、本当にそうだと思う。

印象に残ったテーマー何者かになる

このエッセイ全体を通して、「何者かになる」ということが一つのテーマとなっていると言えると思う。伊藤さんは、そこに対する渇望とか、戸惑いをエッセイ全体で表現しているように私には感じられた。
伊藤さんは、note、エッセイのヒットを通して、何者かになることができたのだろうけれど、何者かになったあとでも戸惑いがあることがこのエッセイでは書かれている。私も今現在、何者かになるべく、日々努力を重ねているが、伊藤さんのように何者かになれた時、どのような感情を抱くのだろうか。きっと、happyというような感情にはならないだろうと予測している。また、日々を淡々とこなしていく自分がいるのだと思う。何者かになった後でも、日々を淡々とこなしている自分がリアルに想像できた時、それはかなり夢に近付いている証拠と言えるのかもしれない。
こんな言葉は望んでいないかもしれないけれど、伊藤さん、私より一足早く、何者かになれておめでとう。

おわりに

本当は、色々と面白い表現もあったので、そこをピックアップもしたかったが、紙幅の都合で叶わなかった。本当に素晴らしいエッセイで、また近々読み直すと思う。今回は、現段階の私の感想ということにしておきたい。最後まで、読んでくれてありがとうございました。


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